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中間試験?

さて………今日は中間試験と題した2度目の手合わせの日。

中間試験の次の二次試験があるわけでも、最終試験がある予定もないが、とにもかくにもやってみようというわけだ。

僕がこの時代に来て、もう10ヶ月目に入ろうとしている。

毎日同じことの繰り返しでありながら、全員がそれぞれできることを行い、着実にステップアップしている。

その成果を、今日見せてもらおう。

扉を開け、森に歩いていく。

いつも使っていた場所はセルジュが倒れた時に吹き飛ばしてしまったため、また新たに見つけた場所だ。

自然が多い時代で本当に助かった。



「よし、始めよう。」

4人を前に、僕は言う。

そこに、

「おい、俺の存在を忘れているんじゃないか?」と声が聞こえる。

炎が渦巻き、その神は姿を現す。

「セルジュと契約しているのだから、俺がこの戦いに介入してもいいのだろう?」

ニヤリと口角を上げる炎皇神に、僕は頷く。

「あなたとも戦ってみたいと思っていましたからね。問題ないですよ。」

「それでは、やらせてもらおう。」

各自が配置につき、本気の模擬戦が幕を上げる。




森が唸り、木々の葉がざわめく。

各々が放つ地を揺らすほどの魔力が流れ、まるで森そのものが呼吸しているようだ。

僕は深く息を吸い込む。肺の奥にまで熱が入り込んでくる。

4人の相手は僕の周りを囲み、セルジュの後ろには炎皇神の姿。

5対1。数では圧倒的に不利な戦いが始まる。

炎。水。土。

三方から三属性の奔流が迫る。「水霊散華(ミラージュレイン)!」水弾が爆ぜるようにして拡散され、右側面から襲いくる。「地脈穿衝(ガイア・スパイク )!」背後では大地が隆起し、岩槍が迫る。そして正面、セルジュの炎が咆哮する。

焔神顕現(ラーゼフレア)!!」

神の影が両手を広げ、炎の奔流を吐き出す。空気が焦げる。森の湿気さえ燃やされ、熱が皮膚を焼いた。逃げ場はない。だが、逃げる気もない。

前の戦い以来数段以上も熟練されたその魔法たちに、思わず笑みがこぼれる。右手をゆっくりと上げる。

光界展環(ルミナス・アーク)

足元に光の魔法陣が展開され、周囲を光が囲む。白い環が僕を中心に広がり、迫る攻撃をすべて鈍化させていく。

この魔法は、減速結界(ディレイ・フィールド)と同じ魔法術式に光の術式を追加で刻むことによって、相手から放たれた魔法の威力を軽減、もしくはそのまま自分の魔法として光弾を放つこともできる。

もちろん、減速結界を基盤にしているため、範囲内の魔法を遅くする効果もある。まずは、威力が桁違いな炎の魔法から崩す。

防御魔法を付与し、風の刃を弾き出す。

光界展環を抜け出したその刃は、炎を断ち切りながらセルジュに飛来する。

彼がその攻撃を躱わすために跳躍し、炎が消えた瞬間を見計らって散らされていた光の粒子を爆発させる。

残りの3方から放たれた魔法を掻き消し、魔装・風烈凱を発動させて踏み出す。風が身体を包み、視界が一瞬で流れる。木々の間を駆け抜けながら、魔力の感覚で相手の位置を読む。

右前方、魔法が減速されることを読んだのかその範囲外から接近してきたサレナの魔法が放たれる。

氷結昇華(シヴァリス)!」

氷の柱が地面から立ち上がり、進路を塞ぐ。流石に、圧縮されまくったその氷はとてつもない強度だ。だが、高密度には高密度。掌に熱を込めていく。

炎掌(カルド・イグニス)

掌から小さな炎が噴き、氷柱を握ったところから砕け散らせる。蒸気が爆ぜ、白い霧が一瞬で視界を覆った。

その中を、風の魔力が駆け抜けてくる。

2連続で放たれた、サレナの魔法。見えない刃。音だけが空を裂く。

疾破刃(ウィンドブレイク)!」

この速度で動いている中、ピンポイントで軌道上を狙ってくる。風の刃が弾け、木片が舞う。

空気の流れを読み切り、炎の残る手で風を払いのける。

手の痺れを感じた時、炎がすでに頭上にあった。上空で、炎皇神が炎の槍を構えていた。

焔神槍(ヴァル・アスラ)!」

空が割れる。神の槍が降り注ぐ。その一撃だけで、森が燃え、空気が歪む。

避けられない。ならば、ぶつけるのみ。

蒼流盾界(アクアドーム)

蒼い水の球体が、炎の衝撃を受け止めた。熱と冷がせめぎ合い、世界が蒸気に包まれる。視界は白一色。

その中で、エートの声が響く。「万象を刻む礫よ、沈黙の殿に響け。

大地の脈動、岩の歌声、我が呼び声に応えよ━━━━━

響き合え、砕け、繋がれ。

礫殿交響(ラクリオン・サーヴ)!」

僕は息を吐き、ゆっくりと目を閉じた。大地が抉られて巻き上がり、周囲を包み込んでいく。

それが、一度に飛来する。


「上級魔法、超殲(ラグナロク・)爆烈破(オブリタレイション)!」


落ちてくる大地の鱗片を、炎によって吹き飛ばす。

「ははっ!お前の炎もなかなかではないかッ!

