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28.いたの!?

「あの!こ、殺さないで。」


必死に探して出てきた言葉はそれだった。

しかし、冷たく打ち砕かれる。


「それはできない。すまないが油断はできぬからな。早急に済ませる。」


死がそこに。お父様に殴られたとき、蹴られたとき、怖かった。苦しかった。けど、死ぬとは思わなかった。これは本当に殺そうとしている、目。


「待て。話が噛み合っていない。」


この声は……。


「ソレーユ、何を言っているのだ。いつ動き出すかわからん。今のうちに……。」


ソレーユ?私はすくんでいた足を気合いでなんとかして立ち上がり、数歩横にずれてみる。すると、大きくて怖い男の人の後ろにはやはり誰もいない。でも確かに、声がした。あのソレーユの声。


一箇所だけポツン、とオレンジ色の光が小さく浮かび上がってきた。


「クレア、僕。ソレーユだ。」


ソレーユ、ソレーユだ!一気に安心感が湧いてきた。不安の色が薄れて、どんどん期待に満ち溢れていく。


「ソ、ソレーユぅ〜!助けて!私、殺されそうなの!フォーリゃもいなくなっちゃったし、頼れる人がいないのー!」

「はいはい、お疲れ様。」


子供をあやすみたいな言い方に、少し頭が冷えた。


「ホントだよ?そう話していたもの。」

「何を言っているのだ!?儂は、其方を殺そうなど、しておらぬぞ!?」


あの大きくて怖い人が、雷にでも打たれたように叫んだ。

へ?あんなハッキリ言っといて弁明?


「やっぱり。二人とも見事にすれ違ってるなぁ〜!」

「笑っている場合ではないぞ!だから言ったのだ!儂は反対だと!人間を、我らの会議場入れるなど、するべきではなかったのだ。実際に今、言いがかりをつけている。」


───だから人間は。というように不機嫌さを露わにする。


「まぁまぁ、そう怒るなって。ラント様。」


ラント……さま?ソレーユが敬称をつける相手って……。しかもラント……。


「クレア、フォーリャの親族で、植物の精霊様である、ラント様だ。」


……ん?情報過多です。えっと、フォーリャの親族が、植物の精霊様で、その精霊様がこの怖い人ってこと?


「そして、ラント様。こちらはフォーリャの恩人であり、契約主のクレアです。」


私とラント様、二人してポカン。無言の間が続く。


「其方、誠にフォーリャの恩人なのか?それに契約主だと?」

「貴方様こそ、フォーリャの親族で、精霊様なのですか?」


またしても気まずい無言の空間が広がる。


「まあ、証明してもらったらいいんじゃないか?証人が帰ってきたしな。」


証人?その途端、バンッ、と音がして、ここへ繋がる扉の開く音がする。


「たっだいまぁー!」


聞き覚えのある声。知ってる声。明るい声。落ち着く声。


「あれ?クレアちゃん?」

「フォーリャ!」

「目が覚めたんだ!ごめんね、乱暴な連れてき方しちゃって。力が上手く制御できなくて、眠らせちゃったの。」

「そうなのね。でも平気よ。」


普通に話してる。そう普通に。フォーリャと目線の高さを同じにしながら。


「え、えぇ〜!!」


どういうこと!?私とフォーリャ、身長同じくらいなんだけど!どういうことなの!?


「はいはい、落ち着け。」


ソレーユがさっきと同じようになだめようとする。

いやいや、フォーリャがおっきくなったの?私が縮んだの?


「ちゃんと説明すっから、今はこっち。」

「フォーリャよ、誠にこの人間が契約主なのか?」

「ラント様だ!はい、クレアちゃんは、私の契約主で……」

フォーリャの言葉を遮るようにしてラント様が声を響かせた。


「なら!恩人というのは?」

「え?あぁ、最初の日のことか!そうです!私とソレーユの恩人です!」

「フォーリャと……ソレーユの恩人だと!?」


聞いてないぞ!という風にソレーユがいると思われる光の方へ振り返る。


「あれ、言ってなかったか?」


ケロッとした様子であっさりと認めた。この二人のコンビも案外いいかも。


──────十分後


ラント様によるソレーユの責め立てが終わったため、仕切り直しとなった。


「まずは自己紹介をしよう。訂正があった場合は、俺から説明する。」


それは納得。お互いのことを知らなくてはいけないし、みんな信頼できるソレーユが訂正をすれば、信ぴょう性が高い。

これで嘘はつけなくなるね。


「俺とフォーリャは知ってるだろうから省く。まずはラント様から。」

「ラントだ。植物の精霊。」


シンプルなものだった。しかし、不足しているわけでもなく、最小限といったものだった。


「そこに関しては疑っていませんよ。ソレーユが言ったことですので。」

「……そうか。」

「ラント様は気性が荒いが、仲良くなれば悪いやつじゃないから安心しろ。」


そうなのね。少しほっとしたわ。


「私はクレアです。今は王宮の離れに住んでいます。」

「……王族ではないのならよい。」

「王族だ。」


すぐさまソレーユが返した。その途端、ラント様はわかりやすいほどに血相を変えた。


「王族だと!?よりによってなんで王族なんだ!?」


花畑にいた他の妖精はざわめいた。ラント様は血相を変えて怒り始めた。王族だからなんなのかしら。


「私はクレア・ジュア・ヘリオスです。ソレール王国の……第三王女です。一応。」

「ラント様、クレアは違う。というより、今の時代の王族は違うんだ。あの頃とは血筋も違う。」


気になることを沢山言われて、もう我慢できないわ!


「どういうことなのか説明して。」

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