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真実は残酷です

 根黒の余りの剣幕に俺は思わず絶句してしまった。根黒にとって『()()()()()()』の名は地雷ワードだったらしい。怒りからか肩を震わせ、ハァハァと息を吐いている。俺は怒り心頭の根黒を落ち着かせようと声を掛けるが、突然根黒は俺の膝に擦り寄ってきた。よく見ると根黒の目には涙が溜まっている。



「半田さ〜ん、聞いて下さいよ〜」



 先程の怒りとは打って変わって根黒は泣きながら俺にすがってきた。根黒の感情の急転換に俺はドン引きして後退りをする。何なんだ、このオッサンは。



「あのババアね、本っ当にひどいんですよ!あんなブサイクの老いぼれの癖にアンチエイジングだの不老だのほざいてて、全くどの口がいうのか?それに散々人をこき使った上に人造人間の件で難癖つけて口を封じた上で解雇しやがって。あんなクソババア、とっととおっ死んで地獄に落ちた方が世の為ですよ!ねぇ、半田さん!」



 余程尚葉が恨みがあるのか、根黒の悪口が止まらない。人造人間の件については自業自得と思うが、尚葉も中々に酷いことをしてきたのだろう。ちなみに今の会話は相談所の外で待機している尚葉たちにも筒抜けであり、最初からバッチリ聞かれている。恐らく根黒の暴言を聞いて尚葉は怒り狂っているところだろう。まあ、とりあえずそれは置いておこう。まずは確認すべきことがある。



「では根黒さん、認めるのですね?貴方は根黒でなく、矢場井毒太であることを」

「………ふぅ、バレてしまっては仕方ありませんね。いかにもデスマリッジ結婚相談所の所長、根黒万歳とは仮の姿。してその実態は長年理想の彼女を追い求める恋のマッドサイエンティスト、矢場井毒太とはこの私のこと!!」



 根黒は決めポーズをしながら自身が矢場井であることを認めた。…恋のマッドサイエンティストって何言ってるんだ?コイツ。俺が困惑していると根黒はニヤリと笑った。いつも見る下品な笑顔だ。



「かつて私を捕らえたハンターが半田さん、まさか貴方だったとは思いませんでしたよ。いやはや人の因果とは業が深いですな」

「何を言ってるのかよく分かりませんが…とりあえず何故こんな結婚相談所みたいな真似をしてるんです?それに理想の彼女を追い求めていると言ってましたがどういう意味…」

「グフフ。半田さん、貴方と私はよく似ている。立場こそ違えど根っこは同じですな」

「いや違います」



 俺は根黒の言葉を即座に否定した。こんな奴と同類されたくない。だが、根黒は笑みを崩さない。此処まで来ると不気味である。



「貴方が此処に来たのは結婚したいからでしょう?貴方も誰かの温もりを求めている。人肌恋しいんでしょう?寂しいんでしょう?」

「……それは否定しません」

「私も同じですよ。だから私は寂しさを克服するために、ずっと私の理想の女性を追い求めてきた」



 根黒が遠い目をする。しばし根黒は思案していたが、深呼吸すると今度は俺の目をじっと見つめてきた。……正直オッサンにまじまじと見つめられるのはキツイのだが。



「半田さん、貴方にはかつて捕らえられた恨みどころか感謝をしてるんですよ。貴方のお陰で私の理想の女性がようやく出来上がるんですから」

「理想の…女性?」

「はい、ペキコさんにお会いしたでしょう?彼女こそ長年追い求めた私の理想であり、究極の女性なのです!」

「ペキコ………よもやですが、彼女は……貴方が作った人造人間ですか?」



 俺は根黒に核心を突く質問を投げた。根黒は否定せずにニヤリと笑う。やはりそうか……ということは…。俺の中でもう一つの疑念が確信に変わる。



「ミカンさんは…いやミカンさんも貴方が作ったのか?」

「グフフ、左様。元々ミカンさんはペキコさんを完璧な女性にするための踏み台として用意したものです。この結婚相談所を作ったのも踏み台であるミカンさんに男性への好意をデータとして覚えさせることが目的でした。半田さん、貴方が充てがわれたのは全くの偶然です。まさか本当にこんな怪しげな結婚相談所に入会するバカがいるとは思いませんでしたよ、グフフ。そしてミカンさんが学習したデータをペキコさんにフィードバックさせるべく…」



 根黒が言い終わらない内に、俺は根黒の胸倉を無意識に掴んでいた。先の根黒の発言を受けて一瞬で頭に血が昇ったらしい。俺は顔を真っ赤にして根黒を睨み付ける。



「…ふざけるなよ。人の純情を弄びやがって。ミカンさんはペキコを作るための踏み台だと?てめえ、何様のつもりだ!?」

「グフフ、でも良い想いをしたではありませんか?ミカンさんは所詮は未完成の粗悪品。ペキコさんこそが私の私による私の為の理想の女性なのです」

「この野郎!!」

「そんなにミカンさんが良ければ幾らでも用意しますよ。スペアはゴマンと居るので。半田さん、貴方には粗悪品のミカンさんの方がお似合いですよ、グフフ」



 根黒の辛辣な発言に思わず俺は右手の拳を振り上げた。今度は俺の方が怒りで肩を震わせている。コイツの挑発に乗ったら思うツボだ。何とか冷静になって怒りを鎮めねば。

 すると突然相談所の入り口のベルが鳴った。俺と根黒が同時にドアの方を向く。



「ペキコさん。今、手が離せないので出てください」



 俺に胸倉を掴まれたまま、根黒は部屋の奥からペキコを呼んだ。奥から現れたペキコは前回会った姿とは完全に別人となっていた。まるで何処かミカンさんを彷彿させるような…やはりミカンさんのデータを根黒がフィードバックしたという結果か?ペキコがベルを鳴らした相手と話した後、此方へと戻ってきた。



「所長、……いえ、()()()。仁沢賀瀬グループの者が来たそうですが、いかがしましょう?」

「なっ!?仁沢賀瀬ですと!?何故此処に??」



 ペキコの言葉に胸倉を掴まれたままの根黒が驚愕した。

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