17.いざ!メイド体験!
──────翌日
「よし!フィーナ、教えてちょうだい!」
メイドの給仕服をひらひらさせながら尋ねた。
えへへ、余っている小さい子用のメイド服が、残っていてよかったわ。側仕えの仕事となれば、さすがにドレスではできないからね。私は書類仕事とかできないから、実質メイドの仕事だけれど。
ササッと昨日のことをおさらいするのなら、えっとね……。
厨房の棚が落ちてくるっていうとんでもないことが起きて、フィーナが怪我をしちゃったから、私がフィーナの代わりにお仕事をすることになったっていうところかな。
「はい……。クレア様、十分気をつけてくださいね?ご無理はなさらないよう。」
心配するフィーナとは裏腹に私はやる気でみなぎっている。
人生初の体験だもん!楽しみじゃない方がおかしいよ!
「……分かりました。最初は朝食の皿洗いからしましょう。」
ため息をつきながら軽く微笑んだフィーナは、厨房へ連れていってくれた。
──────厨房
「さぁ!まずは何するのかしら?」
早く、早く!ワクワクして仕方ない!
「まずはそちらに置いてある食器を拭きます。タオルは左の棚の一番上……あ、そう、それです。その緑色の。」
私が上の段を片っ端から指を指すと、鮮やかな緑色のタオルの前でフィーナがとめた。
「そのタオルで丁寧に拭いたら棚に置きます。
食器の並べ方は、棚の上段から、パンをのせるような薄いお皿とランチプレート。その下にスープ皿や深めのお皿。さらにその下にはコップ類です。そして……(省略)」
う……、思ったよりも細かい。その後も説明が続いたけど頭の中が喧嘩して大変だった。
──────十分後
「クレア様、違います。そのまな板は、三番目の壁のフックに引っ掛けてください。あぁ、その箸はクレア様用なので、別の棚に。」
さっきからずっと言われっぱなし。こんなことをずっと続けてきたフィーナ、スゴすぎ。
三十分ほどして何とか終了した。結局フィーナの言われるままに動いていただけだったけど。
──────シモツケ宮の庭
「フィーナ!次は?」
今度こそは!た、たまたまお皿洗いと相性が悪かっただけだもん。
「次は宮内のお掃除をしましょうか。」
シモツケ宮の中に入ると、一足先に入っていたフィーナが雑巾を持って立っていた。
「雑巾の入っている場所は分かりますよね。掃き掃除は終わっているので、拭き掃除だけやりましょう。クレア様は、棚や端の方の拭き掃除をお願いします。」
よし!やるよ!
──────三十分後
重大事実が判明した。私、私……拭き掃除の才能、あるかも!!ホントにホント!
フィーナに直されるどころか褒められたし、すごい綺麗になってるもん!
「フィーナ、私、拭き掃除職人になろうかしら?」
意外と真面目に。大人になって下町に行ったら稼ぎになりそうじゃない?家事だいこう?って言うんだったかな。
「あはは、頑張ってください。」
フィーナはいたずらっぽく、でもすっごく可愛く笑った。
──────夜、シモツケ宮
私は寝室のベットの上にいた。最近のマイブームであるアロマの匂いを楽しみながら、フィーナの読み聞かせを聞く。私の一番好きなお話。
小人くんが巨人と出会って、違う世界の二人なのに仲良くなって、楽しい日々を送る話。前はただ面白い話だなって思っていたけれど、今はララやソガにマーナのことを思い出して似てるなって。
そんなことを感じていると自然と目を閉じ、眠りへと落ちていった。
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久しぶりに夢を見た。私は広い草原の高台に立っていて、あの時の……マシーナが居なくなった日の、綺麗な声の女の子が出てきた。
「あなたはだあれ?」
私はそう聞いた。前は歌を聴いているだけで、特に話さなかったけど、もっと女の子のことが知りたいと思ったから。
「私は……」
女の子が続きを話そうとした瞬間。風が吹いて、一瞬の間に消えた。どこにも姿が見当たらず、辺りを見渡しながらひたすら走り続けた。
やがて、一番端まで来て下を見下ろす。すると、下には見覚えのある人の姿があり、心臓がドクンと跳ねる音が聞こえた。
「お父様……。」
お父様が王冠を抱えて立っていた。だけど服はボロボロで怪我もしているみたい。
「おぉ!クレア!いいところに。助けてくれ、追われてるんだ。」
なんて?私には散々怪我させて、ずっと会いにすら来なかったのに助けを求めるの?
「……。」
分からない。助けるべき?こんな時どうすれば……。フィーナなら。マシーナやララなら。フロルお姉様だったら……。どうするの?心臓がバクバクなって、なぜだか身体が痛い。
うぅ、あの女の子を探さないといけないのに。見つければ、何かを得られる気がした。
「うっ……!」
あまりの痛みに倒れ込んでしまった。私……死ぬのかな?夢の中で。すると突然、時が止まったように音が消えた。
心臓のうるさい音も、風で草が擦れる音も、お父様の叫び声も。全てが消えて、シーンとした空間が広がり続ける。
そして体の浮遊感を覚えた瞬間、瞬き一回の間に目の前は天井へと変わっていた。
「何……これ?」
私は何かを握っていた。一体これは……?




