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14.重なる泣く子

あれから一週間が過ぎた。変わったことといえば、帰るのが少し早くなったぐらい。相変わらず毎日花畑へ通っているし、フィーナともいつも通り。


─────南門の花畑


「やっぱり綺麗な花いっぱいね。」


念の為もう一度あたりを見渡す。誰もいないわね。よし!


「はぁ〜、最っ高!」


ここは正直言って、誰もいないからどうしても気が緩みがちなのよね。ずっと王宮で暮らしている王女だって、ずっと上品な言葉は疲れるもん。別にいたくて品格をまとっているわけでもないし。私は花がないところを見つけて、ゴロンと寝そべる。


気持ちいいけど流石に寒いな。もっと厚着して来ればよかった。今は十二月の半ば頃。暖かい気候のソレール王国でもこの時期になるとさすがに肌寒い。


少し寒気がした。これ、風邪ひきそう。まずい、と思った時だった。小さな声が聞こえた気がした。悲しそうな、なにか求めているような、そんな声が。声が聞こえなくなったなと思ったら今度は、ハッキリと聞こえた。


「助けてぇ〜!」


空耳にしてはハッキリとしすぎている。しかも助けてって……それにもし、誰かに見られていたらどうしよう!?色々とまずい!


「だ、誰かいるの?」


恐る恐る、声の主に問いかける。すると案の定、先程と同じ声が聞こえた。


「え、え?誰?」


逆に聞き返されたけど……。どうすればいいの?もしもフィーナだったら……。どうするのかな。


「私、何か助けにならないかしら?困っているのでしょう?」


姿が見えない。声だけがするから、いるのかいないのか、どんな反応をしているのかすら分からない。でも、困っている人がいるのなら助けたい。前に困っていた私だからこそわかる。


「……お願い!ソレーユを助けて!」


ソレーユ?初めて聞く名前に疑問を浮かべる。声の主のことかしら?


「ソレーユ?誰のこと?私は何をすればいいの?」

「ソレーユはあたしの仲間なの!ぐすっ…具合が悪くなって…倒れちゃって、私どうすれば……。」


そう……仲間なのね。泣きながら必死に答えてくれる声の主に何となく私を重ねてしまう。


**********


三歳の頃、ちょうどここ───花畑を散歩をしていたら、同い年くらいの男の子に会ったことがある。緊張しながらも話しかけてみたら、すぐに仲良くなってとっても楽しかったの。


それから何日かして、いつもみたいに話していたらその子が急に倒れた。心臓がひねり潰されたみたいな感覚だったのを覚えてる。何が起きたのか分からないで数秒停止。

自分に何ができるのかパニックになりながらも考えて大声で助けを呼んだ。


側仕えも護衛の騎士も少し遠くに待機しておくように言っていたからそばに誰もいなくて、人生で一番と言っていいほどに叫んだ。


「助けてぇ!誰かぁ。誰…いな…の?」


怖い。喉が痛い。頬を伝って流れていく涙がドレスに染みて、足も冷たい。孤独。


色んな感情が入り交じって、気が付いた時には側仕えの腕に抱かれていた。その時には顔は真っ青でそれはもう大変な状況だったという。幼かった私でも他のことに比べれば記憶がはっきりとしている。それほど印象的なできごとだった。


あの子は元々体が悪かったみたいで、もう大丈夫という風に言われた。けれど気になって、会いたくて、もう一度初めて会った所に行ってみたけど、二度と姿を現さなかった。


ちなみに私は喉を痛め、五日ほど声が出なくなっちゃったわ。あの子は結局、どこへ行ったんだろう。今もどこかで暮らしているのだろうか。


そういえば、あの日も冬で寒かったな。

だけど、そんなこともあの日感じた怖さと孤独は一生私に刻まれる光とも、影ともなる大切な身体の一部。


──────現在


似ている。この声の子と昔の私。

やっぱり助けたい、必ず。この子を光へと導いてあげたい。似たような経験がある私だからこそできることがきっとある。


「どうすればそのソレーユって子を助けられるの?」


「あっためるの。体を暖かくすれば…良くなるはず。でもここはどこも寒いから……暖かくする道具…壊れちゃったし、ルーチェも今いないし……。」


道具?ルーチェ?……それよりも今は暖かいところ…暖かいところ…あそこしかない。よし!


「大丈夫よ、私がその子を助けるから!安心して。」


顔が光を浴びたようにパァと明るくなった、気がした。見えないけれど、そんな気がした。


「私についてきて!」


──────シモツケ宮


「ありがとう!本当に、ありがとう!」


何回も同じ言葉を繰り返される。さっきからもう何十回聞いたよ。まぁ、嬉しいけど……。


「大丈夫よ。……ねぇ、本当にここにいるの?」


相変わらず姿が見えない。声だけしているけれど。


「ちゃんとここにいるよ。暖炉の近くの壁に。」


へ?そこの壁?やっぱり見えない。不思議で考えていると、どうやら行動に出ていたみたいで、笑いを含んだ声が聞こえた。


「今は姿を隠しているからね。いつか見える日が来るよ。」


うーん?そうかなぁ?

今見えないものが後になって見えるって?そんなことあるのかな。


あ、そういえば緊急だったから、聞かないといけないことが山ほどある。まずは、


「あなた、お名前は?」

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