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渦を巻く風の中で

「えっと…ここは?」

しばらく屋敷内の説明を受け、屋敷を出て歩き、僕たちは広めの建物に来ていた。

木組で造られ、床も畳ではなく木板だ。

独特な香りが微かに漂う静謐な空間。

水面のように床が光を浴び、ただ空気そのものが呼吸しているような静けさ。

「鍛錬のための道場です。瞑想や剣術、場合によっては弓の鍛錬もできます。」

壁に掛けられていた形の整った木の棒を取り、陽凪さんはそれを僕に手渡す。

「これは木刀と言われる武器です。

凪翔が持っているものを原型に、金属ではなく木で作り上げたものです。

それで、凪翔と一戦交えてみてください。」

…………へ?

「い、いやちょっと待ってください!僕は剣術とかほとんどできませんよ?

ほとんどというか一回もやったことないレベルでできないと思うんですけど!」

事実を言う僕に、心配ありません。と彼女は言う。

「魔法を使ってもらっても構いませんから。

ただ、魔法と凪翔の相性はわかりませんけど…………」

最後の言葉が引っかかったが、魔法を使ってもいいと言われ、それならばと承諾する。

全部魔法で戦っていては何にもならないため、どうにか剣を使ってみることにしよう。


「それでは、準備はいいですか?」

離れた位置で向かい合い、僕たちは互いに頷く。

「では、開始!」

陽凪さんの声と同時に、地面が軋む。

瞬間、目前に迫った凪翔さんの刀が振り下ろされる。

あぶねっ!

反射神経だけで横に跳躍して躱し、視線の先に凪翔さんの姿を収める。

それにしても、今の風を斬る音と武器の形状、そして光を跳ね返す刀身…………どう見ても刃物!

多分今のくらってたら脳天から真っ二つに斬れていた。

冷や汗が顎から落ちる。

「魔法を使わなくてよいのですか?

ただただ打ち合っていてはあなたに勝ち目はないように思いますが。」

冷静に、凪翔さんは僕に言う。

「僕の魔法をここで使おうとするとこの建物ごと吹き飛ばしちゃいそうなので━━━━」

「この建物は神の御力によって造られているので簡単には吹き飛びません。

全力で戦って頂いて大丈夫ですよ。」

陽凪さんの言葉に、僕は頷く。

握った木の剣に魔力を込める。

互いに踏み込み、床が軋む音と同時に得物がぶつかり合う。

力は互角。

木刀の硬度を強化し、身体強化と『魔装・風烈凱』によって全力で打んだ一撃は、最初に両者が立っていた場所からちょうど半分のところでぶつかり合う。

速度は十分……あとは威力だけ!

即座に距離を取り、後ろに回って剣を振り落とす。

その攻撃をすり抜け、相手の刀が体に届く。


刃が、肉体を切り裂いていく。

この一瞬、チャンス!

現在進行形で斬られている体が霧になり、僕は凪翔さんの後ろから木刀を振りかざす。

もらった!

しかし、次の瞬間発せられた風により、木刀ごと僕の体が吹き飛ばされる。


うっそーん。

それは魔法じゃないんすか。

凪翔さんの体から放たれた風圧の範囲外で、僕は地面に降り立つ。

「魔法というのはそんなこともできるんですね………」

いやそっちもやってることは同じだと思うんですけど………と思う。

「ちょっとずるいですけど、ねぇ!?」

突如として風の剣が飛来する。

1、2、3、………10本か。

氷牙(アイスエッジ)

