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27.私、殺されるかも

「いいえ。」

「いいえ?」


不思議そうにこちらの様子を伺ってくる。


「ここの花畑は立ち入り禁止だからね。門には鍵がかかってるし、さびてて動きすらしないよ。」


前にロープやら何やら持ってきて、ちゃっかり色々試したからね。その結果、たまたま見つけた、この綺麗すぎるほど丸い穴から、通って行くことにしたけど。


「ここよ。」

「ここ?」


はたから見たら、壁に向かって入口と言っている、ただの変な人。知っている人から見たらただ、当たり前のことを言っている人。……どっちもイマイチね。まぁ、いいわ。

軽くぽんっ、と欠けているはずの部分を押すと、予想通り綺麗に道が開いた。


「え!うそ!すごい!クレアちゃん、意外と力、強いんだね!けっこー意外!」

「そこまでじゃないのよ。元々開けられるように設置してあるの。いつもここから来てたんだよ?」

「えぇっ!そうなの!?知らなかったんだけど!」

「そうよね、初めて言ったもの。他に知っている人はいないはずだわ。」

「やった!ていうことはあたしが一番!?」

「そういう事になるわね。」


一喜一憂している子って、可愛いわね。


花畑に入るなり、いつもとは変わらない鮮やかな花が広がっていた。でも、いつもは聞こえるみんなの声が聞こえない。

大丈夫、みんな強いもの。平気よ。


フォーリャは、私の心配とは裏腹にその辺でニコニコしたり、ガッツポーズをしている。でも、いきなり時が止まったようにピタッ、と止まると辺りを見渡したり、真剣な顔つきになった。


「フォーリャ?」

「……。」


これ以上話しかけても無駄な気がしたから、とりあえず待ってみる。そして三十秒後ぐらい経った頃、いきなりきた。


「クレアちゃんっ!」

「うわぁおう!なになになになに!?……あ、フォーリャ。どうしたの?」


いきなり近くで大声を出されたもんだから、ビクッとしてありえないほど飛び上がった。一瞬冷静さを失ってしまったけど、すぐに取り戻す。


「今ね、ソレーユから通信がきたんだけど、みんな無事みたい。いつも会議に使ってる場所で、大地の精霊様と一緒に、緊急会議をしてんだって。」

「はぁ、よかった。私達は、そこへ行ってもいいの?」


とりあえず一安心。そして、聞いてみる。できるなら私もそこへ行って力になりたい。


「もちろんだよ!だって私の契約主だもん!」


満面の笑みの、澄んだ眼でこちらを見てくる、フォーリャは一見ただ明るいだけに見える。けど、焦っているように感じる。これは私の勘違い?


「フォーリャ、大丈夫だろうけど、みんなが心配だし、早く行こうか。」

「うん!」


───────しばらくして、なかなかの距離を歩いた。そして私の目の前には、無造作に生える、頭よりも高い若緑の草。もしかしてここ通るの?


忘れてはいけない。ここは、元々立ち入り禁止区域である、南門近くの花畑。そんな場所を綺麗に保とうと整備する人はいないし、当然草も伸び放題。花は、妖精たちが何とか世話をしているみたいだけど、既に手をつけられない状態だったこの草はそのまま放置らしい。


「ここなんだけど、その前に……。」


フォーリャが振り返って、私に視線を飛ばすと、その小さな手が近づいてくる。


「えっ、ちょっ!?」


そのまま私の意識は途絶えた。


──────???


ん?なにやら遠くの方で、知らない声が聞こえる。私、どうしてたんだっけ?


重たいまぶたをゆっくりと開くと、見慣れぬ低い天井だった。立って、手を伸ばせば、軽々と天井に触れられる、そんな近さ。私は、ほとんどを天井の高く、広い王宮暮らして来たから新鮮だわ。どうやらここは小部屋みたいね。


その後に、私へと届いたのは、懐かしいような暖かい香り、ほんのりと漂う食欲をそそるような、優しい匂い。

相変わらず話し声が聞こえる中、身を起こして、ドアの隙間から微かに覗く、小さな光を目指してノブに手をかける。


話し合いのような声が聞こえていた。しかし、そこにはただ一人、大きな人が立っているだけだった。あー、また妖精?お取り込み中みたいね。扉で身を縮ませながら待っていると、今度はハッキリと会話が聞こえてきた。


「それなら、例のお姫さんには死んでもらうしかないみたいだな。……異論のある者は?」


異論をあげる者は誰一人としていない。

鼓動が速くなって過呼吸のような状態へと繋がる。私、どうなるの?殺されちゃうの?私の知っている妖精じゃない?今更この人たちのもとへ出ていけないし、だからといって出口も分からない。


そんな時、別の部屋らしきところから女性が一人入ってきた。一度、世界が止まったように見えるほど、美しい人。女神様がいたらこんなお姿なんだろうなんて考えて、この時だけ恐怖心が消え去った。


「まぁ、もう行ってしまうの?せっかくスープができたのに、冷めてしまうわ……。」

「だが、時間が無い。いち早く仕留めねばならぬ。」

「そんなに焦らなくても大丈夫よ。少し前にスーからの連絡でまた、動きが止まったみたいよ。それに、例のかわいいお姫様も、お目覚めのようだしね。」


あの綺麗な人がこちらに視線を向けて、にっこりと微笑んだ瞬間、その場にいる人の視線が、一斉に睨みつけてきた気がした。姿は見えないけど感じる視線が痛くて、怖くて、近づいてくる男の人が恐ろしくて、たちまち足がすくむ。


力が入らない。どうしよう。どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう!

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