22.けんか
「……続きはまた今度な。」
どうして?この流れなら今続けて話しちゃえばいいじゃん!
「別に今でいいのよ?」
なぜそう言ったのかわからず、思わず疑問形で返す。
「……あのなぁ、クレアは風邪気味だろ。契約で魔力もごっそり使ったし、これ以上無理はしない方がいい。それにほら、あれだろ。シモツケ宮って。」
あっ!本来の目的、すっかり薄れてた……。いつの間にか、身体はポカポカしてるからか、話に夢中になりすぎていたみたい。いつの間にかシモツケ宮も見えるほど近くに迫っていた。
「身体が温かい。」
無意識のうちに呟くように声に出すと、
「あたしと契約したからです!」
ひょこっと私の顔をのぞきこんでニコッとした。
私がフォーリャと契約したから?
「どういうこと?」
「ヌーベも言ってたけど、契約するにはたくさんの魔力が必要です。だから、魔力不足になります。
元の量が少なければ少ないほど不足する、魔力を元の量に戻そうと活発に動き回るから、身体が熱を持つ…です。今はその状態だね…です。」
という事らしい。つまり、元々身体が冷えていなかったら……。熱が出て、フィーナに怒られて、短期間外出禁止になるところだった。危ない危ない。間一髪ってとこかな。
「……俺は帰る。」
へ?待ってよ!こんなとこからじゃ降りれない!飛ぶなんて無理だよ!王宮の高さよりもあるのに。高いところにいるというのに慣れてきたのに、再び恐怖心が戻ってきて少し鳥肌がたつ。
「ヌーベ君?せっかくだから下まで送ってくれない?」
「……バカかよ。見られるリスクを考慮してだ。フォーリャならここから降りるくらい簡単だろ。」
フォーリャ、簡単?って、うぇ!?空飛べるの?初耳なんだけど!?でも、妖精なら当たり前かも?
「あー!また言った!主様をバカって言わないで!」
むー!とした表情のフォーリャを見るのが初見だからか、新鮮で可愛い。
「ねぇフォーリャ、今まで通りクレアって呼んで。無理して堅苦しく話す必要ないわ。」
正直間違えそうになっておろおろしているフォーリャを見ると、可愛くて面白いのと同時にハラハラする。そう、フレンドリーにいきたい。
「クレア……ちゃんでいいの?」
こくこくと何度も頷く。そうだよ。気軽にいこうよ!
「フォーリャって空飛べるの?」
「……うん!葉っぱに乗ってね、風をこっちに持ってきて、自由に飛べるの!」
すごいでしょ!すごいでしょ!っていう風に手を大きく広げて説明してくれるけど、正直いって、さっぱりだった。
「え、えっと……葉っぱに乗るまでは、何とかわかるかも?だけど、風を持ってくるって?……ごめん、ダメだ。理解が追いつかない……。」
「ク、クレアちゃん!?」
頭がこんがらがって軽く倒れ込んでしまう。
フォーリャが詳しく説明してくれても分かるかな?
「……それだけじゃ分からない。説明してやれよ。」
「えー!あたし、そんなに説明下手だった!?」
「……知らない人から聞いたらさっぱり。」
驚いていた顔がショックに変わるフォーリャと、ずっと平然としている様子が伝わってくるヌーベ君の声。
うん、この二人のコンビ……めっちゃいい!相性抜群。
でもね、ソレーユも忘れちゃいけないんだよ。
想像してごらん。あの明るくてそそっかしいフォーリャと、少し偉そうだけど、謎の安心感があるソレーユ。この二人も最高なんだけど!
ヌーべ君はお兄ちゃんで、ソレーユはお父さんって感じかな!結構的確なんじゃない?
まだ後ろでぎゃーぎゃー言い合っている声が聞こえるので、私が仲裁に入ろうと思う。
「二人とも、落ち着こ……ね?」
私はあっけなく散った。もっと、「二人ともそのへんにしよ?」って優雅に、でもやめざるをえないオーラを出して、止めようと思ったのに見事失敗。
「もー!そこまで言わなくてもいいでしょ!少しは慰めてくれてもいいじゃん!」
「……そんなんで落ち込むことが理解できない。」
「いいよね、ヌーベは。何をされても鋼だもんね。」
「……今なんて?」
ほんのすこーしだけ聞いていたい気持ちもあったけど、さすがにヒートアップしすぎだと思う。空気がおかしくなってきた。特にヌーベ君。放っておくとそのうち大変なことになりそうだって肌で感じる。
大きく息を吸うと、
「一旦ストーップ!」
思いっきり声を張り上げた。
叫びに近かったフォーリャの声と、冷たく怒りがにじみ出ていたヌーベ君の声がピタリとやんだ。
「まずフォーリャ!説明は分かりにくかったけど、ゆっくり教えてくれればいいから!ヌーべ君の反発にも、のらないこと。笑って無視できないとダメだよ!
そしてヌーベ君!そんな言い方したらフォーリャが怒るくらい私にもわかるわ。それは私が対応するから相手のことも考えて発言すること!」
真面目な顔で聞いていたフォーリャの眼差しにも負けない。かまわずに注意し続けた。
「まったく……長い付き合いなんでしょ。ちゃんとお互いにわかってあげないと。」
私がため息混じりに呟いた途端、フォーリャの顔が固まった。ヌーべ君の声も相変わらず聞こえない。
「……長い付き合いじゃない。」
……ん?二人とも仲良さそうにしてたし、喧嘩するほど仲がいいっていうじゃん。まさか、そんなわけないよね?
「ほんとなの?」
フォーリャは固まった顔のまま頷いた。
「あたしはね、半年前に来たばっかりなの。
妖精はね、それぞれの属性の精霊様のもとで、経験を積むんだけど、私は半年前に終わった新米の妖精だから、ここに来たのもそのあたり。……今はソレーユや花畑の妖精たちから、学ばせてもらっているの。」
正直言ってびっくり。私にとってはたくさんのことを知っているフォーリャは新人のようには見えないもの。
「あたしと契約したの……後悔してる?」




