43.正体
「おい!さっさとこの縄を解け!」
近くによるなり怒鳴られる始末。はぁ、機嫌悪くなりそう。このくらいで表に出すほど私は子供じゃないから問題ないけど。
「あなたこそ、さっさと話しなさい。」
「なに?」
「私、こんなところで立ち止まってるわけにはいかないの。」
一向に話す様子が現れない。どうしましょうか。うーん、ちょっと乱暴だけど、仕方ないよね。
「はーい!オネストもフェリルもラーシアもみんな外で待っててねー!」
「できません!」「えっ、ちょっ。」「ひ、姫様?」
ま、想像通りの反応ってところかな。オネストが反対することは目に見えていたし、ふたりが混乱することも何となく想像してた。でも、ここで引き下がったりしないわ。
「ラーシアはこの人たちを連れていくと役所に通達して、その準備を。フェリルは荒れた土地の整備をお願い。オネストは仲間が潜んでいないか見てきて。」
本当にしてもらいたいことだし、どれも大事な役目よ。
「はい!わかりました!いってまいりまーす!」
「おい!ラーシア!」
「団長、そんな堅苦しいことばっか言ってると姫様がグレますよ。」
「なっ!?」
上機嫌な様子で返事をしたラーシアは捨て台詞のようなものを残して去っていった。いさめようとしたオネストもあっけに取られている。
「で、では、わたくしも行ってまいります。」
「えぇ、よろしくね。」
フェリルも後に続くようにして背を向ける。
「姫様。護衛はそばに置くも」
「オネスト、私、魔法使えるわ。強いわ。身を守れるわ。ってことでいってらっしゃーい!」
何を言い出すかおおよそわかっていたから、遮って強引に追い出した。
「だいじょーぶ!結界張っとくから!」
オネストはその言葉でやっと動き出した。
さてと、本番はこっからね。もうヘトヘトだけど。
「さぁ、これで話しやすくなったでしょう?」
「なんだお前!さっきからごちゃごちゃと……」
「口を慎みなさい。」
厳しく言い捨てる。きっとこういう言い方の方がいいんだ。私のためにも相手のためにも。優しく聞いたってきっと答えてくれたりはしない。
「あんたホントに誰なんだよ!ずっと偉そうに。……!?」
私はリーダーと思われるこの男に剣を突きつける。この剣はラーシアが片付ける前にこっそり取っておいたもの。流石のこれには男も息を飲む。
「誰かって?私はクレア、クレア・ジュア・ヘリオス。どう?さすがの盗賊でも知っているかしら?」
「クレア……ジュア・ヘリオス!?」
ずっと代表で話していた男を始めとし、聞き耳を立てていた仲間たちにもどよめきが起こった。
「おいおいマジかよ……。」
「俺ら、王族に手ぇ出したってことじゃねぇか?」
「さすがにヤバいだろ、役所とか話しでてたしな。」
「いや、みんな。本物かどうか確証がない。むやみに信じるな。」
その言葉にざわめきピタリとやんだ。
「そんなことないわよ、ほら。」
そうして一枚の厚紙……証明書を差し出す。これは王族や貴族の身分証明書のようなもの。生まれた時にお父様がじきじきに印を押すもので、これがないと地位を認められないも同然なの。紙も印も普通じゃ手に入らないものだから複製は不可。信用してもらうにはこれが一番!
