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31.鮮血な夢

モヤがかかっているみたい。霧が広がっている森林を歩いていく。いつの間にか小走りになっていて、


「あっ!またあの人だ。」


最近よく出てくる、声の綺麗な女の人。止まっていたら、どんどん影が小さくなっていくから追いかけていくと、霧から抜けた。


あの女の人の銀色の髪は、日に照らされて私のよりもすごく綺麗。そしてなんと言っても声が素敵。優しくてどことなくお母様と似ている気がするわ。


たどり着いた先はあの崖だった。私が卵みたいな銀色の物体を見つけたあの日に見た夢───お父様が助けを求めたあの崖。女の人は落ちそうなところ寸前で止まり、両腕を横に大きく広げて顔を斜め上に向けた。顔が見てみたい。ずっと後ろ姿ばかりだったもの。きっと綺麗な顔をしているはず。


でも、割り込めるような雰囲気ではなくて、私は女の人から視線を外すと、崖下へと移す。


「……っ!」


戦場だった。剣を交えている全身鎧の騎士が大勢いる。なんで気が付かなかったのか、理解できない。さっきまでは静かだったのに、戦場を目にとらえた瞬間、生々しい音が聞こえてくる。剣さばきの音、斬りつける音、悲鳴、苦痛の叫び声、そばで燃える火の手。


再び女の人へと目を移す。直感的にわかってしまった。この人は今、

──────笑っている。


途端に怖くなって後ずさりしたら後ろも崖のように地面が消えてなくなっていて、下へと落下した。


「きゃー!!」


はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。浮遊した感覚がまだ残っている。


「クレア姫様、お目覚めかしら?」


スープとか言ってた女神様みたいな人だ!


「……はい。」

「……なんだか良い気分ではないようね。」

「大丈夫?クレアちゃん。」


女の人は目尻をトントンと叩いて、悲しそうな顔で少し微笑む。フォーリャは心配そうな声色でこちらを見つめてくる。


「あ……。」


水がついた。私、泣いていたの?そんなに怖かったのかしら。いや、怖かったけど、そこまでだったのね。


「すみません、大丈夫です。」

「大丈夫じゃないだろ。なんだ?きゃー!って。」


心配してくれてる……のよね。ありがとう。でも、ソレーユの「きゃー!」の部分が棒読みすぎて、お腹を抱えながら笑ってしまいそうだわ。


「怖い夢は見ただけよ。本当に大丈夫。」

「そうか。」


あ、ラント様。どうなったんだろう。信じてくれたのかしら。


「すまない。人間からという偏見を、強く押し付けてしまったようだ。其方のおかげで今の人間というものを知れた。様々な奴がいるのだな。」


嬉しい。認めてくれたことだけじゃない。あんなに悪く言っていた人間と、向き合って理解しようとしてくれていることが、何より嬉しい。


「あの、ラント様。聞きそびれていたのですが、そちらの女性はどなたでしょうか?」

「あらやだ、自己紹介をしていなかったわね。恥ずかしい。わたくしはルーナ、月の精霊よ。」


ルーナ、と聞いただけで、既に理解していたかもしれない。でも、その一瞬違うかもという期待を、見事に裏切られた。


精霊の中でも序列が発生する。

一番神様に近いのが太陽の精霊様。ほぼ同格と言っても過言では無いほど、偉いのが月の精霊様。そのあとは同格で、大地、空、植物と続く。


「私は……」

「知っているわ。クレアよね。辛かったでしょう?これからは力になるから安心して。」


これほど心強い後ろ盾はあるのだろうか。下手したら、王様であるお父様よりも心強いわ。


「ところで疑問が沢山あるのですが。」


ほんとに沢山。


「答えられる範囲で、簡潔に答えるよ。」


ソレーユが応じてくれたため、遠慮なしで行こうと思う。


「なぜソレーユはラント様にタメ口を使っているの?」

「そ、それは……マブダチだからだ!かつてのマブダチ!

前は同格だったのに、ラント様が昇格したから今は違うけどさ、許してくれているから。」


一瞬ギクリとしていた気がするけれど、気のせいよね。


「魔法を使う前にルーナ様が言っていたスーとは誰のこと?」

「星の妖精で、月の精霊、ルーナ様の親族にあたる、ステラのことだ。」


なるほど。他の妖精の名前ね。


「では最後に、時間も気にしていたけれど、今は大丈夫なのかしら?」

「怪物にまだ動きは見られない。動きを見せる前にこちらが動けば大丈夫だろう。」


あー、なるほど。つまり、急がないとってことね。


「私も協力できることがあれば協力するわ。」

「あら、心強いわね。」


口元を隠しながらルーナ様が弾んだ声で反応する。私なんかで心強いと言ってもらえると、自信がつくわね。


「皆よく聞け。怪物は現在、本宮殿の近くで動きを止めている。これ以上近づくと危険だ。そのため我らから近づく。」


え?でも妖精は花畑から出られないんじゃ……?


「精霊様が実体化に必要な魔力を分け与えてくれれば、一時的に出ることもできるんだよ。莫大な魔力が必要だけどね。」


フォーリャがコソッと教えてくれた。そういうことができるのね。さすが精霊様ね。


──────数十分後


話はだいたいまとまった。あまり強くはない怪物のようなので、妖精たちの訓練も兼ねることとなった。私は十分強いと思うけど……精霊様の判断、恐るべし。


ここでの司令係はルーナ様とラント様、そしてソレーユとステラちゃん。


この人選には納得かな。ソレーユは精霊様並みのリーダーシップあるしね。スーちゃんことステラちゃんは、まだ見習いの身で、実践へは早いから見学らしい。


攻撃班はフォーリャ、 ルーチェちゃん、そして私。

フォーリャの使う葉っぱは柔らかくて、守りには向かないし、植物の効力で攻撃した方が優位。

ルーちゃんことルーチェちゃんは光の妖精だから言わずとも守りより攻撃ね。


私はフォーリャと契約したおかげで力がついているらしいから、全力でサポートするわ。どうやら私だけ名ばかりの攻撃班となりそうね。


周りの被害を最小限に抑えてくれる守備班は、ソルくんと、ヌーベ。

土の妖精のソルくんは壁を作ったり、防御に適している。

雲の妖精、ヌーべも衝撃を緩和できる……らしい。本物の雲のことは置いておいてね。


そして総勢五人で怪物の所へと向かった。

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