三日目
『8月31日』
お?
『「学校」「自分」「謝罪」』
ん……?
『反省文
まず謝らなければなりません。日記を書き忘れたというのは嘘です。
こうすれば面白くなりそうだなあ、と思いついてやりました』
あ、うん。そうだろうね。
もし忘れてたことに気づいてからあの山のような紙片を作ったんだとしたらそっちの方が狂気じみてるから、むしろ安心したよ。
というか坂本くん、もしかして事ここに至ってなお許されようとしてる?
『一日目、二日目と日記を書いてみて、思った通りに面白い日記になってくれて嬉しかったのですが、三日目に取り掛かろうとした時に急に気づいたんです。これはやっちゃいけないことだったんじゃないかって』
そうだね。現時点で最低でも呼び出しと注意が確定しているくらいにはやっちゃダメなことだったね。できればこの大量の紙片を作ってるタイミングで気づいて欲しかったかな。
実際面白い試みではあったと思うよ。これが絵日記の宿題じゃなかったらね。
自由研究として提出していたら評価したと思うよ。自由研究の宿題は無いけど。
『僕の思いつきで先生にご迷惑をおかけしてしまい、本当に申し訳ありませんでした。
ところで日記はどうだったでしょうか。ランダムなキーワードをもとにして書いたにしては良い出来と言えるのではないでしょうか。
説得力のある嘘と言うのは、嘘の中にある程度の真実を織り交ぜるのが大事なんだと以前どこかで目にした覚えがあります。
一日目で言えば、僕のおばあちゃんの家に行って野菜をもらったのは夏の間にあった本当のことですし、二日目は実在の人を、それも親しい人を日記内に出すことで説得力が生み出せたのではないでしょうか?
嘘で書くと言っても色んな形があるんだなあと、今回日記を書いてみてとても勉強になりました。面白かったです』
反省してないなあ坂本くん。全然反省してないなあ。
いや、悪いとは思ってるけどやったこと自体は後悔してないって感じなのかな?
というか「ところで」じゃあないんだよ。どうして申し訳ありませんでした以降の文章を心に仕舞っておけなかったんだい。仕舞っておいても呼び出しはしたけど。
しかし取り組んだことに対する真剣な態度や、そこから何かを学ぼうとする姿勢は大したものだなあ、本当に。
今回に関しては学びの姿勢も学んだ内容も、どちらも褒めづらいことこの上ないけど。
三日目はこれで終わりか。
一日目、二日目に続いてどんな怪文書を読まされるのかと思っていたけど、内容自体はまともで(精神的に)助かった。
とんでもない茶番に巻き込まれたような脱力感はあるけど。
しかし坂本くんが三日目をこうすると想定していた場合、たった二日分のためにあの大量のキーワード紙片を作ったことになるのかあ。
今回に限らず坂本くんはたまにこういう理解しがたい行動を起こすけど、一体何が坂本くんをそこまで駆り立てるんだろう。若さゆえの真っ直ぐさと言うにはあまりにも異質なんだよなあ。
さて、三日分の日記を確認し終わった訳だけど……どうしようかね。