それを見て顔をサッと青くした。それを視界に入れると再び話を切り出す。
「改めて、話してもらいましょうか。……いえ、話しなさい。」
「……俺らは確かにあなた様を襲いました。だけど、盗賊じゃない!信じてくれ!いや、ください!」
盗賊じゃ、ない?本当のことかしら。詳しく聞いてみる必要がありそうね。
─────────話を聞いてみると驚くことに通報しようとしていた役所と関係のある兵士さんだった。さすがに驚いたわ。盗賊が出と報告が入ってこの森道に調査しに来たのがこの人たち。滅多に人が通らない道なのに珍しく私の馬車が通っていたからマークしていたら護衛の一人が前に逃がした盗賊に似ていて、捕縛しようとしたところ、見事に返り討ちにあったってわけ。
「お恥ずかしいことに、近くで見てみると全く知らない顔でした。」
縄を解かれた状態でハハハ、とかわいた笑みを浮かべるリーダーの姿に少しだけほっとする。ただ、問題が解決したわけでわない。
「でも、どう収集する気かしら?私を襲っておいてなんの罰もなし?」
「……なんでも従います。どうぞ、処罰を。」
んー、そうね……。よし、これがピッタリだわ。
うなだれるように膝をついている兵士一同を見渡して結論を述べる。
「役所の兵たちに盗賊の討伐を命ずる。」
「……!?それでよいの、ですか?」
そんなわけないじゃないの。ここで条件追加よ。
「そんなに甘くないわ。期限は明日のこの時間までで、捉えた盗賊を役所に引き渡しておくこと。私が確認をしに行くからね。もしこれを破ったら顔を覚えている私が何をするか、わかるわね?」
王女の命令を破ったとして処罰?それともいっそ盗賊に仕立て上げる?そんな怖いことはしないけど、約束は守ってもらわないと困るからね。
─────────三十分後
「でも助かったわ、役所へ行ったラーシアが受験受付もしてくれておいて。今からだったら間に合わなかったわ。」
「そんなのお易い御用ですよー!姫様のためならばなんてことありません!」
胸を張って嬉しそうに言い張るラーシアは意外と周りを見てくれている。抜けているように見えて本当はすごく頼りになるし、なんと言っても一緒にいて退屈しない。話し始めると止まらなくなるし、いつの間にか友達口調になって話すラーシアはよくオネストに叱られている。
「……ん?」
馬車でずっと変わらぬ夜の森道を走っていた時、いきなり並木から抜けて外が見えた。なんだろう、ここ、見たことあるような。
「止めて!」
気がついたら叫んでいた。馬車の動きが止まってからは飛び降りるようにして外に出て、真っ直ぐ走る。
地面には若緑の草がさっそうと生えていて、その先は崖のようになっている。そのギリギリまで走り続ける。
騎士団の危険だと忠告する声なんて全く聞こえなくて、無我夢中に進んでピタリと止まる。
私の目線の先にはよく知る場所があった。でも、知らない景色。
「……綺麗。」
ソレール王国を一望できる場所があったんだ。夜でくらいけど、明かりが灯っていてたくさんの人が住んでいることが伺える。でもなんでだろう。すごく既視感がある。そして、綺麗で仕方がないのに、綺麗だと言うのに躊躇いがあった。こんなにも素敵な景色なのに。
「姫様……。」
いつの間にか駆けつけて後ろにいたオネストはなんとも言えない様子でこちらを伺っている。その視線を感じながら目があるものを求めてさまよう。
王宮は大きいからすぐ見つかった。でも、シモツケ宮を探すよりも見つけたいものがどうしてもあって、自然と目が下町を追う。
あった、騎士団のみんなと会った公園。ならここを左に行って……。
「……!?」
見つけた。私の家。かつての家。ララの、家。少し古びたドアに塗装された壁。今もここに住んでいるかはわからない。勝手に出て言って腹を立てているかもしれない。でも、プレゼントもくれてすごく、嬉しかった。
泣きそうになって目を伏せていると心配そうな声が聞こえてきた。
「姫様……?」「クレアちゃん?」
ほんと、オネストとフォーリャ、いいコンビだね。二人とも会話をしたこともないのに息ぴったり。
「ごめんね、行きましょう。」
きびすを返して馬車へと乗り込む。それからというもの、体感的にはあっという間だった。流れるように試験会場のある街について、宿を見つけて、騎士団の三人は約束通り遠くから見守ってくれている。
とりあえず、ご飯食べないと。今は何時だろう。多分夜中の三時ぐらいかな。試験まであと十二時間か。夜ご飯はあの兵士さんのおかげで食べ損ねたからもうお腹ぺこぺこ!
宿屋の部屋を出るとお会計のあるフロントに出る。
「あら、どうしたんだい?お嬢ちゃん。」
優しそうなおばあさんが顔にシワを作りながら声をかけてくれる。どうやらこの宿の女将さんのようね。
「その、お腹すいちゃって、買いに行こうかなって。」
「でも、夜はくらいよぉ。今出るのはやめておいた方がいい。お嬢ちゃんも学園の試験を受けるんだよねぇ。」
私は受験するって言ってない!なんで知ってるの?
驚いているのが顔に出ていたのか、
「今の時期に子供が泊まると言ったらほとんどが学園の受験生だからねぇ。」
「確かにそうですね。」
うぅ、朝までなんにも食べられないの?
「ほら、こっちへおいで。一緒に夕食を食べようか。わたしもねぇ、やっとひと段落ついたとこだからさぁ。」
なんか悪いことしちゃったけど、すごく助かるな。
「ありがとうございます!」
─────────次の日
「おばあさーん!行ってくるね!」
「いってらっしゃぁい。」
試験、思ったよりも遠いー!
ごめんなさい、ごめんなさい!次は絶対出ます!
もう書いてるので!明日投稿します!




