新しい日々 2
本日、2話同時更新です。(この話が短いため)
1つ前のお話しからどうぞ。
「静かになったねえ」
「本当に! これでようやく、念願の『のんびり暮らし』が実現できそう!」
騒がしい王都の人々が帰って行った数日後のこと。
アニスと師匠のマーロウは、窓の見える居間でのんびりと、毛糸を編んでいた。
「のんびり暮らしとか言っている割に、お前は次々、仕事を作ってくるねえ。今度は何の小鳥だい?」
「これは、純粋な小鳥のぬいぐるみよ。……ただただ可愛いものも作れないか、って小間物屋さんに相談されたの」
アニスが繰るのはかぎ針で、その手の中に生まれつつあるのは、毛糸でできた小鳥である。
「仕事がわたしを離してくれないのよねえ」
「まあ、倒れない程度に好きにやりな」
苦笑するマーロウが繰るのは棒針で、彼女が編んでいるのはどうやら、ミシェールの為のケープのようだ。赤い糸をベースに白い糸で雪の模様を編み込んでいく、なかなか愛らしい一着である。
「あにしゅーぅ、おてまみきたよぉ」
「あらありがと」
部屋に入ってきたのは、クマと図鑑を携えたミシェールである。魔術学習の禁止がまだ解けないミシェールは今、図鑑に夢中なのだ。
「転送箱?」
「ん。ぽとってはいってた」
アニスの机の上には、セージが置いて行った小型の転移装置が置かれている。あの日から、セージはそこにめがけて手紙を送ってくるようになったのだ。
アニスは箱を覗きに行き、ほどなくして一通の封書を片手に居間に帰ってきた。宛名は『我が愛しの小鳥、アニス・シード様』である。
「おやまたかい。ソレルの末のはマメだねえ」
「いやいや。こんなにマメに手紙を送ってきたのは正直、付き合いだしてから初めてよ。……このお遊びの宛名、なんとかならないのかしら」
「ははは。反省したんだろうねえ」
「いつまで続くんだか。……どれどれ?」
そうぼやきながらも、口角が上がるのは止まらない。アニスはいそいそと手紙を開き、そこに記された文字を読み――
「『王立魔術研究局フォレスタ支局を立ち上げることになった。初代局長は私だ。来月にも小さな事務所を開設する予定で、大魔女殿の庵の近くの空き家を借りることになりそうだ……』 ――はいっ⁉」
と、素っ頓狂な声を上げる羽目になったのだった。
「おにいしゃん、おひっこし?」
「こりゃ、冬も騒がしくなりそうだねえ」
つまり、こちらの師弟の言うとおり。
どうやら、アニスの目論む「のんびり暮らし」はまだしばらく、叶わぬことになりそうである。
おしまい。
これにて終幕!
お読みいただいて、ありがとうございました……!
……なおこちら、書籍化することになりました!
詳しくは活動報告でご報告しておりますので、よろしければご覧下さい。
ありがとうございました!




