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夜の密会と突撃

「時が経つのは早いものだな。」

「みんな本当に成長しました。

メルぺディアくんがいなかったら、どうなっていたのだか………

そういえば、最近サレナさんの調子はどうですか?」

「上々だ。特にここ最近は動きも力の抑揚も良くなってきている。

メルぺディアがここにいられる残り時間が短いというのが刺激になっているのかもしれないな。

後1ヶ月と半分。その頃には完璧になっているだろう。」

「そう、ですか………やはり……私なんて無力なんですね………」

寂しそうな顔をするモイトンに、私は笑う。

「逆に言ってしまえば、お前がいないところにメルぺディアがぽつりと来てあいつらに魔法を教え始めたとしても、今の半分も成長していないように思うがな。

自分をあいつと比べるな。

単純な魔力量と魔法技術じゃ私たちに勝ち目はないさ。

だが、教育者として求められる要素はその一つに定められているわけじゃないからな。」

それを聞き、モイトンは照れくさそうに目を細める。

全く、つくづく自分の存在価値を否定しようとするやつdッ━━━━━━

「何か聞こえないか?」

そう言った時には、すでにモイトンの姿はない。

あ、あいつ………昔っから人に褒められるとすぐに行方をくらませやがる…………

ため息をつき、耳を澄ませようと目を閉じると、

「あれ、珍しい。」とすぐ近くから声がする。

「なんだ、クレムか。」

いつの間にか、クレムが前に立っている。

少し濡れた髪といかにも暖かそうなその雰囲気から見て、風呂上がりだろう。

「ちょっと耳を澄ましてみてくれ。」

「え?まぁいいけど………」

彼女も目を瞑り、口を閉じる。

ほぼ無音となった廊下。

その中で、聴覚が確証をもつ。

「ちょ、ちょっと………そこ………ダメッ━━━━━」

ん?

「そこ弱いからダメだって…………ふ、ふぁあッ!」

いや、聞き間違えだろ。

「無理ッ!ダメッ!死んじゃうッ!ああぁっッ!」


聞き間違えじゃ………ない………

目を開くと、その発信源を突き止めたであろうクレムがメルぺディアの部屋の扉にベッタリと耳をつけて音を聞いている。

だが、その顔は火を吹いているように真っ赤だ。

なんとなくだが、何が起きているのかを察する。

「ど、どうする……?

私としては流石に止めるべきだと思うのだが………」

「ここ最近、サレナを呼んでもほぼ毎日部屋にいなかったの……まさかこんなことしてるなんて………」

あの真面目なサレナからは信じられないというような顔で、クレムは口元に手を当てる。

夜……と言っても8時から11時付近までサレナが部屋にいないのはわかっている。

だが、それ以降のことはわからん。

正直、メルぺディアもそんなことをするような人間じゃないはずだが………現実は現実だ。

というか、ずっと年齢誤魔化してたから忘れていたがあいつは今7歳だろ!

や、やはり止めるべきだ!

ドアノブにかけられた私の手を、クレムが上から押さえつけてくる。

「おいっ!これは流石にダメだ!

両者が成人しているなら問題ないかもしれんが、こっちは2人の神からメルぺディアの身を預かっているよなものなんだぞ!

あいつらにどう言えばいいんだ!」

声を顰めながら言い放つ私に、彼女は自分もそんなことわかっていると言いたげにしながらも首を横に振る。

「後1ヶ月後には二人は離れ離れになるのよ!?

だったら少しくらい………」

そうは言っているものの、やはり言い切ることはできないというのがクレムの本音だろう。

目が焦点を定めていない。

「な、何してんだ?」

言い合いの中、突然聞こえた新たな声に、私たちは飛び上がる。

「な、なんだ……セルジュか………」

「メルぺディアの部屋になんかあるのか?」

部屋から出てこちらに来ようとするセルジュを、クレムが声を抑えつつも全力で止めに行く。

「ま、待ちなさい!こっちに来るのは駄目よ!」

「はぁ?なんでだよ。」

「ダメなものはダメだって!」

「おかしいだろ?二人はよくて俺だけダメって意味わかんねぇよ!」

「ちょ、静かにして!サレナとメルぺディアにバレたらどうなると思ってんの!?」

お、おい!

