机上の口論 【月夜譚No.127】
飲み慣れているはずなのに、今日のコーラは何故かいつもより甘ったるかった。眉をしかめた少年は、ストローから唇を離して、カップをテーブルの上に置く。フライドポテトに手を伸ばし、口直しをした。
先ほどからテーブルの上を行き来する会話は、幾ら経っても平行線上から脱却しない。男女五人が顔を突き合わせて、それぞれ自分の主張しかしないのだから、当然の話ではあるが。
正直、少年はいてもいなくてもどちらでも良い存在だ。その証拠に、この場において殆ど口を開いていないし、進歩しない口論に辟易している。ただ、友人にどうしてもついてきて欲しいと言われたから、いるまでである。
自分にとってはどうでもいいことだ。しかし、他の面子は違う。話す口調、表情共に真剣だし、この問題を解決しなければ先には進めないのだろう。
ならば、他の意見もしっかり聞いて、理解を示さなければならないだろうに。まあ、それができれば苦労はないのだろうが。
思わず漏れかけた溜め息をぐっと堪え、少年は再びフライドポテトを口に咥えた。この時間はいつまで続くのだろうか。せめて、この皿の上が空になるまでには、落としどころを見つけて欲しいものだ。