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アニス、駆けずりまわる 2

切れ目の都合で短いので、今日は2話更新しています。(これが1話目)

 時は少し、遡る。


 アニスが出掛けていくのを見送った後、ミシェールはテディを抱え、裏庭でひとり遊びをしていた。

 今一番、お気に入りの遊びは、砂を入れた平らな箱の中にいいかんじ(﹅﹅﹅﹅﹅)の枝で描く、アニスのところで見た魔法陣の再現だ。

 紙と違って、書き損じても砂を均せば何度でも書くことが出来るし、ペンとちがって、木の枝はいくらでも、新しいものが手に入る。

 それに何より、手が汚れない。反古紙にペンで魔術文字の練習をしたら、インクで手が真っ黒になってしまったミシェールにとって、これはものすごく重要なポイントだ。


「しゃーてと!」


 最近、森の中で拾った楢の木の枝が、()()()()()()()()()なのだ。ミシェールはそれを握って、ご機嫌に天に突き上げる。


「きょうはー、きのう、がんばって、おぼえた、ことりしゃんをー、かきまーしゅ!」


 宣言し、ミシェールはむふん、と鼻を膨らませた。

 ミシェールは昨晩、アニスが戻ってくる直前までこっそりと、あの机に広げられていた魔法陣を見つめていたのである。


「えーと、こっちに、くちばしー」


 鼻歌を歌いながら、ミシェールは砂を入れた箱の中に、握った枝を滑らせた。平らに均された砂の表面に、枝の通った後がぐねぐねと、自由気ままな曲線を描いていく。


「ここに、おめめ。こっちに、しっぽ……」


 もちろん、三歳児程度の握力しか持たないミシェールの書く文字や魔法陣は、未熟なものである。文字はまだ読むのが精一杯だし、魔法陣として描いた絵も再現性は低く、小鳥だかミジンコだか分からない。


「こっちは、はっぱの、うねうねー……」


 つまりそれは、普通であれば、なんの魔術も発動しない、ただの子供のらくがきでおわるはずだった。

 ――しかし。


「できた! みて、てでぃ!」


 ミシェールの短い腕で抱え上げられたクマのぬいぐるみ、テディことセオドア二世のボタンの目が、きらりと光る。


「みしぇ、じょおずでしょー!」


 セオドア二世の目が光っていることなど、魔法陣に夢中のミシェールは気づかない。そのまま「えーと、まほーじんは、まりょくを、ながすー」と呟くと、箱の中に指を突っ込んで、見よう見まねの魔力を、指の先から押し出したのだ。

 それは、ミシェールの瞳の色によく似た、淡い水色の、ごく弱い魔力だった。到底、事件になどなりようがない、ほんの少しの量だったのである。

 だというのに。

 その魔力を見たセオドア二世の目がびかびかと、エメラルドのように輝いた。そして、わずかなミシェールの魔力に沿うように、淡い緑色の大量の魔力を噴き出すと、ミシェールの描いた小鳥の絵を包み込んだのである。


「わ⁈」


 吹き上がった魔力が、天を貫く。

 その瞬間、雲の切れ間から大量の鳥が、ミシェールに向かって舞い降りてきたのである。

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