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身の回りを片付けます

 さて、婚活を始めるにあたって何をすればよいのか。片っ端からネットで調べたところ、思っている以上に必要となるものが多い。とりあえず個人的に気になったことのみ以下にメモする。


 ・清潔感のある身だしなみとコミュニケーション能力を磨くこと

 ・婚活を優先したスケジュールの組み立て

 ・客観的に自分を知ることで相手に求める条件を決める


 うーん、ざっくりこのくらいかな。まず自分の格好をどうにかする方が先だろうか。俺はネットを閉じると、ふと自分の部屋を見回した。

 ………ありとあらゆる物がアチラコチラに散乱しており、ヤバそうな臭いがどこからともなく漂っている。全体的な空気そのものも澱んでおり、部屋の暗さと相まって全ての訪問者を拒んでいる。正にザ・拗らせた独身男の部屋といった感じと呼ぶべきなのだろうか。


 俺は「はぁ~」と溜め息を付くと、万年床と化した布団たちをしまい、ずっと閉めっぱなしだったカーテンと雨戸を思い切って開け放った。太陽の光が部屋の中に差し込むと、汚部屋の全貌がはっきりと目に飛び込んでくる。

 これまで暗さのせいで気にならなかったものの、改めて積もりに積もったホコリと所々に付いているカビのせいで俺はむせ返りそうになった。認めたくはないが、これが現実なのだ。これでは先程挙げた清潔感とは遥かに程遠い。


 仕方なく俺は近くのコンビニへ行くと、ありったけの燃えるゴミと燃えないゴミの袋を買って部屋の片付けを始めた。バウンティハンターの商売道具となる武器や装備品は全部押し入れに放り込み、散乱したゴミたちを分別しながら袋へ入れていった。



「おや、お引越しですか?こんな時期に大変ですね」



 突然半開きのドアの向こうから声を掛けてきたのはアパートの隣の部屋に住む新婚の夫婦だった。夫婦は俺よりも一回り以上年下だが、俺よりも遥かに羽振りの良い仕事をしているらしく二人とも身なりが整っている。端から見てもヤバそうな俺に対して分け隔てなく接してくれているが、先日大家に影で俺へのクレームと悪口をいっているのを知ってから夫婦への心象はかなり悪い。



「ああ…いや、何というか。たまには片付けをしないとなと思いまして」

「そうですか。実は私たちも近々引っ越しを考えてまして。子どもが出来たんで広い家に住もうと思っているんですよ」



 確かによく見ると奥さんの腹が膨らんでいるように見える。………まあ、壁に防音機能がないからオタクらがお盛んなのは知ってますけどね。特にオフで寝ている日に昼間からやられた時はマジで殺意が沸いた。一度壁を思い切り蹴飛ばしたらしばらく静かになったが、そのことで根に持たれたのかもしれない。



「……そ、そうですか。おめでとうございます」

「じゃあ、失礼します」



 ……手伝う気がないなら声を掛けるな。ドアから去っていく際に二人のヒソヒソ声が聞こえた。どうも俺のことをバカにしているようでクスクスと笑っている。夫婦の姿が見えなくなった後、俺は思い切り舌打ちをした。何とも惨めだ。どうして世の中不平等なのだ。俺が一体何をしたというのだ。



「そっちも引っ越しするなら、さっさと出ていきやがれ!」



 俺は腹いせに分別せずにゴミ袋にドンドンゴミを放り込む。ゴミ袋が20袋くらいになった頃、ようやく部屋の床が見えてきた。だが、さすがに一人の片付けは堪える。俺はゴミ袋の中に倒れ込むと、風呂はおろか着替えすらもしないまま爆睡してしまった。そういえばドアも窓も開けっ放しだったが、幸い?賊に入られることはなく無事に一夜を明かすことができた。イビキをかいた中年男性がゴミの中で寝ていたら誰でも入るのは躊躇するか。



「……さてとコイツらをゴミ捨て場に出さないと行けないけど、婚活するならまず出会いの場を探さないとな」



 ゴミ袋の中で目が覚めた俺は床に置きっぱなしになっていたスマホを開くと、「婚活 出会いの場」のキーワードで検索を始めた。

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