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菌・ウィルスによる脳波・生体波の模倣

挿絵(By みてみん)


楓は茉莉が帰って来た後はしつこく茉莉に纏わり付いて

「お姉ちゃんがオカズ分けてあげる」

「お姉ちゃんと一緒にお風呂に入ろう」

「お姉ちゃんと一緒に寝よう」

などと言い出し茉莉にキレられた。


「ウザい!!!」

と、一刀両断にされながらも


「茉莉は素直じゃないから、そう言うけど本当は甘えん坊だもんね。昔から『ママと一緒に寝る〜』とか『お姉ちゃんと一緒に寝る〜』って言って一人で寝るのが苦手だったもんね」

と、楓は

(一体いつの話だ?)

と思うような昔の話を持ち出して、小さい子の相手をするような感覚で茉莉に接した。


茉莉は

「お母さん、コレ、何とかして…」

と楓を『コレ』呼ばわりして指差した。


それでも楓はめげない。

完全に『小動物が懐くまで(逃亡を諦めるまで)抱っこしたり撫で回したりする子供』の状態になっている。


噛まれても逃げられてもしつこく抱っこしたり撫で回し続けることで、小動物に対して「逃げようとしても無駄だ、こいつはしつこい」と理解させ諦めの心理へと追い込む。


こういった技を体得している子供はまれに存在するが、楓はそういったタイプの子供だった。


そして今回の標的ターゲット茉莉いもうとである。


茉莉は

「ウザい、キモい」

と言い続け、

それでも楓に付き纏われて

最終的には

「家庭内ストーカーかあんたは!」

と本気でキレた。


楓も負けじと応戦する。

「必要悪だ!何故判らん!?腸内フロラの細菌も善玉が大繁殖してれば悪玉は繁殖の隙を見出せない!私は茉莉の善玉菌だ!そうなると決めた!」


そう訳の分からないことを楓が叫ぶと。


「あんた、もう一回精神科に行って来なさい…」

と茉莉に憐れみの視線を向けられたのだった…。


結局、茉莉が寝てる間に楓は茉莉のベッドに潜り込んだが、朝起きたら何故か布団を剥ぎ取られてベッドの下に転がされていた。


しかし

(ふっ、この程度の拒絶でこの私が諦めると思ったら甘いよ、お嬢ちゃん)

と思考までストーカー思考に染まった楓はめげずに颯爽と起き上がった。


善玉菌云々の話は実は結構、楓的には真面目に話していた。


『菌やウィルスの纏まりが人間の脳波や生体波のリズムを模倣し、その人間の気分や思念イメージの情報を他へも伝播してしまう』という現象がある以上

『陰湿で剣呑な気分や思念イメージの情報』を含んだ微小物の纏まりは


人間の心を蝕む感染病のように作用して、人間を必要以上に滅いらせたり悲観主義的にさせたりする。


悪質な脳波パターンや生体パターンが人間の心を蝕む状態は、何気にそうしたパターンを模倣・媒介している菌やウィルスの繁殖活動と連動しているのである。


そうした菌やウィルスが模倣している誰かの脳波パターンや生体パターンを、霊能者は自分の脳波パターンや生体パターンへと変えて無害化する。


そうすることで人間が必要以上に悲観的にも厭世的にもならずに済むように配慮するのである。


楓は茉莉のベッドに潜り込んだ後

単に一緒にお寝んねした訳ではない。


身体を密着させて瞑想状態に入り

自分の息吹(生体パターン)と

茉莉の息吹(生体パターン)の場が

重複して混じり合うのを感じつつ


茉莉の中にある

『静電気みたいにチクチクピリピリした冷たいもの』を自分の中に引き受けて、それを『自分の生体パターンで染め上げた』のだ。

チクチクピリピリがおさまるまでの間、ずっと脳内で『人同士がお行儀良くお辞儀しあってるイメージ』を思い描いた。


それが所謂ーー

『心的残像の上書き』もしくは『調伏』という行為に当たる。



今回は相手が家族だから

身体を密着させるという事もできたが


これがクライアント相手になると『手で触れるだけでやらなきゃならない』のだからハードルが高い。


霊能者も楽ではないのである。


眠ってる相手に身体を密着させてやって良いなら霊能初心者の楓でも何とか『調伏』を行えるが

それを赤の他人にやると

一般的には『痴女だ!』いう位置付けになる。


そんな事では仕事は成り立たない。


なので言葉をかけながら、客をリラックスさせつつ自分自身も瞑想状態になり軽く手であいてに触れるだけで、自分の息吹と相手の息吹とを感じつつ『調伏』処置を行う事になる。


かなり難しい。


しかも霊能者のお仕事はこうした『調伏』だけではない。

依頼達成の為に必要とあらば様々な事をしなければならない。


できる人は殆ど居ないらしいのだが

竜童先生のように

『オーラを纏った手刀で残留思念や心的残像や魂の粒子を解体する』

(調伏のように書き換える、という訳ではなく、場を形成している纏まり自体を解体する)という離れ業も可能ならば身に付けたい。


一人前になるのはまだまだ道のりは長いのだ…。


しかしこうした『調伏』。

「単に自分の感じ方が変わる」という効果しかないので、実際に『調伏』が行われたかどうかを施行された対象が必ずしも気づくとは限らない。


だが「苦痛な体験の中で必要以上に苦しむ事で有効な対策を取れなくなっている」といった『認知の金縛り状態』からは解放される。


それによって

『謝ると死ぬ病』

『感謝すると死ぬ病』

に罹っていた状態もおさまるので


自分の態度のせいで硬化させてしまっていた相手が軟化してくれる。


ソッポを向いてた人達から助力を得られやすくなるのだ。


それによって事態の良好化の連鎖反応が起こる。

ーーとされている。

(日向流霊能術においては)



***************



さてその後の茉莉だが。


何故か学校から帰って来るなり

「お姉がこの前読んでた本を貸して欲しいの」

と言い出した。


「竜童先生から借りたものなんで又貸しになるから先生に訊いてみるね。『女子高生がお願いしてる』って言えば、多分ダメとは言わないだろうけど。L○NEで訊いてみるから、返事が来るまでちょっと待ってて」

と、楓は答えた。


当然のことながら竜童は『女子高生』に甘い。

楓の予想通り

「良きにはからえ」

との返事が来た。


(もしかしたら茉莉なりに『調伏』を受けて、何かしら感じるものがあったのかも知れない)

と、楓は思った。


しかしそれ以降ーー


茉莉は自分がそれまで愛読していた漫画や小説を全て処分してしまった。


そして何故か『ヒマワリ会』の『日向葵ひゅうがあおいライブラリー』コーナーに入り浸るようになった。

日向葵の著書を読み漁り、日向葵が出ていたテレビ番組の録画も視聴しまくった。


若い娘らしくもなくイケメン先生こと柴田先生には目もくれず…

既に鬼籍に入っている60過ぎのお爺ちゃんである日向照ひゅうがてるのファンになってしまったのだ。


そして「日向先生が御存命の頃に先生の素晴らしさに気づいていれば、じかにお会いする機会もあったかも知れないのに…」と

本気で悔し涙を流す人間になってしまった…。


それはそれで楓から見てかなり怖い変化なのだが「当人が幸せそうだから、まぁイイか」と楓は納得する事にしたのだった…。



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