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支え合う二つ

亀裂が入り、境界が崩れ去っていく。

荒れ狂う風に吹き飛ばされ着地すると、そこは先ほどの木組みの道場になっていた。

「凪翔の境界を崩すとは………魔法というのも興味深いものですね。」

パチパチと手を鳴らしながら、陽凪さんが歩いてくる。

「本気で死んだかと思いました……」

大きく息を吐いて、凪翔さんもこちらに歩いてくる。

マジすか…………超級魔法を受けて衣服が傷つくだけって………

「隠離世の神力に凪翔の神力。その二つが同時に適用される境界を上回れるのですから十分すぎますよ。

もしここが外界だったならあなたの圧勝だったでしょうね。」

「い、いえ………あ、そういえば、凪翔さんから飛んできていたあの風の刃は神術によって飛んできているものではありませよね?」

僕の質問に、凪翔さんは頷く。

「その通りです。

純粋に空を斬った時に発される勢いが風の刃となって飛んでいるだけですが、それが何か?」

「普通はあの威力の風を斬った時の力で発するのは無理なんですよ。

どんな鍛錬をしてらっしゃるんですか………」

何事でもないように言う凪翔さんに驚きつつ、僕は言葉を溢す。

「人間がここまで神術を扱えるのはすごいわね。」

砕けて消えていった境界を眺めていたセルフィスさんが、いつの間にか隣にきている。

「隠離世に住む人々の中には神術を扱える人が結構いますよ。

それこそ、誰でもできると言えるくらいです。

ですが、特に私たちは子供幼い頃から神術の鍛錬を積み重ねてきましたから。」

「なるほど………お!?」

突如、上から重圧がかかってくる。

そのまま倒れ込み、痛みを抑えながら立ち上がるとそこには少年が一人。

それに続くように、少年少女たちが道場の中に何人も突っ込んでくる。

年は5歳いかないくらいだろうか。

「「「陽凪姉!」」」

口々に、彼らは陽凪さんに飛びついていく。

「ちょ、ダメですって!服がくちゃくちゃになっちゃいますから〜」

ダメと言いつつ一切拒否する様子がない陽凪さんは、道場内で追いかけっこを始める。

「なんかいいなぁ。」

「そうでしょう?姉上はああして子供たちと遊ぶのを毎日の楽しみにしているんですよ。」

思わず言葉を漏らしてしまった僕の横で、凪翔さんも遊んでいる姿を見つめている。

「僕には、この光景を護る使命があるんです。」

少し口角を上げた凪翔さんを見て、僕も笑みを浮かべるのだった。





「いや〜少し気張りすぎましたね。」

帰り道、空は茜色に染まっていた。

それなのに太陽の場所はまだ高く、月も昇っている。

「隠離世の太陽と月ってどうなってるんですか?

昼なのに月が出てたり日没っぽいのに太陽が出てるんですけど……」

「あの太陽と月は、二つが存在して初めて隠離世を成り立たせているんです。

その均衡が壊れようとする時、世界の調和は乱れてこの世に滅亡を齎すと言われています。

ですので、昼でも夜でも太陽も月も天に昇っています。

ですが、昼には太陽が輝き、夜にはそれが収まって月が光ります。

なので昼しかないとか夜しかないといった状況になることはないのです。」

その解説を聞いているうちに、僕たちは陽凪さんたちの家へと戻ってくる。

「さぁ、夕飯にしましょうか。

今日は腕によりをこめて作りますよ!」

「陽凪さんは料理ができるんですか?」

「ふふふ、もちろんです。期待しておいてください。」

目元を光らせて答える陽凪さんの横で、

「夕飯の献立の8割は僕が作るんですけどね。」と凪翔さんがボソリと呟く。

「ちょ、そんなこと言ったら台無しじゃないですか!」

なんて微笑ましいやり取りを聞きながら、僕たちは玄関へ入っていくのだった。

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