神の見る場所
神と神々の戦いが終わったのと同刻━━━━━天界。
「やはり、この結果に終わったか。」
どこか満足げに、老人の神は言う。
「えぇっと……ここにいる人たちは全員僕の敵なんですか?」
全力で魔力を放出していて魔力の消耗がえげつないことになっている中、円卓を囲むようにして座っている神たちに僕は問う。
「あら、敬語を使うなんて礼儀正しい子じゃないですか。
もう1人の方はぶっ殺してやるぜベイベーみたいな感じの恐ろしい人なのに。」
優しげな笑みを浮かべて、女の神様が言う。
もう1人?ぶっ殺す?
なんかよくわからないが、とにかく気を抜いてはいられない。
因縁の相手、時空神もこの空間にはいるのだ。
「今回の出来事は、天界の神全員が合意して行ったことでも、創世神様が指示したことでもない。
その上、汝らを始末する計画が失敗した時の後始末についてもこちらが決めていいことになっている。
汝らには急なことを仕掛けてしまったからな。できる限りの願いを聞いてやろう。」
今まででは考えられない時空神の言葉に、僕は警戒を隠せない。
「俺と一対一で決戦をする権利が欲しいというのでも良いぞ?」
いかにも強そうな姿をした神様に言われ、速攻で拒否する。
「ふむ、ではこうするとしよう。………現れよ。」
時空神の声と共に、ロックをさらに数十倍恐ろしくしたような怪物が現れる。
「これは簒奪神バクティーヌ。簒奪神よ、あの2人の神の力を簒奪しろ。」
「よろしいのですか?」
時空神の言葉に、さっきと同じ女の神様が心配そうに尋ねる。
「奴らはもう持たん。どのみち死するのであれば有効な使い方をした方がいいという考えであろう。」
周りの神たちが何やら話をしているが、僕には何も理解できない。
皆が見上げている水晶の先で、何が起きていると言うのだろうか。
僕の疑問をそのままに、簒奪神と呼ばれたその怪物は吼える。
咆哮が耳の奥から消えるのとほぼ同時に、怪物の前には2つの光の玉が現れる。
「よくやった。」
左手でその怪物の頭を撫でながら、時空神は右手でその2つの玉を1つにする。
「エール・メルぺディアよ。今回の件、我々からの謝罪としてこれでよいか?」
「よいかと言われても…まずこれが何かもわからいないですし……僕にとって悪い物になる可能性は?」
問い返すと、しっかり者なんですねとすぐ近くの神が言う。
「いちいち口を挟むものでもない。
それに、今回の議題はこれで終わりだろう?俺は戻らせてもらおう。」
強靭そうな神様が席を立ち、もう行かれるのですか?と女性の神が悲しそうな顔をする。
「いちいち口を挟むなとはお前に対して言ったのだ。
残りの話の邪魔になる。行くぞ、慈愛神。」
そう言われ、先を歩いて行った後ろをついて慈愛神と呼ばれた神様も嬉しそうに席を立っていなくなる。
「まったく……話し合いのためなのか自分たちのためなのかわからぬ。
とにかく、これでどうだ。」
いつの間にか、契約書のようなものを時空神が手渡してくる。
内容は単純であり、この光の玉によって僕が悪影響を受けることはないというものだ。
しっかりと時空神クリムレスの名前が刻まれている。あと、運命神モイラ?という神の名前も。
もしも契約が破られた場合、この2人の命が尽きるということで、流石に嘘っぱちではなさそうだと判断した僕は署名する。
署名すると同時にまばゆい光が迸り、思わず目を瞑る。
「では、元の世界に戻るといい。」
いつもと変わらない時空神の声に目を開くと、どこからともなく扉が姿を現し、時空神が席を立つ。
「そろそろ時間であったか。
どれ、私も見に行くとしよう。」
そう続けた老人の神になんのことか問いかける間もなく、時空神に背中を押され、僕は扉の向こうへと歩かされる。
そして、扉の先で倒れているセルフィスさんの姿を見つけ、大声で名前を呼びながら僕は走っていくのだった。
「時空神よ。今から行かねば間に合わぬぞ。」
少年が走り去っていった先を眺め得ている時空神に、運命神は声をかける。
「わかっている。」
そう言ってゆっくりと扉を閉め始めた横で、叡智神が尋ねる。
「この後何かありましたか?」
「そなたはあまり興味ないかもしれぬな。
ちょうどあの者の死から規定の年月が経過した。
それにより、神威裁定会が執り行われる。」
神威裁定会という言葉を聞き、叡智神は納得したように口を開く。
「なるほど……先ほどの大仕事とはそのことだったのですね。」
「うむ。死神にとってもこれほど重要な会はそうそうないからな。」
運命神の言葉を、時空神が紡ぐ。
「人間が神になるかどうかの審議として、史上最も特別と言われることも無理はない。
今回審議されるのが、不条理の賢人とあれば━━━━━━━」




