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23.フォーリャ、熱弁

「あたしと契約したの……後悔してる?」

「私はフォーリャと契約できて嬉しかったよ。後悔なんてしてないわ。」


フォーリャをそっと手のひらに乗せて、にこっと笑ってみせた。


「……そっか。」


ただそっけなく頷いたようにも見えたけど、嬉しさがこもっているように感じた。


「じゃあ行こうか。」


フォーリャが声をかけてくれた。準備ができたようなので、そろそろ戻ろうと思う。時間は……ギリギリセーフっぽい。これならフィーナに怒られずにすみそう。


「うん。ヌーベ君、ここまでありがと。またね。」

「……ああ。」


相変わらずぶっきらぼうな返事だったけど、初めよりは親しくなれた気がする。……多分。


「ここ!ここに乗って!端っこに乗ると落ちちゃうから、気をつけてね!」


空飛ぶ葉っぱ。いつだか聞いた空飛ぶ絨毯に、少し似てる気がする。


「ヌーべ、でいい。」


ヌーべが私の帰り際、そう言ってくれた。相変わらずムスっとしてるけど、嬉しかった。


「うん、また今度ね、ヌーべ。」


振り向いていた頭を再び前に戻し、真ん中に乗っかるとゆっくりと降下していく。


「よし!しゅっぱーつ!」


フォーリャが小さな右腕を真っ直ぐ上に伸ばして明るい声で言った。


地面までおよそ十秒。スピードが上がることも、下がることもなく、ただただゆっくりと着地した。


「フォーリャもありがとう。私はすぐそこだからもう帰っていいよ。」


そう言い残してシモツケ宮へ入ろうと思ったら花畑の時のように体が動かなくなった。


「えっと……フォーリャだよね?これ。」


ソレーユに怒られてたし、今できそうな人はフォーリャしかいないし。


「何を言ってるの?」


フォーリャが見つめてくる。私になにかしたよねって話だけど。


「離してってこと。」


簡潔に伝えるとフォーリャは可愛らしくほっぺをふくらませた。


「そっちじゃなくて!なんで一人で帰ろうとしてるの!?」


意味わかんない!て感じに高い声で叫んでるけど、こっちが意味わかんない。どういうことなの?


「ごめんね。どういうこと?」

「これでもあたしはクレアちゃんの契約妖精なの!契約したら普通はずっと一緒にいるの!なんで置いてこうとするの!」


涙目で訴えかけてくる。可愛いけど……いたたまれない気持ちになる。本当に悲しいそうな眼で見つめてきて、罪悪感も覚えるくらい。


「フォーリャ。泣かないで。知らなかっただけよ。ごめんなさい。一緒に行こ、ね?」

「……うん。」


消え入りそうな声で頷いてくれた。

普通ならば、フォーリャたち妖精は見えないらしいから、大丈夫なはず。王族などのマナが多い人には見えることもあるんだって。


少ないと言われた私があと少しして見えるしいから、お父様達の近くには言ったらダメね。

行く気なんてさらさらないけど、念には念を。これからはいつもよりも警戒しなければ。


「……フィーナ、戻ったわよ。」

「お帰りなさいませ、クレア様。朝食になさいますか?」


側仕えの支給服をふわりとさせながら振り返るフィーナが尋ねてきた。


「ええ、早く食べたいわ。でも先に髪を結ってくるわね。」


私の銀色の髪はまだだらんと下ろしたまま。軽く、くしを通す暇もなかったからストレートな髪の私でも見た目が悪いわ。


……いやいや!危うく見逃すところだった。私は自室に向かっていた足を止めてバッと振り返る。


「フィーナはや、す、み!分かった?休養よ、休養!」


いつも通りの会話だったおかげでスルーしそうだったわね。それだけ私の覚悟が甘いってことだわ。しっかりしないと。


少し前まではフィーナに髪を結ってもらっていたけど、最近は一人でもできるようになった。我ながら手先は器用な方でね。


─────自室


「えっと……ここをこっちに持ってきて、結んで。」


サイドのほんの一部をそれなりに高い位置から編み込みをしていく。耳元の高さまできたら細い髪ゴムで結んで、青いバラの飾りを髪の根元近くにつければ完成。


大変だけど、可愛いから気にっている髪型なの。


「クレアちゃん、とーってもかわい〜!」


鏡台にちょこんと座って、くしに付いた髪の毛を取ってくれていたフォーリャが、こちらを見るなり瞳を輝かせた。


「ありがとう。」


私的にはそれで終わりのつもりだった。けど、フォーリャは違ったみたい。


「ほんとにほんと!月の精霊様であるルーナ様みたい!

キラキラ光る銀髪は、伝説の白銀のオオカミの毛なみのようでかっこいいし、でもでも!月みたいに輝いていて、可愛いし、美しいし……。

その結び方もすごい!見ててもどうやったか分からなかったもん!

青いバラの飾りもきれーだね。髪の色ともあってるし、ドレスについてるリボンと同じだから統一感もあるね!しかも……(続く)」


フォーリャの口は止まらなかった。そのあともしばらく話し続けて、はじめのうちは照れながら静かに聞いていたけど、恥ずかしさがピークに達したこともあって、フォーリャが息切らし、私がとめたところで終わりとなった。


「青いバラにはね、夢が叶うとか奇跡とか、神様の祝福っていう素敵な意味があるの。私、青いバラが大好きなんだ。」

「素敵な花だね。あたしもだーいすき!」


満面の笑みで答えるフォーリャを微笑ましく思いながら、一緒に朝食をとりに向かった。

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