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5.安心

「……痛ぇ……」


取り除き損ねた石に頭蓋骨を抉るように刺激され、目が覚める。


「ゴリッつったぞ……やっぱり、土の上で寝るのはまずかったか……」


――おまけに身体も痛い。せめて何か敷けば違ったのかもしれないが、敷けるような物があったら先に着ている物をどうにかしている。


俺は強制的に睡魔を吹き飛ばしてきた石を端に転がし、座ったまま外へと這い出る。


こんな粗末な寝床でも時間だけはしっかりと潰せるようで、外は葉の隙間から差し込む光で明るく照らされていた。


「……スキル、確認するか。後回しにしてたし。またゴブリンに襲われてタイミング逃しても困る」


一人言を呟きながらステータスを開き、スキル欄を1つ目から順に触れていく。


――――――――――

【魅力.lv1】

悪印象を抱かれ辛くなる。

――――――――――

――――――――――

【鑑定.lv4】

素材の詳細を表示する。

――――――――――

――――――――――

【ステータス閲覧.lv2】

ステータスを表示する。

――――――――――

――――――――――

【隠密.lv1】

気配を消す。

――――――――――

――――――――――

【鈍器使い.lv1】

鈍器の扱いを理解している。

――――――――――


どうせ大した事は書いていないなら、こういうステータスの詳細の見方くらい最初に教えてくれてもいいだろ……と、少し愚痴を吐きつつ特殊スキルの欄に指を滑らせるように移動すると、同様にスキルの詳細が表示される。


――――――――――

複魂(ふくこん).lv1 1/1】

複数の魂を持つ。自身が死亡した時に魂を生命力と魔力に変換し、在るべき形へと戻す。

――――――――――

――――――――――

【道連れ.lv1】

自身が5秒以内に受けた身体的欠損を指定した1体と共有する。同じ身体的欠損に対して使用する事は出来ない。

――――――――――


特殊スキルは2つ。この2つは他のスキルと説明文の雰囲気も少し違うように感じる。雰囲気を察せる程、他のスキルの説明がちゃんとしていないとも言える。


(でも、これで推測の域を出なかったスキルの効果は確定した)


【複魂】というのは、恐らく復活スキル。そして後ろについている数字は使用回数だろう。


もう1つの【道連れ】は自分が食らったダメージを返すスキルのようだ。5秒という制限こそあるが、強力なスキルのはず。


――これ、2つ組み合わせれば。ふとよぎった凶悪なコンボを、冷静に頭から追いやる。


死ぬ程の自傷行為を当たり前に出来る奴がいるなら、是非とも教えて、そして代わって欲しい。仮にいたとしても、自分がするのは御免蒙(ごめんこうむ)る。死に損なう可能性の方が高い。


(特殊スキル……は、戦闘スキルとは違うよな)


思い返すと、ゴブリンのステータスには戦闘スキルという欄があり、そこには【兜割り】といういかにもな技名のスキルがあった。スキルが何かしらあれば、そういう欄が出来るという事だ。


つまり、そんな欄が無い俺にはそういったスキルはない。戦闘スキル、覚えられないとかはないよな。


「……うん。まず、食料探しに行かなきゃな。無いものねだってもしゃーないし」


俺は立ち上がり、腕を上に伸ばし、身体全体で凝りを解す。


――取り敢えず【エプの果実】探しをしよう。栄養バランスとかは分からないが、空腹さえ満たせるなら当面はどうにかなる……はずだ。


俺は見通しが甘いのを自覚しつつも、空元気(からげんき)で自分を奮い立たせて歩き出した。



――――――――――



「なんだ、これ」


エプの果実を見つけ適当に歩いていると、地面が平らになっている場所を見つけた。


それを中心にして、同様に(なら)された地面が森を突き抜けるように伸びている。意図して平らにしたのだろう。不自然な程に見晴らしもいい。


「道……?魔物のものでは無いな……幅も広いし」


辺りを見て、取り敢えずは道に誰も居ない事を確認する。


ゴブリンと遭遇し戦って以来、周りを警戒しながら歩いていたからか、精神的な疲労が溜まっている。そのため、俺は道の端に抱えていたエプの実をそっと置いた。


「ここらで休憩するか。……道って事は、この辺で待ってれば誰かが通る事もあるだろ」


肉体的な疲労が少ない時に休憩を取る免罪符のような理屈を漏らし、その場に座り込む。


明らかに人の手が入った場所。知らない土地で不安はあるとはいえ、期待に胸を踊らせずにはいられない。というより、俺も森暮らしなどいつまでも――。


――ガサッ。


「がッ……」


後ろから聞こえた物音に驚き、食べようとしたエプの実を放り慌てて立とうとすると、背中に強い衝撃が伝わるとともに体制を崩される。


同時に、左肩に鋭い痛みが走る。俺は突然の事に驚きながらも、がむしゃらに左腕を振り回してそれを振り払った。


(っ……噛まれた!)


そいつ()の体型からその事を察し、距離を取りつつ身構える。


大型犬程の大きさ、尖った牙が生え揃う、大きく横に裂けた口。口から涎を(したた)らせた3()()の狼は、獲物()を逃さんと睨みつけていた。

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