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終話

挿絵(By みてみん)


竜童は雨が嫌いだ。


自分の本名でもあるし

何よりも

何故か寂しくなる。


その夜

雨音で目を覚ました後に

またすぐにに寝入ろうとした。


(雨が降ると人恋しくなる…)

と、そう思いながら…




そんな事を思ったからなのか

「雨が降ると人恋しくなる…」

と呟いている声が聞こえた。


ふと見ると

自分の部屋とは違う所に居た。

(ああ、夢か…)

と、夢を見見ながら気付いた。


夢の中の自分は

小さな子供になっていた。


中世の城のような所に居て

小さな木戸の窓から外を眺めている。


窓際の机の上には

紙が広げられていて、

紙には見知らぬ文字が書き込まれている。


小さな手がまた文字を綴る。

何か報告書のようなものだという事は何故か判った。


書き終えて、ホッと息を吐いた時に

丁度声が掛けられた。


「メレムタさん。出来ましたか?」


子供が振り返ると変わった雰囲気の女がいた。

銀髪紫眼で人間離れした妖精じみた雰囲気。


(所謂「異世界」なのだろうなぁ)

と竜童は直感した。


「お義母様かあさま。お待たせしました。お義父様とうさまのご機嫌は如何でしたか?」

夢の中の自分ーー

メレムタと呼ばれた子供は尋ねた。


「判っているだろうとは思いますけど。あの方は能力主義ですからね。

貴方からの報告者の提出が遅れても内容さえ優れていればなにも文句は仰いませんよ」

女が答えた。


「そうですか。では参りましょう」

メレムタが言うと


「いえ。私は遠慮しておきます」

と女が随行を断った。


「…そう言えば××××様が首都からお戻りになられてましたね…」

とメレムタが意味あり気な事を言う。


「別にそれは関係ありません。

貴方が××××様に懐いてるから気を使ってあげてるのです。

私がいたら貴方は彼と色々話をするのを遠慮するでしょう?」


「いえいえ。そんな事はありませんよ?

私はお義母様に遠慮するほど可愛気のある性格じゃありませんし」


「…そうでしたね。では一緒に参りましょうか…」


「そういえば○○○○様も第一夫人の出産後にはラーヘルの貴族街に越して来られるのでしょう?」


「メレムタ様はーーいえ、メレムタさんは本当に意地悪ですね」


「別に意地悪なのではなくて、私は彼らが好きなのですよ。

人間離れして強くて人間離れしてお人好しな所も」

メレムタがそう言うと


「あら?メレムタさんはそっちの趣味でしたか?」

と女が冷やかすようにほくそ笑む。


「どうなんでしょうね?

私としては彼らのような規格外を見ると前世で大事だった人を思い出すんです」


「それって男性ですか?」

女が興味津々に尋ねた。


「はい。男性です。私の息子として生まれて来てくれた子でした」

メレムタがクスクスと笑う。


(………)

『夢の中の自分』である筈の子供がそう言った事で、竜童の中に違和感が生じた。


(そういえば親父が死んだのって何年前だっけ…。この子供、何歳くらいなんだろ?)といった問いも。


「そういえば、お義母様の使い魔のマータールの名前は古い言葉で『雨』という意味なんでしょう?

何故、使い魔の名をマータールとつけたんですか?」


「それは単に私の俗名がマートルだから。音が似ている方が良いかと思ったんです」


「そうなんですか?お義母様も私と同じで雨が好きなのかと思ってました」


「あら?メレムタさんは雨が好きなの?お子ちゃまみたいですね」


「はい。雨が好きです。

雨という語も、その名を持つ人達も前世で好きでした。

勿論、天気の雨も好きです。

雨に濡れたり、水溜りをバシャバシャ踏んで靴の中を泥水だらけにしたり。

楽しかったです。

周りにはこっ酷く叱られてましたが」


「…私はそういう遊びは試したことがありませんが、そうですね…。

雨が沢山降った後に川が増水したのを見るのが好きでした。

『あの濁流に呑まれたら楽になれるんだろうか』とか妄想しながらね…」


「…すみません。雨はお嫌いだったんですね…」


「いいえ。違います。

そういった妄想も『救いを求める形』の一つでした。

私が使い魔をマータールとつけたのも、一つは代替的にであれ、あの使い魔達に関わった者達に『救い』が訪れれば良いなと思ったからです。

だから多分、実は私も雨が好きなんです…」

女がそう言った。


竜童はドキリとした。


自分の事ではないと判っているのだが…。



雨が好きなんですーー

雨が好きなんですーー

雨が好きなんですーー


言葉がこだました。


そして不意に自分の中にいる『半永久的居座り組』の魂が輝きだした。


無表情なおかっぱ頭の不気味な子供。

その魂の粒子が輝き出した。


その魂の半分ほどが

自分の中から抜け出して

夢の中の女の方へと向かっていく。


意識すると父の魂も輝いている。


それでも照の魂は動かない。

「永遠に雨の中には居座ってやる」

と言わんばかりに、息子の中にしがみ付いて鎮座している。


(なかなか繋がらない筈だよな…。やっぱり地球じゃない所に居たんだな)


と竜童はそう思い、目を覚ました…。


瞼を開けると

鼻の奥がツンとして

目に涙が滲んでいたが


少しも悲しくなかった。

少しも寂しくなかった。


そして少しだけ嬉しかった。



はい。ーー

雨が好きです。ーー


あの子供は確かにそう言ったのだから…。


【あとがき】

臓器関連の殺人とか、結構「残酷物語」風ですが主人公が前向きキャラなので、あまり怖くない話に仕上がってると思います。


楽しんで頂けたのなら幸いです。

ではまた。

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