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戦争の煙立つ世界

「失礼します。」

「ん?えぇっと………誰だ?」

眠たげな顔で、その人は視線を上げる。

「え?あ、そうか。」

魔法を発動させ、体を元通りに戻す。

「お、おぉ……メルぺディアだったのか。急に大きくなっていたもんで驚いたぞ。」

「小さい状態だと夜に街を歩いていたら連れて行かれるらしいので。これなら大丈夫かと。」

「教育者として嘘をついた上での生徒の夜間外出を容認するのもどうかとは思うが……」

少し首を捻ったが、まぁ大丈夫かと言ってフロウさんは僕に椅子に座るよう勧める。

広く作られている校長室にはフロウさんが使っている机の他に大きな机があり、向かい合って座れるようにソファーが配置されている。

そこに座ると、フロウさんも自分の席を立って向かいに座る。

「それで、どうかしたのか?今は授業時間だというのに急に訪ねてきて。」

「今日は休憩ということになっているので大丈夫です。みんなそれぞれ羽を伸ばすためにモイトン先生と街に行っていると思います。」

僕が魔法学科の生徒たちに修行をつけることなども全て話がいっているため、フロウさんは理解を示してくれている。

「わざわざそんな時に相談とは?時間がかかることなのか?」

「そこまで時間は必要ないと思いますけど……大丈夫ですか?」

「問題ない。最近は大きな仕事もなく暇をしていたところだ。」

先ほどの眠い感全開の表情から本当かどうかはわからないが、時間があるというなら手短に話をさせてもらおう。

「この学校は国立って言ってましたよね。その母体である国はどうなってるんですか?」

「6歳なのにそんなことまで気にするのか。」

声を出して笑うフロウさんに、僕は言い返す。

「明日で7歳になりますけどね。」

「そ、そうか。おめでとう。」

そう言って、フロウさんは立ち上がって机の中をゴソゴソと漁り、一枚の丸まった紙を持ってくる。

「これはこの世界をまとめた地図だ。

現在、主軸となっている国は5つ。属国になったりしている小国も含めると10数国になる。」

指でなぞりながら、自分たちがいる場所とそれぞれの国などを教えてくれる。

僕たちがいる街は属国になっているわけではなく、フェッセル王国という国にある街の一つらしい。

「じゃあフェルニッセル国立学校って………」

「フェッセル王国から名前を取って付けられたものだな。

そして、ここがルーンハイムと呼ばれる巨大な森だ。

森と一括りにしても一度入ってしまうと戻ってこれないほどの段違いの森だ。ここを通って進軍しようとしたところその軍隊が丸々消えてしまったなんていう話もある。

ただ、一時期話題にもなっていたがこの森は今大部分が吹き飛んでしまっている。

史上最恐の魔法使いと言われたリュシア・エルフェルデがいるということでも有名だが、彼女の存在はどこへ行ってしまったのかわかっていない。」

そこで、僕は合点がいく。確かにこの街を探すために飛んだ方角を思い起こしてみるとこの森と合致する。

世界の中心に広がっているこの森のせいで、各国はその森の合間を通って戦いをするくらいしかないらしい。

だからこそ魔法という高威力かつ広範囲を攻撃できるものが重要なのかもしれない。

…………森を消し飛ばして平面にしてしまえば簡単に戦えるし。

「な、なんか笑顔が怖いが……続けるぞ?

王国である限り、王都もある。もうほとんど復興も終わってきていることだろう。

そこにはフェッソシス国立学校という国内最大の学校がある。

もちろん魔法学科もあるし、生徒の数もここより圧倒的に多い。

寮制度は存在しないため生徒たちは街から通うか宿を借りるかのどちらかだがな。

学校側からお金が負担されることもないから自費での生活だ。」

つまり、お金がない人はそこに通えない………おそらくこの学校よりも学びのレベルが高そうな場所にここの生徒たちを送らないのはそういう事情か………

「ただまぁ、国から一定の金額の支援はもらえる。

それに加えこの街の人々は学校で学ぶ生徒たちに好意的だ。普通の授業をしている生徒たちはこの街に両親がいる子たちも大勢いるからな。」

「なるほど………」

「それで?オルディアンに行くと言うことか?」

オルディアン………流れ的にフェッセル王国の王都だろう。

「どんな場所なのか見ておきたくて。国王がどんな人とかはわかってるんですか?」

そう尋ねた僕に、

「人柄の良い優しい王だ。

何度かしか会ったことはないが、民を守るために戦い、民のためにと停戦を各国に持ち掛けたもの彼らしい。

他国の動きを知ると同時に、国と民の未来のため国内の反対を押し切って魔法学科を作り出した。

しかも、魔法学科で学ぶのは強制ではなく任意。人の命を奪うことになる可能性が高いという運命がある以上、本人の意思を尊重してくれている。

他国では魔法が使えるものは強制的に魔法を学ばされたり、君と同じくらいの歳で軍隊に入れられる者も少なくないというのにな。」と、フロウさんは答える。

「一度、行ってみてもいいですか?」

「あぁ、もちろんだが………生徒たちはどうするんだ?モイトンに任せるか?」

「いえ、少し課題を出そうと思いまして。」

それではと言って、僕は立ち上がる。

「あの子たちのこと、頼んだぞ。」

そんな言葉に振り返って頷き、僕は部屋を後にした。

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