「なんでその二人にバレちゃいけないんだよ。」

「なんでも何も二人が今一緒に部屋に━━━━━━」

ば、ばかかこいつっ!バカというか天然か!?

「め、メルぺディアとサレナが同じ部屋で………!?」

目を丸くして繰り返すセルジュは、興味しか湧かないのかさらに踏み込んでくる。

「ま、待って!ストップ!わかったから!今夜は私が一緒に寝てあげるから部屋に戻って!」

そ、そんな逃げ方が通用するわけ━━━━━━

「し、仕方ないな………戻ってるわ………」

それ以上言葉を残すこともなく、セルジュは部屋に戻って扉を閉める。


通じた……………愛の力ってすげぇ。


そう思ったのも束の間、こっちの扉の奥でも愛の力が爆発するかのようにサレナの声が大きくなる。

「だめらからッ!それ以上はもう━━━━━あっあっ!

っ━━━━━━━━━━━━━━!!!」

声にならない声が静まると共に、廊下に静寂が戻ってくる。

「終わったみたいだな…………」

クレムの方を見ると、今さっきまで突撃反対派だった彼女が思いっきり部屋の扉を開け放つ。

「え!?クレムとパトリスさん!?

というか鍵は!?」

驚くメルぺディアの大声が廊下まで反響する。

「そんなもんここにいるクレムパイセンが吹き飛ばした!

お前たち、夜に会うのがいけないとは言わないがな、そういう行為を未成年が……しかも寮で行うことは許されていないぞ!

━━━━━ということを訴えようとしたクレムパイセンが扉を壊してお前たちに注意しにきたというわけだ!」

ありったけの逃げ道を作り出し、言い放つ。

第一、間違ったことはしていな━━━━━━

少しだが冷静さを取り戻しメルペディアたちを見ると、視界に映る2人はただただ困惑している。

ベッドの上にいると言っても、布団の中に潜り込んでいるわけでもなければ部屋の電気が消えているわけでもない。

服も着ている。

問題になり得そうな部分と言えば、とてつもなく身体をくっつけているところくらいか。

「………………………お前たちは何をしていたんだ?」

「いや……マッサージを………」

そう答えるメルぺディアの横で、サレナも首を縦に振る。

「ど、どうやら勘違いだったみたいだぞ?」

「先に中に行こうって言ったのは私じゃないでしょ!?」

不毛な言い争いを続け、結局二人揃ってごめんなさいをしたのだった。




「声を出しすぎると周りに誤解される。

私たち以外に巡回の教師たちがくる場合もよくあるのだから気をつけるように。」

パトリスさんにそう言われ、僕たちは反省する。

「驚いたけど特に何もないみたいでよかったわ。」

伸びをするクレムに、パトリスさんは冷ややかな目を向ける。

「な、何?まだ言いたいことあるの?」

「文句があるわけじゃない。

忘れていることがないかと聞きたいだけだ。」

「忘れてること?」

クレムが首を傾げて少し。

「そ、そうだった………」と大きく息を吐く。

「まぁいいじゃないか。

お前としてもこういう大義名分を作ることで好きな相手と一夜を過ごせるというのは嬉しいことだろう?」

「ちょ、何言ってんの!?」

今更隠そうとしてもセルジュとクレムのことくらい全員知っているので無意味なわけだが、彼女はセルジュへの思いを否定する。

話的に、クレムとセルジュが一緒に寝るということになったのだろう。

当然、どうしてそうなったかは不明なわけだけども。

「さぁ、今日はもう解散だ。」

そう言って、みんなはサレナと僕を残して部屋から出ていく。

なぜだか意識しなくてもいいことを意識するようになり、僕たちはいつもよりも少し離れてベッドに入った。

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