1 冒険者ギルドで登録した
「ごめんください。」
丁寧に挨拶をして、扉をくぐると、
強面のお兄さんたちや、やたら威圧感のあるお姉さんたちが、
一様にこちらを睨みつけるようにこちらを見てきた。
「あは、あははは。どうも。」
苦笑いを浮かべつつ、
その間を通り、受付まで向かう。
数人の受付嬢がいたが、
できるだけ怖そうじゃなく、愛想のいい人のところへ向かう。
「お姉さん、僕、冒険者になりたいんですけど、
ここで登録できますか?」
「うん、できるよ。
じゃあここに名前と得意なこと、
う〜ん、そうだな〜。
剣とか、魔術とか、できることを書いてね。」
「はい、わかりました。」
えっと…
剣、魔術。
「って、あらあら。
シエスタくん、お姉さんの説明が悪かったね。
魔術は何属性が使えるのかも書いてね。」
えっと…それじゃあカッコづけで、
(火、水、風、土、治癒、身体強化…)
「……。」
お姉さんが無言でこちらを見つめていた。
「どうしたの、お姉さん?」
すると、お姉さんは首を振り、シエスタに聞いてきた。
「シエスタくん、今書いている魔術全部使えるの?」
「え?うん、師匠に、習ったんだ。」
「もしかして、シエスタくんのお師匠様って、有名な人?」
「たぶん?カミラお姉ちゃんも魔術じゃあ誰も構わないとか言っていたから。」
「その…カミラ様ってどんな方ですか?」
「カミラお姉ちゃん?
う〜ん…綺麗な赤髪で少し大雑把で…
エクスカリバーって剣を持ってたかな?」
「……。」
「そうだ!カミラお姉ちゃんったら、酷いんだよ。
剣の稽古だ〜って最近はエクスカリバーで僕と撃ち合うんだ。
僕の剣は頑張って作ったやつなのに、
何本も何本も駄目にしちゃったの。」
ねえ酷いよねと同意を求めたところで、
お姉さんが固まっていることに気づく。
「あっ!ごめんなさい。
僕、余計なことばかり話しちゃって。」
「ううん、そんなことないわよ。
お姉さん、シエスタくんとお話できて嬉しいな。」
「えへへ。」
「お姉さん、シエスタくんがカミラ様とお稽古しているのはわかったわ、
今度はシエスタくんの魔術のお師匠様のこと聞きたいな〜。」
「えっ?
師匠のこと?
えっと…確か名前はエルミラだったかな?」
「え、エルミラ様?」
「うん、ハイエルフで凄い格好良くて、
凄い厳しいんだ。
でも優しくて、僕が風邪を引いちゃった時は、
エリクシールを作るぞって、
バハムートのところへ行くとか言っちゃって、
まあアナスタシアさんが治癒魔術で治してくれたから、
すぐ治ったんだけど…って、お姉さん?」
「ブツブツブツブツ。」
「お姉さん?お姉さん?大丈夫?」
「えっ!えっと…。」
僕はお姉さんの額に手を当てる。
う〜ん…わかんない。
でも、おでこごっつんこは師匠たち以外しちゃ駄目だって言われてるからな…どうしよう?
「もしかしてお風邪引いちゃった?
僕、治癒魔術はまだそこまで出来ないけど、
【ハイヒール】掛けとく?」
「ううん、大丈夫、大丈夫よ。
お姉さん、元気、元気だから。
えっと…こほん。
シエスタくん、これで登録は終わりました。
あなたはFランクの冒険者となります。
それではプレートを…。」
お姉さんはそう言って、プレートを首にかけてくれる。
どこか甘い匂いがして、ドキドキした。
「シエスタくん、パーティーはどうする?
もし良かったら、紹介することできるけど…。」
パーティー…仲間。
心惹かれるものを感じるが、僕は修行中の依頼のため、
ゆっくりとそして確実に実力をつけないといけない。
ランク上げをする気が一切ないため、
パーティー内での対立は必至だろう。
「お姉さん、ありがとう。
でも、僕はしばらく一人でやっていきたいと思います。」
「そう?本当はあまりにおすすめできないんだけど、
シエスタくんなら、大丈夫かな?」
「なにかあったら、お姉さんに相談してもいい?」
「もちろん、お姉さんはシエスタくんの味方だからね。」
頼もしい一言に嬉しくて、
ニッコリ笑う。
「ありがとう、お姉さん。」
「っ!?それじゃあ、依頼の方はあっちにあるから、
付き添いおうか?」
「えっと…それは大丈夫かな。
あの板にいっぱい貼られているやつだよね?」
「…うん、シエスタくんはBランクまでの依頼が受けられるようにしておいたから、
そこから選んでね。」
「はい!」
お姉さんなんか残念そうだったけど、どうしたのかな?
受付を離れて、依頼を見ていると、
なにやらこんなことが聞こえてきた。
「いきなりBランク依頼か?」
「いや、ここは安全策でCだろ。」
「は?何いってんだよ、安全策ってなら、Dで肩慣らしだろ。」
いや、おじさんたち、
何を言っているの?
普通、新人ならこの依頼が一番最初でしょ?
シエスタは周囲の反応などお構いなしにある依頼を持って、
受付へと向かう。
その依頼とは…