表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/24

ついに対峙します

 デスマリッジ結婚相談所。ある意味全ての始まりの場所へ俺は戻ってきた。…ま、正確には俺以外にもいるのだが、それは今は置いておく。何度か来ているはずなのに緊張感が半端ない。下手したら初めて此処に来た時よりも緊張しているかもしれない。


 相談所の入り口のインターホンを鳴らす指が震える。根黒に会えたとして何から話すべきだろう。ミカンさんのことも確認しないといけないし…。頭の中で堂々巡りを繰り返す。しかしこのまま止まっている訳にもいかず、腹を決めた俺は一思いにインターホンのベルを鳴らした。



「はい、デスマリッジ結婚相談所です」



 相談所の中から涼やかな若い女性の声が響く。どうやら()()()のようだ。最後に会ったときは亡霊のようにやつれた様子だったが、声の感じから元気を取り戻したように見える。



「半田です。根黒さんに用事があってきました」

「…半田様ですね。所長を呼んでまいりますので少々お待ち下さい」



 ペキコは根黒からの言いつけを守っているのかドアには出ず、根黒を呼んでいるようだ。少しの間を置いてからゆっくりと相談所のドアは開かれた。ドアの向こうにいたのはペキコではなく、お目当ての所長である根黒だった。



「おや、半田さん。今日はどうされましたか?」

「あ、……その…実はですね。折行って相談がありまして」

「ほほう。……よもやミカンさんと何かあったのですかな?」

「…何かと言えば何かなんですが…」

「まあ、立ち話もなんですからどうぞ中へ」



 俺は話の切り出しに戸惑い、しどろもどろになる。一方の根黒は俺の様子を気にも留めずに相談所の中へと促す。俺は無言で中へ入ると、そのまま来客用の椅子に腰掛けた。俺の真正面に根黒がいつものような下品な笑いを浮かべて座る。何とも言えぬ空気が部屋の中に漂う。



「ところでご相談とは?」

「へ!?ええと…そうですね…」



 しまった、そもそもミカンさんと別れてすぐにアパートの一件があったので、その後のミカンさんのことがすっぽりと頭から抜けていた。とりあえずこれまでの出来事を尚葉のことを伏せた上で根黒へ話すことにした。俺の話を根黒は黙って聞いてくれている。



「……という訳でミカンさんと仲直りも出来ないまま今に至っています」

「なるほどなるほど。それは大変な目に遭いましたね。ところで半田さん、自宅のアパートにミカンさんを連れ込んだのですか?」

「へ?気になるのはそこですか?」

「はい。化け物に襲われたとか色々と大変だったのは理解しますが、さすがにいきなり自分のテリトリーに連れ込むのはいかがかと」

「いや、それは…」

「少々貴方には失望してますよ、半田さん」



 俺に対してよく分からん怒りを覚えているのか、根黒の表情が強張る。だが、根黒の認識は事実と完全にズレている。そもそも俺の家に行きたいと言ったのはミカンさんなのだが。それに結局大家と揉めてミカンさんは逃げ帰ってしまったから何も進展すらしていない。気を取り直して俺は根黒にミカンさんと連絡が付かないかを聞く。



「とにかくミカンさんと連絡は取れますか?俺から何度電話しても出ないんです」

「……ふう。半田さん、本当にもう一度ミカンさんに会いたいのですか?」

「へ?どういう意味です?」

「言葉の通りですよ」



 俺はマヌケな声で返事をしたのに対して根黒の表情がますます真剣味を帯びていく。これまでの飄々とした態度から明らかに感情が露わになっているようだ。が、その時尚葉の言葉が俺の脳裏に(よぎ)った。



「……………人造人間」

「!?」



 俺は思わずポツリと漏らした。小声のつもりだったが、根黒にはハッキリと聞こえたらしく明らかな動揺を見せている。俺はこの機を逃すことなく根黒に畳み掛けた。



「根黒さん。一つ確認させてください。十年ほど前に俺と会ってますよね?」

「え!?……いやあ、どうでしたかな?最近物忘れが激しいものでして…」



 先程までの真剣な態度とは打って変わって、根黒がしどろもどろになる。だが、今の態度で十分だ。やはりこの男は俺のことを覚えている。俺は決定的なことを告げることにした。



「根黒さん、いや違うな。矢場井(やばい)毒太(どくた)さんといった方がいいかな?かつて病院で死体漁りしていたところを捕まえて以来の呼び名ですね」

「………………」



 俺からの言葉が図星だったのか根黒が固まった。根黒の額から脂汗のようなものが滴り落ちる。それて何とかごまかそうとしているのか、笑みを頑張って浮かべようとしたが、動揺から完全に引きつっていた。



「……な、な、何を仰って…」

「かつて貴方は仁沢賀瀬グループに雇われていた科学者だったそうですね。さすがに俺もそこまでは知りませんでしたよ」

「……ご冗談は辞めてくださいよ」

「彼女から直接聞いたんですよ、()()()()()()からね」

「!!!」



 俺から尚葉の名前を聞いた途端、根黒が両目を見開いた。



「あ、あ、あ、あのババアあああ……!!」



 根黒の口から今まで聞いたことないくらいの叫び声が上がった。

後数話で完結予定です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