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神との別れ

全てが消え去った広大な大地の中、手を握りしめても、実感は湧かない。

勝利よりも、喪失感の方がはるかに大きく心を蝕んでいる。


『本当に大きくなりましたね。』

その言葉に、思わず振り返る。

光に満ちた空間の中で、杖のクリスタルが、音を上げる。

二つの光が混ざり輝いていたそれは、光度を落としていく。

多少大きくなった体。本来の姿に戻したことでルーベルナさんの背がいつもより高く見える。

でも、ほんの少しだけ、前より顔が近い気がする。

『もっと長く一緒にいてあげたかった………

セルフィスとの約束も、果たせませんね………』

先ほどよりも鮮明に姿を見せるその人は、寂しそうに目を細める。

「そんな顔、しないでください………」

風が吹けば消えてしまいそうな声を捻り出す。

『私だって、こういう感情がないわけじゃないんです。

もちろん、誰かが慰めてくれるならいいんですが………』

ずっと助けてもらった人にできる、恩返し。

思いつく限り、僕にはこれくらいしかできない。

「今お別れが来ても、いつかきっと、また会えると思います。

ルーベルナさんが、努力したらどんな困難でも乗り越えられると教えてくれたんですよ?

僕なら大丈夫です!絶対できます!

だから、待っててください。

みんなで笑い合えるその瞬間を。」

咄嗟に飛び出した言葉を聞き、ルーベルナさんは頷いて目元の涙を拭う。

小さな僕の体を、そっと抱き寄せて頭を撫でる。

確かに感じるルーベルナさんの温もりに、涙が溢れる。


『私の力を残そうにも、それはすぐに力を失ってしまうでしょう…………ですから、リュシアさんのように私もあなたに名を授けます。

『黎耀の救世主』これが、私があなたに渡す名です。』

「救世主………?」

『きっと、その意味はいつかわかると思います。

それがわかるくらい大きくなった時、再び会いましょう。

………今日が止まっても、いつかの先で明日が動き始めることを願って。』

それと、と言って彼女は続ける。

『これは餞別代わりとでも言いましょうか………本当はもっと色々してあげたかったのですが、今はこれくらいしかできません。

でも、メルぺディアくんならきっと上手く使えると思います。』

魂に、魔法が刻まれる。

弱々しい、そんな力。

それを感じ取りながら、堪えきれなくなって僕は涙を流す。

『ほら、そんなに泣いていたらセルフィスに怒られますよ。』

僕の目元を細い指でなぞり、ルーベルナさんは微笑む。

『それでは………セルフィスのこと、頼みますね。』

「━━━━━━━━はい!」

多分、ルーベルナさんは涙の別れを望んでいない。

だから、ありったけの笑みを作って僕は言う。

「また明日!」

ルーベルナさんも、頷いて言う。

『えぇ。また明日。輝く世界で会いましょう。』


その姿が、光に変わっていく。


視界が霞んでいく。


現実が、戻ってくる。


でも、この現実を拒絶する必要はない。


現実で、またルーベルナさんに出会えばいいのだから。


ありがとうという言葉は、出なかった。


絶対に会えると確信しているから。

信じているから。


その時に、感謝も反省もすべて伝えればいい。



大きく息を吸って吐き出し、そして歩き出す。

いつ訪れるかわからない、僕が創る明日に向けて。

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