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魔法世界の祭りの始まり

夕方。街に戻ってくると、そこはとてつもない活気を見せていた。

ところどころではあるが飾り付けがされて、木組の舞台のようなものが造られている。

「そうか、今日は聖楽隊が来る日だったな。そろそろ後半に差し掛かる頃か。」

「はぁ…最悪なタイミング。

なんで今日に限ってこんなことに……」

「そんなこと言うもんじゃない。メルぺディアだって本当はこんなことしなくてもいいのにお前たちのために魔法を教えてくれているんだ。

たった一回聖楽隊を見逃すか死ぬか。どっちの方がいいと思う。」

パトリスさんにそう言われ、クレムさんは口を塞ぐ。

「まだ最後の花火も残っているし祭りが終わっているわけでもない。

ちょっとだけでも楽しんできたらいいと思うが、どうだ?」

僕に話を振ったパトレスさんに、

「そうしましょう」と返す。

リュシアさんに修行をつけてもらっていた時も、最初の頃は疲れ切った時に気分転換を用意してくれていた。

でも、今の僕にそれはもう必要ない。

みんなを街に送り出し、1人で森へ戻ろうとすると、

「少しだけ……いいかな?」と声をかけられる。

「みんなと行かなくていいの?サレナ。」

敬語をやめようと言われ、そこからみんなに舐められないようにと言われ、結果今日一日クラスメイトには敬語なしで過ごしてきたわけだが………やはり慣れない。

教えているときはみんなが逆に敬語になって(セルジュさんを除いて)いるわけだが、前に立っている少女は今は敬語を外している。

どうやったらそんなコロコロと変えられるんだと僕は感心すら覚える。

「あの………その…………」

少しだけ視線を逸らし、サレナさんは僕の目を見てはくれない。

「今日……やりすぎだった?」

「い、いや…そういうことじゃなくて……それは全然……私たちのためにやってくれてることだし………」

やはり口ごもりながら、サレナさんは下を向く。

「少し歩こうか。」

平時から威厳を出せっていうのはこういうことであってますかパトリスさん!と心の中で叫びながら、僕……俺は歩き出す。

街の中を歩いていくと、聖楽隊のものと思われる音楽が聴こえてくる。

綺麗な楽器の音と歌声が混ざった素晴らしい演技だ。

「そういえば、制服。だいぶ汚れちゃってますね。」

少し大きな道から外れた小道でサレナさんを見ながら言うと、

「あ、敬語になった。」と小さく笑われる。

もう無理だってこれ……どうしようか。

なんて思いつつも、もはや諦めモードで切り替える。

「少し前に作ってみたものがあって……これを着てみてくれない?」

自己収納空間(セルフ・ストレージ)から1着の服を取り出し、それをサレナに渡す。

「えっと…これは?」

「普通の服とは少し違って、ルーベルナさんにだいぶ前に教えてもらったものなんだ。

家事の知識を身につけるために時々練習していただけだから下手かもしれないけど。」

僕が渡したそれは着物と呼ばれるもので、ルーベルナさんたちがいた時代、遥か遠方に住む人々からもらったものらしい。

下手だと思われたら嫌だから下手かもと言ったが、個人的には結構の力作だと思ってる。

何かの素材があると高品質なものになるようだが、そんなものあるわけもないので魔力でなるべく近しいものを作ってそれで代用してみた。

現物を1発で作った方がいいんじゃないかって?いやいや、そんなことしませんよ。

え?理由?誰かにプレゼントするときは気持ちがこもっていた方がいいと言われたんですよ。主にルーベルナさんとリュシアさんに。

「着たいけど…どこか着替えるところとかないかな……」

キョロキョロと周りを見渡してみるも、着替えられそうなところはない。

「一回寮に戻ろうか。」

ということで、転移魔法によって一度寮に帰宅。

せっかくだし、ルーベルナさんから貰ったものを僕も着てみる。

元はルーベルナさんが貰ったものらしいが、男性用らしく僕が持っている方がいいと言われて受け取った。

大人向けであったため、今の身長ならちょうどぴったりだ。

そして、ここでアクシデント発生。

帯の巻き方がわからない。

ぐるぐる巻いたら結んでもゆるすぎてすぐに落ちてくる。

しかし、ここでへこたれるわけには行かない。

ということで頑張ってなんとか無理やり巻いて、下駄と呼ばれる靴を履いて外に出る。

扉の先には、すでに着替え終わって僕を待っていたサレナさんの姿。

この2日間髪を下ろしていたため、髪を上げて結んでいる姿は新鮮だった。

それにしても、こんな編み込みまで含めて僕より早く終わるって…僕が遅すぎるのかサレナさんが早すぎるのかどっちだろうか。

そんなことを思いつつも、歩き出す。

「ごめんなさい。ちょっと手間取っちゃってぇっ!?」

下駄がすっぽ抜け、僕は前に倒れ込む。

幸い、数歩歩いた後であるため壁に手が届くことを認識し、僕は安堵する。

そして、壁についた手からの痛みを感じ取ると同時に、顔を真っ赤にしているサレナさんの顔が視界に映る。

あ、可愛いです。

一瞬でそんなことを口走りそうになるほど、すごく良い顔だった。

なんて思いがよぎった瞬間、僕は謝罪に全力を向けるのだった。




「なんだか、すごく時間の流れが早い気がする。」

隣に座ったサレナさんが、小さく言葉を漏らす。

最初は物静かでほとんど話もしなさそうな人かとも思ったけど、世界が違っても盛り上がる話題はあるもので、僕が見てきたいろんな話をし、リュシアさんのことを話したりしてすでに空は夜を告げる暗さになっていた。

「昨日、もっと色々話したかったんだけど………私の過去について聞いてくれないかな?」

話をしている間、ずっと高鳴っていた心臓の音が少し和らいでいく。

真剣な話になったことで冷静さが帰ってきている中、僕は頷く。

「あれは、私が3歳になったときのこと。」

そうして、彼女は語り始める。

自分が今まで歩んできた、人生の物語を。

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