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何かとんでもないことになります

 

「たかがチンピラ風情(ふぜい)が随分と偉そうじゃないか」



 俺のふてぶてしい態度に尚葉が顔をしかめた。明らかに気分を悪くしているようだ。対して尚子は数の差から未だに余裕をかましている。



「へっへーん☆りょうちゃんったら往生際が悪いのね。大人しくアタシと一緒になれば楽になるのに。もったいな〜い♡」

「黙れドブス!!お前はすっ込んでろ!」



 横槍を入れてきた尚子の態度に思わず感情的になる。さすがの俺もムカついてきた。すると尚子の顔がみるみる内に真っ赤になって体をワナワナと震わせている。どうやら尚子の逆鱗に触れたらしい。



「てめぇ!誰に向かって口叩いているんだ、ゴラァ!!絶対に許さんぞ、覚悟しろ!やれ、お前ら!」

「「「へい」」」



 先程までの気持ち悪いくらいの猫なで声は何処へやら。野太い罵声を浴びせると俺の周りの男たちに命じる。男たちは棍棒やらナイフを取り出すと、俺に向かってにじり寄ってきた。



「悪く思うなよ、お嬢様の命令だからな」

「……本当に俺とやり合うつもりか?」

「フン、そんな口を叩けるのも今の内だ。すぐに楽してやるよ」



 男たちが一斉に襲い掛かってきた。が、俺は瞬時に男たちの動きを読むと、一人一人を確実にさばいていく。はっきりいってバウンティハンターとして幾多の犯罪者とやり合ってきた俺にとっては、この程度の実力の連中など朝飯前である。まさにちぎっては投げ、ちぎっては投げの無双状態だ。

 この状況を尚葉は目を丸くしながら意外そうに見ている。尚子の方は不甲斐ない男たちに罵声を浴びせながら地団駄を踏んでいた。そうこうしている内に俺の周りにいた男たちは全員倒されて伸びている。



「…もう終わりか?数だけで口程にもないな」

「チィ…ふざけやがって貧乏人風情がぁ…」

「やるじゃない、素晴らしい!」



 歪んだ表情で悪態をつく尚子とは対照的に尚葉は何故か満足そうに拍手しながら微笑んでいる。尚葉の反応に俺は首を傾げた。



「単なるチンピラだと思ったけど、大した強さじゃないかアンタ」

「えっ??!…はあ、どうも」

「ねえ、アンタ。私専属のボディガードにならないかい?コイツらよりもよっぽど頼りになりそうだし。もちろん給料は弾むよ。最低でもアンタの今の仕事の10倍は払おうじゃないか」

「へ??」



 尚葉からのいきなりのスカウトに戸惑ってしまう。しかし今の10倍の報酬か…悩むなぁ。



「ちょっとママン!どういうつもり?コイツを痛い目に遭わせないとアタシの気が収まらないよ!」

「お黙り!!アンタのことはもうどうでもいいわ。そこら辺の男でも捕まえて何処かに行きなさい!」

「はあああ!!?こ、こ、このババア!」

「ああん!?親に向かって何だその態度は!」



 尚葉の勝手なスカウトに納得行かない尚子がムキになって尚葉に突っかかってる。どうもこの二人あまり仲が良くないようだ。不毛な口論の末に尚子は倒れている男の一人に駆け寄ると、懐を探って何かを取り出した。



「どいつもこいつも使えねぇ!!こうなったらアタシがぶっ殺してやるよ!」

「なっ!?」

「尚子、場をわきまえなさい!」



 尚子の手に握られていたのは小さいながらも、紛れもない拳銃だった。尚子の腕は恐怖なのか怒りからかブルブルと震えている。俺を脅して此処に連れてきた奴が持っていたのか。幾ら俺でも飛び道具を出されると不利だ。



「どうどうどう…落ち着いて落ち着いて」

「これが落ち着いてられるか!クックック…覚悟しろ!」



 尚子が引き金を引こうとした瞬間、尚子の前に黒い幕が降りてきた。??この倉庫に幕なんてあったか?驚いて見上げると、ニワカには信じられない光景が広がっていた。



「「な、……なんじゃこりゃー!!??」」



 俺と尚葉がハモるように叫んだ。視界に映ってきたのは倉庫の奥から巨大な白い物体が四つんばいで此方へ迫って来ている姿だった。まるでダイダラボッチのような…生き物なのかこれは?黒い幕に見えたのは白い物体から生えている恐ろしく長い髪の毛だった。

 夢か?これは?余りにも非現実的な光景に言葉を失うが、それは横にいる尚葉も同じらしい。二人してどうしていいか分からず完全に固まってしまった。しかし尚子は何処へいった?



「ぐばあああ!!」



 目の前の白い物体はけたたましい声を上げると頭を上に振った。そして何かを飲み込むように「ゴクリ」と言う音がハッキリと聞こえる。長い髪の毛のせいで表情こそ見えないが、どうやら尚子はコイツに食べられた…みたいだ。



「に、に、逃げ…逃げ…」

「ちょっとアンタ、急いで逃げるわよ!!?」



 我に返った俺は横にいた尚葉に引っ張られるように全速力で倉庫から脱出した。伸びている男たちを残すのは忍びないが、もはやそんなことを構っている暇はない。とにかく逃げるんだ、本能的に此処にいてはいけない。成り行きで一緒になった俺と尚葉は年甲斐もなく無我夢中で走った。

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