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世界の矛盾

黒い壁を消した僕の視線に映ったのは、たくさんの人の目だった。

しかし、そんなことを気にせずに僕は思考を巡らせる。

リュシアさんが自分で手にかけたと言っていたからやるべきと思ったが、あの人にもいろんな事情があっただろう。

飛んできたらいきなり先生とクラスメイトに向けて魔法を使って、その理由も意味わからないものだったから怒りが混み上げてきてしまった。

次に出会ったら、リュシアさんと今の人の関係を聞くべきかもしれない。

ただの極悪人にリュシアさんが教えをするとも考えにくい。


……………だとしたら、本当はいい人なのでは?

だったら僕は………………

「ありがとう!」

その声で、僕は自我を取り戻す。取り戻すと同時に、歓声に巻かれていることを理解する。

「君おかげで生徒たちは無事だった。それに、あのままだと街にも被害が出ていたかもしれない。

これは、君に助けられた人たちからのお礼だよ。」

隣でそう言うフロウさんを見上げながら、僕は思い出す。


『この世における魔法は、何かを壊すものばかりだ。

私の重力も、君の炎も。破壊は生んでも救済は生めない。』


たった1日前に聞いたそんな言葉が、僕の胸に強く響く。リュシアさんもドルティーさんも、どちらも僕の魔法によって消えていった。

いつか助けると言っておきながらも、本当にそんなことができるかどうかなんてのは全くの不明で、それ以前に自分のことでいっぱいっぱいだ。

ルーベルナさんとセルフィスさん、その2人が僕の元から消えてしまう可能性がある今、それ以上に解決しないといけない問題なんてない。

本来なら、それ以外に手を出さないべきなのだと、わかっている。

わかっているのに、なぜか割り切れない。

どうしても達成しなければいけない目標があるのに。


「大丈夫ですか?」

モイトン先生に聞かれるが、答えることすらできなくなっていた。


僕が歩んでいく人生は、なんなのだろうか。誰のためなのだろうか。

そんな問いが頭の中から離れないまま、僕は立ち尽くした。





「はぁ………」

「最近、ため息多いわね。」

天界、ではなくメルぺディアがいる街から遠く離れた森の中で、私たちはまた家を建てて生活をしていた。

久しぶりのこんな生活に、ロックは家の中を走り回っている。

そして、ため息をついているのは他でもないルーベルナだった。

「私たちは未来から時間を遡ってきています。

過去を改変すれば、未来は変わります。しかし、未来を固定したとなると、過去がどうなったとしても最終的な結論は同じになりますよね。」

なんだか急に難しそうなことを語り出した彼女に、嫌々ながらもその話に乗っかる。

「まぁ、そうなるわね。つまり、過去を変えたら未来が変わるのか、それとも未来が決まっているから過去を変えても未来は変わらないのか気になるってことでしょ?」

「それは今私が言ったことを繰り返しただけで、つまりでもなんでもない気がしますが。」

ぼそっと言われたそんな言葉に、私はぐぅの音もでない。

「ただ、それで理解してもらえたなら大丈夫です。

例えば、リュシアさんが使った超律臨界魔法………私たちは律界魔法の方が聞き慣れていますが、あれはどうなったのかというのも挙げられます。

メルぺディアくんによって、彼女の人生は五百年ほどで幕を下ろしました。

七百年目くらいで律界魔法のことを知った彼女はそれを発動できないし、そもそも彼女自身千年後には存在しないはずですからあの魔法が使われることもありません。

しかし、彼女は千年後に実際に存在していて、あの魔法も発動されました。

ここまでなら、過去が変わることで未来が変わると言う話になりますが、私たちが過去にいかなければ変わることのなかったログレン王の世界は最初から変わった前提で動いていました。

だとしたら、今から五百年よりももっと前………私たちが未来に行って最初にいた世界や、ログレン王がいた時代などはどうなっているんでしょうか。」

な、長い。理解が追いつかない。

やっぱこんな話聞こうとしなければよかった。そう思った時、私は気づく。

「あれ?でも、元いた時代から一万年遡った時、律界魔法の話なんて出してなかったじゃない。」

時代があっちこっち行ってるせいでわかりにくくなってくるが、私はなんとか追いついていく。

こんなところで妹に馬鹿だと笑われたくない!最近失われてきている姉としての威厳を取り戻さねば!

「その理論だと、最終的に未来は全てを知っているということになりますよね。

過去を変えたことで毎回未来が変わるとすれば、リュシアさんがいなくなった今やっと未来では律界魔法の効力が消えたということになりますから。」

「え、えぇ…そうね?」

過去が変わったことによって未来が変わるということは、初めて1万年後に行った時、世界には律界魔法が刻まれているはずだ。

そして、リュシアが死んでいるとも考えにくいだろう。となると、なぜルーベルナが律界魔法を見つけられなかったのも疑問だし、リュシアが生きていたとするならばあの巨大な魔力を見つけられなかったのもおかしい。

それに、リュシアが魔法具を作り始めたにも関わらず、未来では魔法具なんて一切広まっていなかった。

つまり、私たちが見てきたのは改変された後の未来のはず。

そして、改変された未来を見るというのであれば、500年で命尽きたリュシアが1000歳で世界にいるのはおかしいということになる。

ん?合ってるのか?

「一つ、大切なことを忘れていませんか?」

「え?」

大切なこと。それについて色々と考えてみるも、私には思い当たりがない。

「リュシアさんがいた時代、そしてそれより五百年後の未来、街や村を見つけることはできていませんでしたよね?」

少し表情を険しくして、ルーベルナは言う。

確かに、そうだった。

しかし、ログレン王がいた時代では確かに街があり、村もあった。

つまり人類の進歩ということでは?

「それは別に問題じゃないでしょ?ただ人の技術が成長して街とか村とかができたってわけで………」

「今、この世界には多くの村や街、なんなら国があります。

それらが、今から五百年後にはたったの一つすら存在していないんですよ。」

そう言われ、私はハッとする。

世界が………リセットされている?

いや、だとしてもだ。リュシアはそのリセットの間も生きていた。

一つ思い浮かぶとしたら………

「世界………戦争…………」

私の口から漏れたその言葉に、ルーベルナは頷く。

「世界戦争。世界中で戦争が起きることを指しますが、それが起きたというならば、村も街も全てがなくなり、もう一度それらが形成されたことと辻褄が合います。」

つまり、人が大勢死に、技術も文明も復興不可なレベルで壊滅したということだ。

その言葉に、私は息を呑む。

「リュシアさんの魔法は消えたのに、なぜあの世界にリュシアさん本人がいたのかも含め、この世界には矛盾が生じています。」

すぐそこに存在していた確かな矛盾。

なぜ今まで気づけなかったのか。自分の頭の悪さを後悔しながらも、私は思いついてしまう。

その可能性を。そんな未来を。

「こんなことができるのは………」

「えぇ。この世の因果摂理を動かせるのは律界魔法か、あるいは━━━━━」

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