35.空の精霊様
「セルに来てもらいましょう。」
セル?セルって確か……。
「もしかして、空の精霊様であるセル様ってことは……。」
「そうよ。今回ばかりはセルの助けが必要だと思うのよ。」
精霊様が増えるのは場合によっては心強いとは思うんだけど、なぜセル様?ここにいるラント様やルーナ様。他のところにいる太陽の精霊様、大地の精霊であるアイナ様でもいいと思うのだけど。
ついでと言ってはなんだけど太陽の精霊様については全くと言ってもいいほど情報が足りない。
使う技も容姿も、名前さえも。ただ、太陽の精霊様は確かに存在し、五大精霊様の中でも頂点と言われるほどの強さを持っているということだけ。
「セルはな、歴代の空属性精霊の中でもかなり優秀でな、応用が効く技も使える。その中に対象の人物が自分に対する悪意等を抱いているか感じ取れる能力もある。」
す、すすすす、すごいー!それってかなりすごいじゃないですか!誰かと組む時に信用できるかを見極められるなんて。さすが精霊様。
私が目を輝かせているとそれに気がついたと思われるソレーユがクスリと笑った。
「ははっ、今度契約できるか聞いてみたらどうだ?」
「いやいや、無理よ、精霊様となんて。私の気も持たないわ。」
そう、私の方が無理よ。そんな度胸もないし。
「じゃ、俺が呼び出す。」
「了解ー。」
ラント様とソレーユが話しているのを横目にルーナ様へと話しかける。
「あの、ルーナ様。セル様はどんな方なのですか?」
「そうねぇ、フロルさんと同じ、かしら。」
「フロルさん……フロルお姉様のことっ!?あっ、ですか?」
クスリと微笑むと肩を掴んで教えてくれた。
「えぇ、クレアちゃんの記憶の中にいたお姉さんと似た性格よ。心が広くて、良いお兄さんって感じなの。きっとクレアちゃんと気が合うわよ。」
するとラント様とどこからかひょこっと現れたフォーリャが割って入ってきた。
「確かに仲良くなりそうだ。」
「あ、あたしよりも仲良くなっちゃだめだよ!確かにセル様は優しいけど。」
どうやらセル様はみんなから好かれているようね。お会いするのが楽しみだわ!
「すぐ来るそうだ。」
「どのくらい?どのくらい?どのくらいですか?」
通信を終わらせたラント様にフォーリャが興奮した様子で聞いている。私よりもフォーリャがなかよくなるんじゃない?心配なんだけど!
「そうだな……あと、十秒ぐらいじゃないか?」
えっ、ちょっ、待って、十秒?ここに来るんだよね?いくら精霊でもさすがにそれは無理なんじゃと思うん……
「やっほー。」
あ、ほんとに来た。わかるよ、この方でしょ。自己紹介されてないけどわかるよ。今来る方なんてこのセル様しかないもの。
「おっ、ソレーユ!久しぶり!」
「お久しぶりです、セル様。」
「なんか、よそよそしい……あぁ、そういうことか。」
セル様って見た目は青と白を基調として、声はものすごく透き通っている感じがするわ。
「こんにちは。君がクレアお姫様?」
「クレアです。以後お見知りおきを。」
「本当に王族とは思えないほど行儀いいね。
あっ、さっきの会話は気にしないでね。いつもソレーユは飛びついてくるからさ、さすがに人前ではしないみたいだけど。」
ソレーユが飛びつく……?想像してみる。
「うわー!セル様だー!セル様ー!」
「おお!ソレーユ元気いいね!」
ありえない。「きゃー!!」も棒読みだったのにするわけない。
私が笑いをこらえてプルプルしているとみんなが震えているのが見えた。ラント様に関しては大声で笑っているし、ルーナ様は「まぁまぁ!」なんて言ってにこにこしている。まるで我が子を見ている目だ。他のソルやヌーべは精霊様二人の声の後ろで小さな笑い声が聞こえる。
ソレーユの光も微かに揺れている。
しかし、違う意味で震えていたみたいね。
「……セル!様!」
「あはは、今呼び捨てにしようとしたでしょ?だめだよ。秩序を守って、ね?」
「はぁ、何も言えねぇ。」
ソレーユが負けてるなんて、なんか新鮮で面白いわ。
「あのあの!セル様!」
「ん?なあに?クレアお姫様。」
「ソレーユの弱点は何ですか!?」
「プッ、アハハハ!ソレーユの弱点?そうだね……」
セル様に笑われた直後、ソレーユの聞いた事のないほど大きな声が聞こえた。
「おい!いや、あの!変なこと吹き込まないでくださいね!クレア!なんてこと聞くんだ。」
「うんうん。」
軽く流したセル様は手招きをしてきた。そして私の耳元でそっとささやく。
「強いて言えばないこと、かな。」
「へ?」
「冗談だよ。誰にでも弱みはある。もちろん僕にもね。でも、簡単にわかってはつまらないよ。自分で探してごらん。目をこらせばきっと見つかるよ。」
わぁお、なんかおしゃれ。
「なんて言ったんですか!?」
「ふふふ、乙女のなーいしょ。」
「セルは乙女じゃないだろう!」
ソレーユ、セル様、ラント様の会話が微笑ましい。私は昔、家族であったとしてもこんな会話はできなかった。たとえ身内と言えど王族。それが決まりだった。
「クレア?どうした?」
「んーん!なんでもない!ただ、楽しいなって。」
「……そっか。」
この後、私はフォーリャと合流しフィーナのいると思われるシモツケ宮へと戻った。
案の定、怪物が消えたことからフィーナを除いたみんなが何事もないようにせっせと仕事に励んでいた。
結局フォーリャたちのことを話すのは見送りになってしまったからお説教コースだったけど、無傷な私を見て少し加減をしてくれたみたい。
次話から投稿頻度の変更を行います。
詳しいことは後ほど活動報告にて報告いたします。