お前の本気を見せてみろ!」

その声と共に、蒼炎の焔が浮かび上がる。

焔哭(ほのおのなきに)浄滅(じょうめつを)葬詠(ほうむるうた)!」

空に刻まれた十文字の炎が、落ちてくる。


これを避けてちゃ、示しがつかないな。

減速結界によってその炎をわずかに遅くする。

魔法術式を書き換え、本来詠唱が不要な魔法に新たな詠唱を付け加えるという制約によって、魔法の威力を底上げする。


闇より深き淵の底、名も無き声よ、滅びの譜を奏で黒を抱き、嘆きを糧に、命を贄に、すべてを一つの深淵へと還せ。

舞い散るは、滅びの焔。灰は歌い、闇は歓ぶ━━━━━


黒淵殲滅(ニグルム・)奏宴(オーケストラ)!」


黒と蒼。両者が衝突する。

轟音が空を割り、爆風が大地を捻じ曲げた。空へから墜ちる蒼炎と、地を突き上げる暗黒炎。

まるで天地が逆転したかのように、ぶつかりあった二つの炎は世界に光と闇の影を生み出す。空は黒く、地は蒼く染まり、その境で炎が牙を剥く。

互いを喰らい合い、互いを塗り潰し、爆ぜるたびに火の粉と黒煙が絡み合って、世界が吼えるかの如く咆哮が響き渡る。


次の瞬間、衝突点が光り、爆ぜ、あらゆる色が焼き消された。

蒼も、黒も、音も、すべてが押し潰され、最後に残ったのは、白い閃光のみ。空は裂け、雲が吹き飛び、地は抉れ、それによって生じた砂の嵐だけが残る。

蒼炎は消え、黒炎もまた跡形もなく消し去った。


「あっちい炎だ!

もう一度ぶつけあってみるか!」



その言葉には応えず、僕は魔法陣を描く。

新たに作り出した、2段階構造の魔法。

二つの魔法を繋げることにより、威力は格段に飛躍する。

螺旋結晶(インフィニット=コア)

魔法陣が展開する。七つの光点━━━━━炎、水、風、土、氷、雷、そして闇。それぞれの属性を象徴する結晶が、周囲を巡り始めた。

最初はゆっくりと。だが、回転が速まるにつれ、空気が震えだす。炎が氷に溶け、風が水を撫で、雷が土を貫く。それは“相反するもの同士が溶け合う”音。軋み、悲鳴、そして調和。

やがて結晶たちは一つの軌跡を描き、巨大な螺旋を形作った。中心に吸い込まれる光の帯。

すべての属性が“等しく混ざる”瞬間。


「万象よ、混じりて還れ。炎は凍て、水は燃え、風は地に溶けよ。光と闇の狭間にて、理はほどけ、始まりは終わる。我は願う、無にあらず、全にあらず――ただひとつ、螺旋の中心たらん。」

混ざり切った魔力の塊が、高速で炎皇神に向けて飛来する。

その中心を指差し、小さく呟く。


螺光(ノウス)零界(ゼロ)



瞬間━━━━━螺旋結晶が砕ける。


光が、音もなく弾ける。破片の一つひとつが細い光線に変わり、空間を縫うように広がる。

すべてが静止する。風も炎も、神の咆哮すらも、音を失う。

世界が裏返るような、ただただ強烈な力の炸裂。

螺旋の中心から放たれたのは、白でも黒でもない無彩の光。それは色を奪い、形を奪い、すべてを等しく光に還す。圧倒的な静けさの中、その光だけが脈動している。

それが大地を舐めるように拡がり、森を、氷を、風を、そして神の炎すらも包みこんでいく。

静寂が終わり、音もなく光が走り、森のすべてを白く染め上げていく。

ただ光だけが輝く。

あらゆるものを飲み込む虚無は、暗黒すら越えて煌めきを残している。気づけば、焦げた地面と、立ち尽くす五つの影だけが残っていた。

全員が、肩で息をしている。

威力を絞り、この場にいる全員が全力で構築した防御魔法を吹き飛ばした上でのこのダメージ。「全く………見たことのない魔法を使いやがる…………」

苦笑する炎皇神は、自身を炎の渦で包み込む。

「休憩だ。」

その言葉だけ残して、神は消えて行く。

死ぬほどの威力ではないため、そこは気にしなくていいだろう。僕は大きく息を吸って吐いた。魔力の残滓が肌を撫でる。疲労も、今はただ心地よい。

━━━━━この戦いは模擬訓練。だが、力と力のぶつかり合いを、純粋に楽しいと思えた。それだけは、誰よりもわかっている。

空を仰ぐと、木々の隙間から光が差し込んでいる。


………………ミスった。模擬訓練ってこと忘れてた。

呆然と立ち尽くしているみんなの方を見て、

「よし、帰ろうか。」と言うのだった。

ちなみに、その後のブーイングはなかなかどころじゃなく強かったです。はい。

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