44.試験
宿屋を出ていざ当日。現在時刻一時半。女将さんとご飯を食べてからすぐ寝たからなんとかスッキリ!すっかり仲良くなっておばあさんなんて呼んじゃったり。私、本当の祖母に会ったことないから、すごく新鮮で楽しかったの。
さて、今日のおさらいをするとね、二時に会場入りして勉強。いわゆる最終チェックってこと。それで三時から試験開始!初めは筆記試験を受ける。その後はとうとう実技ね。
自身はもちろん……ある!あんなに訓練したんだもん!
「……邪魔。」
「あっ、ご、ごめんなさい。」
後ろから歩いてきていた同い年ぐらいの男の子に不快な目で見られた。張り切っていたら道を塞いでいたみたい。は、恥ずかしい……。
なんだか幸先悪いわね……。いいえ!これくらいのハンデがあった方がいいわよ!目立ちすぎてもいけないもの、ね?
受付の人に手続きをしてもらったらとうとう会場入り。私は、三番の部屋、十五番の席ね。
三、と書かれた部屋に音を立てないように入ると、既に何十人もの人がいて男女問わず勉学に励んでいる。薄くて汚れた服を着ている人もいれば、それなりに装飾を施した清掃を着ている人もいる。これは身分問わず受験、入学可能ということからの特色ね。
だからこそ私もここにいられるのよね。ホコリのついた、つぎはぎだらけの服に身を震わせながら足を進める。
自分の席に着くと早速ワークやら参考書やらを開いて集中モードに切り替える。それからは周りのことなんて全く目に入らなくて、私を見ている二つの視線に気が付かなかった。
─────────約一時間後
「これより筆記試験、開始となります。注意事項のお確かめをお願いいたします。また本校の試験では成績も大切なことには変わりありませんので、お気をつけて。」
んー、成績第一ではないって事かなぁ?難しい。それにしても注意事項、ねぇ。私はよくつまらないミスをするって先生に言ったらひたすら注意書きを暗唱させられてもう寝言でも出てきそうよ。
それから、しばらくして試験開始の合図があった。一斉に紙をめくる音や筆記用具で書き込む音がなり、会場に緊張が走る。黙々と問題を解いているとスーッと自分の世界に入り込む。そして集中しているはずの私に映像が流れた。来る途中に見たソレール王国の街並み。
ララ、ソガ、マーナ。私、頑張るよ。絶対に合格、いや、首席で合格してみせる!
それからのスピードは先程とは比べ物にならないものだった。問題を読むのと筆が動くのが同時のように見えてどんどん進んでいく。そして最終問題。
作文、か。
この試験には面接がない。その代わりと言ってはなんだけど、議題に対して自分の意見について書くという問題がある。ほとんどの人が苦手意識を持つ問題だけど、私は作文、大好きなの!文を書くのがとにかく好き!
さてさて、テーマは、
『身分差について自分の意見を述べなさい。』
身分差……。まず、ある方がいいのか、ない方がいいのかを書かないとね。んー、そうだな。
王宮で聞いた話や幼い頃の記憶を頼りに考えてみたけれど、あまりしっくりこない。これは思っていたよりも難関かも!
甘くみていたわけじゃないけど、難しい。
……私、今は平民のクララだよね。それならダメじゃん、王族目線で考えても。早く解き終わったおかげでまだ時間はある。もう一度初めから考えよう。
下町で過ごして思ったことをよく思い出すのよ。その時、ふとソガとマーナが話していたことを思い出す。
「お貴族様っていいよね、魔法使えるし、お金持ちだから自分で働かなくてもいいんでしょ。羨ましいなぁ。」
「本当だよな。少しぐらい分けて欲しいもんだ。そうすればもっと国がよくなるのにな。」
あの時はそうだね、と思っていながらもなにもできないと思っていた。でも、今なら、直に訴えるチャンス!
そう思うとスラスラと進んでいく。書くことさえ決まれば文章は勝手にポンポン出てくるから時間も余裕があるまま終えることができた。
「はい、そこまで。次は実技に移る。解答用紙を前へ提出し、教師の誘導に沿って外へ出るように。」
その合図とともにたくさんの受験生が立ち、ぞろぞろ前へと列をつくる。
その最後尾に並ぶと私の後ろにもどんどん列ができ、長くなっていく。
「お願いします。」
「……えぇ。」
受験監督の先生とそんな会話をしたあと、誘導に沿うようにまた進んでいく。そんな時にある後ろ姿が気になった。なんだろう、どことなくソガとマーナに似てる気が……。
その姿はすぐに人混みの中へと消えた。……きっと気のせいね。だってソガとマーナは私よりも一個年上だもん。
よーし!次も全力出しちゃいますか!
頭の中の疑念はすぐに追い払ってみんなについて行くようにしながら外へと出た。
─────────学園の敷地
「それでは、実技試験を始めます。今から行うのは、」
知ってるよ!先生から聞いたもん。先生との模擬戦でしょ!はぁ、私の全力をぶつけたらどうなるのかなぁ。勝てちゃうのかな。どんな顔するんだろう、ワクワクしてきた!
「チーム対抗、脱出ゲームです。」
……へ?聞いてませんけど。
先生にだって卒業生の騎士さんにも聞いたのに。みんな模擬戦だって。でも、驚いているのは私だけじゃなかった。
「チーム戦?」
「ゲームってことは楽しいってことか!?」
「模擬戦だって父上が仰ってたぞ!」
特に貴族の子は情報を仕入れているみたいだから混乱している。平民だと思われる子はキョトンとしていたり、ゲームと聞いて目を輝かせている。
「はいはい、試験中ですよ。それではルールを説明します。」
【名前の由来コーナー】
ララ→音楽っぽい
ソガとマーナ→ソガマーナ→外国語で元気なという意味
(ララだけ適当ぽくてすみません)




