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未来の透視

「うーん。近未来か…」

竜童が唸った。


「イメージ湧きませんか?」

正志が尋ねた。


「昔のアニメとかだと建物の形がエノキダケみたいな細長い建物だった気がします。近未来キャラのファッションは、キノコやアールヌーボーやヒッピーをイメージしたものにしてはどうでしょうか?」

と楓がおかしな事を言う。


「蘇芳はキノコに拘るな。好きなのか?」


「キノコって不思議ですよね?食べ過ぎると何とも言えない奇妙奇天烈な夢を見ます。奇抜なアイデアが欲しい時には是非お試しください」


「そう言えば昔、エノキダケを大量に食ったら夢に宇宙人が出てきたな。やはりキノコは頭デッカチというシルエットに於いて宇宙人と相似性があるのか…」

竜童が呟く。


「きっとそうですよ!」

楓が肯定する。


「…最近、急に暑くなったから、二人共のぼせて頭が沸いてるんだろうね。エアコン入れるよー」

と正志がエアコンのスイッチを押した…。




さて、涼んだところでマトモなアイデアを考える。


今回は近未来小説のイラストの仕事だ。


その物語の世界では文明の二極化が極端化している。


一方の人類社会は中世レベルの電気のない生活をしている。

もう一方の人類社会は超高性能な道具を使いこなす生活をしている。


鞄型の火炎放射器で火魔法を使っているフリをしたり

杖型の水鉄砲で水魔法を使ってるフリをしたりと

中世風を装った技術を用いて

進んだ文明の側の人間達は、中世レベル側の人間達の社会で魔法使いを装って、それなりに尊敬を集めて暮らしている場合もある。


文明の進んだ側は人間の人数が少ない。

遺伝子も偏りやすいので、偶に文明の遅滞してる人類社会の側から子供を拐ってきて仲間に加えている。


主人公は拐われてきた子供。

思春期を迎えた頃にストーリーが始まる。


「中世レベル側の人間達は中世風の格好で良いだろうが。

文明が進んだ側の人間達の格好がな。

…昔の映画やアニメが20××年を予想して描いた未来像がかなり事実と違って笑えるが。

俺としては『竜童零は実は預言者だったのか?』と後々語り継がれるくらいに予想をピタリと当てたいと思ってる」

竜童が大真面目に言うと


「成る程。おかしいと思ったんですよ。先生がアイデアが出ない筈が訳がないし。そういう『未来像予言』みたいなのを盛り込もうだなんて贅沢な事を考えるから仕事が行き詰まるんですよ」

と正志が指摘した。


「先生!実際に意識を未来に飛ばして見て来る事は可能ですか?」

と楓が手を挙げて発言する。


「おう。蘇芳よ。俺はお前のそういう所は本当に見込みがあると思うぞ。

しかし現実的には俺達が未来に飛ぶよりは、未来にいる奴を過去である現在へ召喚した方が可能性はあるんじゃないか?

それも『意識体』としてだかな。

それを俺達が心的残像を読み出す事で未来を垣間見る訳だ」

と竜童は乗り気だ。


「未来人の意識体を召喚ですか?具体的にはどうするつもりですか?」

正志が興味を惹かれたようだ。


「召喚とは儀式的には召喚対象の照応物に取り囲まれて変性意識状態になる事で、召喚対象の霊動周波数帯空間を体験する訳だが。

以前説明したようにそうした空間には『成仏した後に迷い込んでる霊魂存在』も居る。

そういった空間には様々な特性がある。

受肉次元である物理空間に近い空間だと時間を遡る事は不可能だが。

受肉次元から遠い可逆性のある空間だと様々な時代を生きた霊魂存在が棲みついてる筈だ。

その中から未来人だった奴を召喚すれば何がしかの未来像が期待できるかも知れない」


「『可逆性のある空間』の神格や照応物はどうなるんでしょう?」

正志が訊くと


降三世明王ごうざんぜみょうおうの如来形である阿閦如来あしゅくにょらいが神格で良いんじゃないかと思わないでもないが、ここはやはり狐狗狸コックリさんじゃないか?」

竜童が答えた。


「ヒマワリ会って仏教系ですよね?」

楓が素朴な疑問を呈すると


「それは日向照が元々は西洋魔術に傾倒していた事による反動だ。

日本ではビーナスを召喚するより弁財天を召喚した方が効率が良いと気付いたらしい。

土地と、其処で長年信仰されてきた対象との相関性が侮れないと思ったんだとさ。

日本では長年仏教が熱心に信仰されてきたから仏教系の下品ゲボンの神を召喚すると効率が良いが、必ずしも仏教系の神格に拘る必要性はない」

と竜童は言う。


未来でも子供達が『狐狗狸コックリさん』をして遊んでいれば、それで未来人の意識体が釣れる可能性があるという事か。



こうして初夏の暑さにやられた『竜童会』の面々は「未来を垣間見よう!」計画を発動させたのだった…。



日向流の魔法陣の描き方は先ず

「傷をつけても良い板を床に敷く」

事から始まる。


そうして敷いた板(ベニア板でも良い)に「空間定義を象徴的に表現した魔法陣」を傷を付ける形で描くのだ。


召喚対象に照応する周波数の音を声として出して振動させながら。


そうして狐狗狸さんを招霊する『場』を設ける。


「魔法陣というと昔ながらの西洋魔術のものじゃないとダメなんじゃないか?」

と思ってしまいがちだが


日向流霊能術の理論には

「創造エネルギーが充分に存在していて尚且つ『守護神』のいずれかが面白がって協力してくれる場合には『どんな出鱈目でも本当になる』という奇跡が起こる」

というものがある。


それだと『守護神』頼りではあるが

神々に一方的に縋るのではなく

「知的な楽しみを提供しつつ協力を持ちかける」といった誠実な姿勢でいれば、案外誰かしらが協力してくれるものらしい。


そうやって神々を楽しませ協力を仰ぐには、人間の方も知的好奇心に満ちた状態で楽しんでいなければならない。


竜童会の面々は

モチベーションが充分な状態だ。


なので迷わず儀式に入り

『可逆性のある空間』に棲まう『未来人の意識体』を召喚することにした。


お経代わりに詩を詠むという行為は

詩の内容が人間の潜在意識にイメージの喚起を促す作用もあり重要ではあるが


本当に重要なのは「音波がどのような動きをするのか?」という事を意識することにある。


『引き寄せたい空間』それ自体を

『息吹(生体リズム)』の一種

だと見做すのだ。


そして『引き寄せたい空間』の持つリズムを魔法陣の中に作り出す。


「音波の反射」などといった

「音の波の動き」は

そうした『リズム要素』となる。


【空間同士が共鳴すれば物理的距離を無視して、霊魂存在や意識体は複数の場に重複して出現できる】


日向照の唱えたこの理論を元に構築された召喚術。


それを実践して

「未来人!カモーン!」

と楓達は冀ったのだった。



結果。


楓と正志は急激な眠気に襲われて

突然眠りこけてしまった。


竜童だけが魔法陣の中で目を覚ましたまま佇んでいた…。


そして…。



楓と正志が目を覚ますと


「未来なんて覗くもんじゃないな…」

と竜童が力なく呟いていて


それから大人しく仕事をし出したのだった…。



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