11.小さくて大きいプレゼントたち
「私は亡き妹の願いを叶えに来ました。」
亡き妹?私がそれになんの関係があるのかな?
「願いとは?」
「妹は女性の中で珍しい軍官でした。
普通はありえないのですが、実力を買われ、特例で認められていたんです。
しかし、ある時に大怪我をしました。帰る途中に倒れてしまったところを、助けて頂いたのが、お忍び中の第三王女様だったそうです。
それから王女様を慕い、プレゼントを送っていたりもしていました。さすがに面会はできなかったようですので。
……ですが、敵国の攻撃で二か月前に亡くなりました。」
あぁ、そう言えば。前に倒れている女の人を助けたっけ。ぼんやりとだけど覚えてる。さすがに今よりも小さい頃だからはっきりでは無いけれど。……まさか亡くなっていたんなんて。
「あの方でしたか。あわてんぼうでしたが明るくていい子でした。もう一度会いたいと思っていたのですけれど、残念です。」
フィーナが目を見開いている。そりゃそうだよね。私がその王女だって知らないから、なんで知ってるの?ってなるわよね。
「フィーナ。改めて私はクレアよ。クレア・ジュア・ヘリオス。シモツケ宮に住む第三王女。」
「……え?あ……。」
フリーズ。何秒か石のように固まっていたがいきなり動いてあたふたとしだした。
「も、申し訳ございません!王女様だと知らずに馴れ馴れしい真似を!」
先程の落ち着いた感じとは、別人のように慌てだした。確かに妹さんと似ているかも。
「いいのよ、面を上げて。話をとめちゃったわね。続きをお願い。」
おずおずと頷くと、再び話し始めた。先ほどとは打って変わって緊張した様子でね。
「私は妹の最期に立ち会った時、あるお願いされたんです。
……恩人である姫様が困っていらっしゃるから助けて欲しいと。
妹によると王女様が下町にいるのを見かけたそうです。私は妹の見間違えだと思いましたが確信しているようでして。
そして二ヶ月ほど前に、王宮騎士の方々を見かけたので、もしかしたらと思いました。
この目で貴女様のお姿を見ることは叶いませんでしたが、情報を手に入れることはできました。今はシモツケ宮で過ごしていると聞き、メイドの資格をとって、お目にかかりに参った所存です。」
わざわざそのために……。妹の願いを叶えるためだとしても、こんなに努力して、私に会いに来たなんて……。
「大変だったわよね。メイドの資格は簡単に取れるものではないわ。そして、一ついいかしら?私はこの通り、離れといっても王宮に戻ったし、困っていることもないわ。あなたはこれからどうするの?」
ここからが本題になる。フィーナの目的はなくなったわけだよね。でも、メイドの資格まで取ったのに「困ってないから大丈夫、さようなら」というわけにもいかないし……。
「その事なのですが、私を側仕えとしてお使いください。」
「側仕え?メイドではなくて?」
メイドと側仕えは少し違う。
メイドは家事全般みたいな雑用をする感じに対して、側仕えは書類作業とかもする。簡単に言うとあらゆる面でのサポートをする人のことかな。
「メイドの仕事はもちろん、側仕えの仕事もしたいと考えています。」
それって大変なんじゃない?メイドの仕事だけでも大変なのに。前までいた専属の使用人は、お父様によって全員担当から外れちゃったし。
いやでも新しく雇って分担すれば……。いやいや、でも……。私はなんと言ったらいいか分からず無言のままでいる。
「……とても大変だよ。」
絞り込んで出した答えはこの十文字足らずの言葉だった。もっと聞きたいことも沢山あるのにできない。頭の中がぐちゃぐちゃで軽いパニック状態。
「現状、王宮は人手不足です。使用人を探すのはとても大変ですし、時間もかかります。
騎士団の方々がお支えするのにも限度がありますし、それならば私が全てお引き受けいたします。」
待って待って待って待って。今、人手不足なの?私、最近まで専属の使用人が人手不足とは思えないほどいたのだけど?
「でも、やっぱり負担が大きすぎる。任せきれないわ。」
「平気です。必要とあらばステルク騎士団長様にお願いをして体力づくりの訓練をいたします。」
そこまで言うとは、相当な覚悟みたい。
「わかったわ。騎士団長さんには私から話しておくからそうして頂戴。辛かったらすぐに辞めていいからね。これからよろしく、フィーナ。」
「はい……はい!クレア王女様。」
───それから更に四ヶ月がたった。季節は十二月となり、すっかり冷え込んでいる。二ヶ月前にフィーナも帰ってきて、結構慣れてきたかな。
そして昨日、十二月二十一日は五回目の誕生日祝いをしてもらった。騎士団のみんなとフィーナのささやかなものだったけど、とっても楽しかったわ。
今頃、マシーナは何をしているのかな。ララとソガとマーナは元気かな?また会えるといいな。そんな時に部屋の端の方に、小さな箱が三つ置いてあるのが見えた。
「プレゼントの残りかな?」
昨日は騎士団のみんなとフィーナからもらったから、そこはこの量だった。だから気づかなかったのかも。
「うっふふー、なーんだーろなー!」
プレゼント大好き!全部宝物だからね。
丁寧に、でも素早く開けてみると……本?なんの本だろう?
中を開いてみると花の辞典だった。花の名前と花言葉が書かれている物。
涙が溢れてきた。誰からだなんて書かれていない。でもわかる。これはララからだ。マシーナからだったら訪ねてきているはずだし、他に花についてのプレゼントを送ってくれるような人はいない。となると、他のふたつは、
「ソガとマーナからだぁ……。」
ソガからは小さな花瓶。マーナからは四葉のクローバー。
そうだ!クローバーの花言葉載ってるかな?
ララから貰った本を、パラパラめくっていくと、あるページで手を止める。
「あった……。幸運、約束、希望……。」
今の私、私たちにピッタリだね。
プレゼントに夢中になっていた私は、いつの間にか帰ってきていたフィーナが気を使って出ていってくれたことに、気が付かなかった。