10の氷の刃で、風を相殺する。


その瞬間。

世界が変わる。

僕と凪翔さんを取り巻くように風の渦が荒れ狂っている。

「これは………?」

颯律(そうりつ)ノ座(のざ)。この世界では、風が全てを飲み喰らう。」

荒々しい静けさ。

その言葉が1番似合うほど、不思議だった。

「風鳴り」

凪翔さんが呟くと同時に、風の渦が襲い来る。

火焔(インフェルノ・)(スティル)!」

魔法陣を描き、渦に向けて炎を撃ち出す。

しかし、炎が出ない。

慌てて飛び退き、爆風を堪える。

魔法が消えた理由………思いつく要因はたった一つ。

この空間の神力の多さ━━━━━

次々襲い来る風を躱していくが、埒があかない。

魔法と神術、その元となるのは魔力と神力。

魔力と神力が共存することは本来存在せず、それができるのは神のみになっている。

しかも、体内のみでだ。

つまり、神力で満ちている空間内で魔法を発動させようとしても、魔力が消滅させられて魔法が使えないという状況になる。

風の空間が発動される前に魔法が使えたのも、隠離世が僕たちの世界から完全に切り離されていない状態だからかもしれない。

僕が魔法を発動させるには、この空間に満ちている神力を超える力で魔法を発動させなければいけないということだ。

だとしたら━━━━━━━

黒淵殲滅(ニグルム・)奏宴(オーケストラ)!」

黒き炎が、風を飲み込んでいく。

上級魔法なら太刀打ちできる!

木刀にかけていた魔法は効力を失っている。

心残りだが剣術は諦めて一気に決着をつけ切る!

上級魔法、真核魔装・(アルケウスマギア・)颶迅覇翔(ゼフィリウス)………魔装・(ヴェルマギア・)風烈凱(エアルマント)の強化魔法であり、効力は高いものの慣れないせいで制御が難しい。

しかし、細かい挙動を必要としない今の状況ではこちらの方に部がある。

風の間を駆け抜け、襲い来る渦を足場に飛び回る。

「静旋。」

凪翔さんが呟いた瞬間、僕と凪翔さんの間にあった風の渦が裂ける。

咄嗟に氷で壁を作ると、氷に巨大なヒビが入る。

一切見えなかった………風の流れさえ感じさせない風。

渦の存在がなければ死んでいたかもしれない。

だが、風の刃の向こうに見えた凪翔さんの姿。それを見た瞬間に理解した。

あれは動かなくても出せるものではなく、凪翔さんが刀を振うことによって発される斬撃。

だとしたら、その動きを感じ取れればタイミングに合わせて攻撃に回れる!

視界の中に凪翔さんが映るよう意識し、渦を足場に飛び続ける。

彼が刀を僅かに動かしたその瞬間を見切り、即座に詠唱を発動する。

「荒れ狂う世界の怒りよ、万物を飲み込み力の鱗片を示せ!『虹燐世龍!』」

過去に使った時は中級魔法を織り交ぜていただけだったが、今は違う。

織り交ぜているのは上級魔法レベルの各属性の魔法。

つまり、威力も構築難易度も文字通り段違いだ。

魔法陣から現れた魔力の塊は、放たれた風にぶつかり、相殺される。

しかしその前。ぶつかりあう瞬間に渦を蹴って一気に加速する。

風の刃と魔法が砕けた刹那、一直線に拓けた道を飛翔する。

振り下ろされた手が再び動き、次なる斬撃が放たれる。

頬に鋭い痛みを感じた瞬間、黒い炎がそれ以上の被弾を防ぐ。

威力が弱い━━━━!

凪翔さんに近づけば近づくほど神力が強くなり、魔法が弱められる。

だが、もう距離は5メートルもない。

これで決める!

踵を返した刃から放たれる斬撃を躱し、斜め上の角度から魔法陣を描く。

天穹星羅(セレスティアル・)幻燈(アスト・)(レクイエム)!」

こんばんは。羽鳥雪です。

明日の投稿は1日2話投稿で行こうと思いますが、なんだかんだ60話を超えてきて今だに1日2話投稿を続けていたことにより書き溜め原稿がほぼほぼ尽き果てるという状況になってしまったため、1日1話投稿(夕方もしくは夜)へと今週の日曜日から変更して行こうと思います。

楽しみにしていただいている方には本当に申し訳ありません………

もちろん、モチベーションがなくなったなどの理由では一切ありませんので、ブックマークや感想等していただけるとさらにモチベーションが上がるのでぜひよろしくお願いします!それでは!

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