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心霊動画


翌朝ーー


竜童がL○NEに動画をアップしていたので楓はそれを観ることにした。


(スマホで撮ったような動画でちゃんと色々映ってるんだろうか?)

と思ったらそれなりに映っていた。

生で現場を観るのとはまた違う感じだ。


動画の場合は

『魂の粒子』そのものよりも

『魂の粒子の軌跡』らしきものが映っていた。


つまり『魂の粒子の軌跡』の部分が「色鉛筆で描かれた絵にザッと消しゴムをかけたような感じ」見えたのだ。


光の反射とか、スマホのカメラ機能の不調とか、様々な原因が考えられるのかも知れないが、余りにもそうした画面上の不具合が多過ぎた。


「やはり何かその場所には異常があり、これは心霊動画である」と思うのが道理だろう。


おかしな事に動画や写真は「撮る人」自身の「観る能力」を反映する場合があり、他の人が撮っても心霊写真や心霊動画にはならないのに、竜童が撮ればそうなるのだそうだ。


(竜童先生に弟子入りしてからというもの、ずっと目から鱗が落ち続けてる感じだよなぁ)

と、楓は思った。


(ちゃんと呼吸法と瞑想をマスターして自分の鼓動や息吹を把握できるようになれば、私も竜童先生みたいに色々できるようになるのかなぁ…)


楓は頑張って呼吸法と瞑想に励むことにしたのだった。



***************



楓が瞑想をしていると

ふと誰かの気配を感じた。


何だか『息吹(生体リズム)』というものに関して掴めた気がするのだ。


お風呂の湯船にお湯を張って、その上にお湯を入れた洗面器を浮舟のように浮かべてユラユラと漂うがままにしておく時のような


『たゆとう』ような感じ。

これが息吹(生体リズム)なんじゃないかと。

それが掴めたからこそ自分の領域に入り込んだ違和感があれば気配を感じるのだ。


蝙蝠が超音波を飛ばして、その音波の跳ね返り具合で真っ暗な洞窟内の状態を把握するのと同様に、自分の呼吸や鼓動のリズムが生み出す自分の物理的波動が辺りに放射され、そして跳ね返ってくる。

それが息吹(生体リズム)の把握という名の『大局的内観』なのだ。


さて

楓の息吹の中に違和感を感じさせた「気配」だが。

それは誰かの心的残像のようだった。


先日、鞄の中から机の上へと移動していた楓のノート。

それを見下ろしている茉莉の姿が見えた。

サイレント映画みたいに何を言ってるか判らないのだけど口元が微かに動いている。


茉莉が楓のノートに何か書き込もうとしているようだったが、思いとどまったように、ペンを置いて部屋を立ち去った…。


先日の夜に茉莉が楓の部屋に侵入していたらしく、その場面が見えたのだった。


(んー。もしかして私は寝てたけどお祖母ちゃんは起きてたから茉莉の事を見てたのかな?それで「茉莉を助けてやれ」って言いたいのかな?)

と楓は思った。


その途端にバシッと何処から来たのか判らない音が鳴った。


(当たりか…)


楓は茉莉の部屋に行ってみる事にした。


茉莉はネットで様々な歪曲された卑猥な人物像を捏造され、クラスでも周りから無視され疎外され、それでも学校に通い続けている。

なので今の時間は居ない。


(茉莉は私に何を言いたかったのかな?読唇術が使えればサイレント映画みたいな音のない映像からでも何を言ってるかが判るのにね…)


楓は手掛かりを探そうとして茉莉の部屋を物色したが、これといって変わったものはない。


「何かヒントになるような残留思念が宿ってる物はないものかな?」

楓は呟きながら茉莉の荷物に触れることにした。


先ず目についたのは、黒い眼帯をしたウサギのヌイグルミだ。


茉莉は怪奇小説やミステリー小説が好きなタチで、あまり漫画を読まないが、例外としてイケメン悪魔執事が登場する某漫画を好んで読む。


その話の中で登場する子供向け商品に『ビ○ーラビット』というものがあって、茉莉はボッタクリなお値段のそのヌイグルミを購入して可愛がっていた。


(色々話しかけてるかも知れない)

そう思った。


「知りたい」

そう念じながらヌイグルミに触れる。


すると言葉が浮かぶ。


(もうダメだよ。もうダメだよ。もうダメだよ。もうダメだよ。もうダメだよ)


鼻がツンとして、喉に重たい塊が詰まってみたいで、涙を流したくなくて歯を食いしばる。

それでも頬を温かい液体が伝い落ちる。


そんな気分が再現された…。



流石に楓は罪悪感を感じた。

(…私は茉莉は強い子だって、そう思おうとしてた。だからちょっとくらい痛い目に遭った方が当人の為だとか、そんな言い訳をして無関心だった。本当は茉莉はずっと辛くて我慢してたんだ。…下級生から茉莉がイジメられてるらしいって話を聞いてから二ヶ月くらい経ってる。その間ずっと…)


そう思ったら

今度は『自分の感情』が溢れてきて

ーー涙が溢れてきた。


自分が余りにも非情で

自分が余りにもろくでなしで

自分が余りにも悪い姉だったと

そう自覚してしまったのだ。


(ごめんね。ごめんね。ごめんね。ごめんね。ごめんね)


ごめんなさい。判ってあげられなくて。

ごめんなさい。共感してあげられなくて。

ごめんなさい。無関心で。

ごめんなさい。本当は嫌ってて。

ごめんなさい。チャンスをください。


私、茉莉の良いお姉ちゃんになりたいんだ。

本当だよ?



楓は茉莉の部屋で泣いて懺悔した…。



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