あなたの物語 ルミ童話
ある寒い冬の日、一人の少女が部屋で本を呼んでいました。
その子の名前はルミ、本が大好きな女の子。
ルミはその日部屋に今まで見たことのない本を見つけます。
その本の題名は、あなたの物語。
「こんな本、私の部屋にあったかしら?」
ルミは不思議に思うと、すぐに本を手に取り最初のページを開きました。
不思議とその本は、真っ白で何も書かれていません。
「変な本、面白そうと思ったけどなんだか期待外れだわ」
ルミは本を放り投げて別のところに行こうとしたその時、
なんと、本がひとりでに動き出し白紙の最初のページに
ルミを吸い込んでしまいました。
「キャー!」
ルミがついた場所は、真っ白で殺風景、
ルミ以外なにもない白紙の世界でした。
「ここは、どこなの?お母さん!お父さん!助けてよ!
ああ、きっと私が本をあんなふうに扱うからだ…」
ルミは、何もない世界の恐怖で座り込んで泣いてしまいました。
しばらくして、ルミは顔をあげてみます。
そうすると、周りは完全な白ではなく少しだけ黒が混ざっていました。
「どうして?なんで、さっきまでは真っ白だったのに
まるで私の心が連動してるみたい、もしかして」
ルミは今までで楽しかった事を思い出してみます。
そうすると、辺りはその風景に包まれました。
「やっぱり、そうだ!この世界は私が作っていくんだ!」
ルミは生まれてからの10年間の楽しい記憶や、経験を
描いていきました。
「森の中にお父さんと一緒に出かけたり、お母さんと一緒に
街へお歌を聞きに行ったり、部屋で面白い本を見つけて
いっぱい読んだり、いろいろしたな」
でも、ルミの記憶はそこを尽きてしまいます。
どんなに奥に進んでも、一向に出口は見つかりません。
「ああ、どうしようもう楽しい記憶も思い出も全部使っちゃった…
あ!そうだ!これから想像して記憶を作ればいいんだ!」
ルミは、思いっきり楽しい事を想像し始めます。
「今度は、お父さんと一緒に海に行ってお魚さんをたくさん見たり、
お母さんと一緒に街で歌ってみたり、本を読むだけじゃなくて
今度は書いてみたり!」
ルミは、ついに最後のページにたどり着きました。
「さて、最後はこの本から脱出してここから先も私の
冒険を続けよう!そして私はもう物を乱暴には扱わない!
みーんな、私の思い出のひとつなんだもの!」
ルミの前にひとつの扉が現れる。
「ごめんなさい、そしてありがとう私に大切なものを気づかせてくれて」
ルミは扉を開け、光輝く世界に飛び込んで行った。
「うーん…あれ?ここは?」
「ああ、ルミ起きたんだねおはよう」
「お父さん?どうしてここにいるの?」
「ルミの悲鳴が聞こえたんで何かあったのかと思って…
いや、すまない勝手に部屋に入ってしまって」
「いいのよ、お父さん別に何もなかったから…ありがとう」
「そうか、何かあったら言えよ?じゃ、俺は下で紅茶飲んでるね」
ガタン!
「…お父さんったら、本当に紅茶好きね…ん?何この本?
冒険の書?こんな本私の部屋にあったかしら?」
ルミは不思議に思うと、すぐに本を手に取り最初のページを開きました。
すると、不思議なことに自分が今までやってきて楽しかったことや
これからの事、そして何より全てを大切にすることが記されていた。
「フフ、こんなに私にぴったりな本、なんだか面白いわね
誰が書いたのかしら?…著者名がないわねほんとに変な本」
今のルミには見えない最後のページには、こんな事が書かれていました。
著者名ルミ…と。
私の他の作品も読んでくださると、嬉しいです!