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運命

瞬間、光が駆け抜ける。


1発の光弾が、クレムに向かって高速で飛翔する。

減速結界(ディレイ・フィールド)!」

即座に作りかけの魔法を破壊、この辺り一帯を対象に魔法を展開する。

しかし、その鋭利な光弾は速度を一才落とさない。

そして、軌道の先にいる相手を見て僕は前を見開く。


━━━━数秒後には、それはクレムに直撃する。


どうする?

どうすればクレムを助けられる?


今こちらに向かって放たれている魔法を打ち落としながらあれを防ぐのは無理がある。


減速結界の効力を受けないあの魔法は、おそらくあらゆる干渉を受け付けない。

あの速度で飛来しているのだから、ただの防御魔法なんて貫かれる。

クレムを弾いて軌道上から逃すか、その前に魔法を潰し切るかのどちらか。


1秒が過ぎる。


そして、強い視線が向けられる。


待って。


あと少し、あと1秒でいいから。


絶対、突破口を見つけるから。


高速で回転している脳は、考えれば考えるほど思考速度が落ちていく。


わかっているのだ。


今の僕には、この状況を回避する方法がない。

解答を持ち合わせていない。


時間を戻すことができるのであれば強引に解決できたかもしれないが、それは時空神が許してはくれない。

もしも僕がここで倒れれば、僕が背負っているものを全て投げ出すことになる。

そんな無責任なことはできない。


ずっと向けられていた熱き覚悟が、ついに僕を貫く。


また1秒が経過し、拳を握りしめながら決断を下す。


「減速結界の効果対象から、セルジュを除外。」


高速で組み直された術式変更によって、結界効果の対象から外れたセルジュは、自身の体を爆風で吹き飛ばし加速する。

まるで神話の不死鳥のように大きく広がった翼が、地を擦る。


そして、その刻が訪れる━━━━━━





「ねぇ、あなたの名前は?」

私が6歳になった時、その子はうちに現れた。

戦争が終わってもどの家庭も生活が厳しく、まだまだ子供を養う余裕がない人々は子供を捨てる道を選んだ。

聞けば、何度も親が変わっているというその子を、戦争で父を失っていた母は自分の食事を減らして受け入れた。

私も、母の目を盗んでは食事をその子にあげていた。

きっと、母はそんな私の行動に気づいたのだろう。

毎日毎日どこかに出掛けては食料を分けてもらったり自分で採ってきてくれた。

そんな母に迷惑ばかりかけていられないと、私は本気で魔法の勉強を始めた。

うまくいかないことだらけで、誰にも教えられることもなく練習を重ねている時、うちに転がり込んできた子………セルジュは、魔法を教えて欲しいと言い始めた。

彼は、炎の魔法を使うことができた。

母が出かけてから毎日のように魔法の練習に励んだ。

ちょうどその頃、学校にいくことが義務となった。

自分の子供たちに勉強が教えられないと嘆いていた母は喜び、すぐに私たちを学校に入れる手続きを行なった。

「この子たちには、魔法学科に入っていただきたいと思います。」

校長………今と同じフロウさんは、私たちを魔法学科に入れたいと言った。

魔法学科に入る絶対条件に魔法の使用が可能という要素があると知った母は、私たちには魔法の力がないと言って普通に勉強を教えて欲しいと食い下がった。

なぜそこまで普通の勉強を教えたがるのか、私にはわからなかった。

ただ、せっかくなので魔法を学びたいと思った私は、その場でセルジュと共に魔法を見せて、魔法学科に入ることができるということを母に伝えた。


なのに、母は喜ばなかった。


私たちが何かすると決まって褒めてくれた母が、私たちが一生懸命に練習してきた魔法を、褒めることはなかった。


悲しそうな顔をして、母は部屋を出て行った。


『この子たちには、楽しく平和に暮らしてほしい。』


そんな言葉だけを残して。




そして、私たちは自らの選択で魔法学科へと進んだ。

母から離れ自立しなければいけないと悟ったセルジュは“甘えない”を少し違う解釈で受け止めたみたいだけど、それは大きな問題じゃない。

心の奥底は、いつでも私にくっついてきていた彼のままだから。

可愛い弟分で泣き虫だった彼は今ではたくましく育ち、立派な男の子になってしまったけど、自慢できる存在であることに変わりない。


━━━━━━だから、どれだけ苦しくても一緒に生きていけると思ったのに………なんで…………


「来ちゃだめ!」

身体が重く、その声を出すのがとてつもなく遅い。


嫌……やめて………あなたがそんなことをする必要なんてない。


流そうにも流れていかない涙が、目元に浮かび、溜まる。


あぁ、そうだったんだ。


私たちが魔法の道に進むと、いつしかこんな状況になってしまうことを、母は知っていたのだ。


魔法は戦争に使われ、母の最愛の人は戦争によって死んだ。


私たちが同じ道を辿らないように。


それだけを思って、母は私たちのために道を変えようとしてくれていたのだ。





「ありがとう。」


そんな声が、ただただ魂から漏れる。


大丈夫。

絶対、死なせないから。


今までたくさん迷惑をかけてきた。


だから、次は俺に護らせて。


あなたへの想いはきっと届かないだろうけど、きっと弟みたいな存在だっただろうけど、俺はあなたのことが好きだった。


いつも笑顔で、楽しそうで、頑張り屋で、俺に手を差し伸べてくれる。


見捨てられた俺の手を、そっと握りしめて抱き寄せてくれた。


そんなあなたを、俺は護る。


あぁ、よかった………間に合った…………


抱きしめたその身体は、確かな熱を持っていた。


刹那、背中から心臓を貫く激しい痛みを覚える。


それと同時に、俺の頭は思考を止めた。

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。(すでに1日遅れ)

ということでこんにちは。こんばんは。羽鳥雪です。

もうそろそろ50話を迎えるというのに旅が5分の1すら終わっていないという果てしない長さのストーリーだと今更気づいた次第です。

今年はストーリーが進むことでもっとおもしろくなっていくと思いますので、ぜひ楽しみにお待ちください!

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