表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/24

何か疑惑が湧きます

 突然ミカンさんに抱き着かれたことに俺の思考は停止した。不可抗力とはいえ、デート中にいきなり姿を消してしまったのだ。どんなに怒っているか、もしくは悲しい思いをさせてしまったのか。俺は彼女の思いを正面から受け止めようと覚悟していた。



「半田さん、心配しました。いきなり居なくなったので私のことを嫌いになったのかと思いました」

「いやいや!そんなことはないです!というよりも謝らないといけないのは俺の方です!」

「でも本当に良かった…」



 でもミカンさんは涙まで流して俺の心配をしてくれていた。なんてこった、この人は天使か?もしくは女神?兎にも角にもまずは謝るのが筋だろう。俺はミカンさんを一度離すと、その場で膝をつき改めて深く頭を下げた。



「ミカンさん、本当に申し訳ございませんでした。例え不可抗力とはいえ、俺が原因なのは事実です。俺に愛想を尽かしても仕方ないくらいです。でも、もし…もしよろしければもう一度デートをやり直しさせてほしいのですが…お願いできますでしょうか?」

「そんな半田さん…もちろんです。こんな私で良ければ」



 ミカンさんは涙を拭うと笑顔で返事をしてくれた。その表情に俺は年甲斐もなく、ドキッとする。これは…いわゆる恋って奴なのか?ミカンさんから手を握られると俺の心拍数はますます上がっていく。

 先の拉致騒動との温度差に風邪を引いてしまいそうだが、そんな事はどうでも良かった。やはり俺はミカンさんのことが好きなんだ。


 とは言うものの一つ腑に落ちないことがある。何故ミカンさんは此処に来たのだろう?俺からは連絡がつかなかったというのに。



「ところでミカンさん、一つだけ教えてください」

「はい、何でしょうか?」

「どうして此処に来たんですか?俺と連絡がつかなかったから、てっきり帰ったのかと思ったんですが」

「えっ?!私は…半田さんから此処にいると確かに連絡を受けたので来たのですが…違うのですか?」



 ???どういうことだ?確かに拉致に巻き込まれている間は仕方ないが、その後俺は何度かミカンさんへ連絡を取っていた。でもミカンさんから応答はなく、やむを得ずデスマリッジ結婚相談所へ来た次第だ。

 となるとだ、俺を(かた)った奴がいるということだ。俺は真顔になるとミカンさんに改めて問いかけた。



「ミカンさん、申し訳ないです。ミカンさんが連絡を取ったという俺の電話番号を見せてくれませんか?」

「え?…はい、これで良ければ」



 ミカンさんがスマホの通話記録を俺に見せてくれた。違う、これは俺の番号じゃない。確かミカンさんに初めて会った時に教えたはずだが、どこですり替わった?



「ミカンさん。お手数なんですが、この番号に掛けてもらっていいですか?」

「分かりました」



 俺からの頼みにミカンさんはスマホを操作すると、俺を騙る電話番号に掛け直した。すると…



『はい、半田です』



 確かに俺の声だ。が、しかし肝心の俺は此処にいる。ミカンさんが騙されてもおかしくはないが、ちょっと気分が悪い。俺はミカンさんに代わってと頼むと軽く咳払いした。



「初めまして半田さん。奇遇ですね、私も半田です」

『え!??』



 電話の主が明らかな動揺を見せた。相手の様子に俺はニヤニヤしながら電話を続ける。



「ミカンさんと仰る女性に連絡してデスマリッジ結婚相談所に来るように行ったんですよね?それに関しては結果オーライです。ありがとうございました」

『はあ…どういたしまして』

「ですが、人を騙るのはよくありませんね。どういう意図があるかは知りませんが、次からは辞めてください。根黒さん」

「ええ!?」



 俺の言葉にミカンさんが驚きの声を挙げる。考えてみたらこんなことをする奴は思い付く限り一人しかいない。俺は溜め息を付くと、電話の主に問いかけた。



「何故こんな真似をしたんです?そろそろ出てきてくださいよ」

『グフフ。さすがですね、半田さん。なーに、大した意図はありませんよ』



 部屋の奥から根黒がボイスチェンジャーとスマホを持ったまま現れた。例の如く張り付けたような笑顔を此方へ向けている。人を騙ったことに対する反省の色はまるでない。



「嘘の俺の電話番号をミカンさんへ教えたのは何故ですか?」

「ミカンさんのことが心配だったんですよ。いくら真剣交際とはいえ、何処で(ほころ)びが出るか分からない。極力私を通してやり取りいただきたく、このような方法を取らせていただきました」

「それっておかしくないですか?だったら別に真剣交際とかじゃなくてもいいのでは…」



 俺が根黒へ抗議しようとすると部屋の奥からガタッとした音が聞こえた。俺よりも根黒の方が慌てて音の方向を向く。するとペキコがヨロヨロしながら此方へと出てきた。先程の美人姿は何処へやら。長い黒髪を振り乱し、全体的にやつれたようにも見える。まるで亡霊のようだ。この短時間で何があったのだ?



「ペキコさん!!」



 根黒は倒れそうになるペキコを抱きかかえると、再び部屋の奥へ戻ろうとする。



「半田さん、この話はまた別の日にしましょう。とりあえずバレてしまったからには直接半田さんがミカンさんと連絡取り合ってくださいね」

「最初からそうさせてください」

「では私は急用ができてしまいましたので、後は若い二人でごゆっくり。お熱い時間をお過ごし下さい。グフフ」



 根黒は余計なことを言うと、そのままペキコと共に部屋の奥へと消えた。部屋には未だ呆然としているミカンさんと根黒の態度に納得行かない俺だけが残された。



「……えっと…ミカンさん。とりあえず改めて連絡先教えてくれませんか?」

「あ!はい!」

「あと今日これからどうしますか?と言っても夜になっちゃいますけど…」



 気づけば既に外は夕暮れだ。あと出来るとしてもディナーくらいだろう。ミカンさんが良ければ、一緒にと思っているのだが。



「あの、一つお願いがあるのですが」

「何でしょうか?」

「半田さんのお家に行ってもいいですか?」

「はい、もちろん。…………は?」



 ミカンさんからの予想外のお願いに俺は思わず固まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