表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/78

26.熟考

【招集】を使ったビスティラットのMPは『27/52』まで減少していた。


恐らく消費MPは25……燃費の善し悪しは分からないが、もう1回使えると考えれば俺の闘志を挫くには十分だ。


もうちょっと消費してくれれば……なんて念じた所で、それを叶えてくれるような優しい世界ではない。


「ふっ……はは……」


ストレスでおかしくなってしまいそうだ。変な笑いが込み上げてくるあたり、既に多少おかしくはなっている。


――だが、不思議と俺の頭は冴えていた。追い詰められている事で、良くも悪くも選択肢が減り、取れる行動が限られてくるからなのかもしれない。


高速思考を使い、擬似的に止まった時間の中で自分のステータスを確認する。



――――――――――

名称:ツクモ

性別:♀

Lv:5

種族:亜人(猫)

状態:正常

HP:78/78 MP:52/95

戦闘スキル:

【高速思考.lv2】

スキル:

【魅力.lv1】【鑑定.lv4】【観察.lv1】【ステータス閲覧.lv2】【隠密.lv3】【体術.lv2】【鈍器使い.lv1】【自然回復.lv1】【根性.lv1】

特殊スキル:

複魂(ふくこん).lv1 1/1】【道連れ.lv2】

――――――――――



先のレベルアップで恐らくMPも回復しており、1発も食らっていないおかげでHPも上限の78もある。とはいえ、目の前の巨体に対抗できる程のHPではない。


(ビスティラットを【道連れ】……。俺には復活スキルがあるから、それを使えば倒せる)


頭によぎるは最強コンボ。自分が復活する事を利用し、相手だけを殺すというお手軽なもの。


だが、俺には1つ懸念があった。それは、【複魂(ふくこん)】の発動条件……それが想像通りなら、このスキルは使えない。


……思考は続行だ。ここで間違える訳にはいかない。



――――――――――

複数の魂を持つ。自身が死亡した時に魂を生命力と魔力に変換し、在るべき形へと戻す。

――――――――――



頭に浮かぶのは【複魂】のスキル説明。最初にこれを見た時、このスキルを『復活スキル』と断定した。


(ここまで、勘違いはない)


だが、岩にぶつける時に流し見たノーガラットのステータスには、『HP:0/70』の表記と共に『状態:気絶』とあった。


このスキルは、死亡する事で全快できると考えていい。だが、HPがゼロになる事はイコール死、ではない。


(本当に説明通りって事だとすれば……)


ガドルと戦った時……腕を切り飛ばされ、その状態でガドルに殴りかかり、途中で気絶。恐らく、あの時にHPがゼロになったのだろう。


だが、【複魂】は発動しなかったと思われる。発動条件は『死亡すること』だから、治療が間に合ったと考えれば妥当だ。


死亡しなければ発動しない。HPがなくても、治療が間に合えば直ぐに死亡する訳ではない。だが、裏を返せばそれは「【複魂】の発動タイミングは分からない」ということ。


(ビスティラットを道連れに出来るとして……いつ、復活する?)


腕1本で当時54くらいあったHPが無くなったなら、ビスティラットの体当たりを頭にでも食らって道連れにすれば……ビスティラットは倒せる。


だが、死亡した時点で直ぐ復活するのかは不明。ましてや、ビスティラット以外の魔物もこの場には存在する。


野生動物(ノーガラット)が死にかけの肉をどうするか、なんて判りきっている。その場で食べるか、巣穴に持ち帰るか。


後者なら、俺は復活した時点でラット達の巣穴の中。その時点で死亡確定だ、ビスティラットがこの1体のみとは思えない。


前者だとしても、ノーガラットは群れで行動する生き物ならば、今以上の数がここに来る可能性がある。


【道連れ】には、出来ない。【複魂】も、頼りには出来ない。


最強コンボなんて思っていた自分が恥ずかしくなる。


再起不能レベルの自爆が必須、その後の安全も保証されていない……とんでもない最()コンボだ。


自身のステータスボード、そのMPの欄には『20/95』と表記されていた。とはいえ、絶望的である現状の自覚のためだけにMPを浪費した訳ではない。


(どうすればいいか……思いついたぞ)


元々、【道連れ】なんてものはチートだ。復活なんて、言うまでもないだろう。


――今この状況は、そんなズル(チート)が通用しない。それだけだ。


「……ふっ!」


【高速思考】を解除し、突撃していた死に体のノーガラット3匹の体当たりを避ける。


体力も尽きかけているからか、動きにキレがなく避けやすい。集まりかけていた方のノーガラットも、こちらをしっかりとは認識出来ていない。


「チュッ!?」


その内、1匹の尻尾を体当たりを避けて手で掴む。


「にゃひ……。ははっ……」


洪水のような抑えきれない感情の波に自然と笑いが込み上がり、尻尾を掴む両手に力が()もる。


俺は全身を使いながらその灰色を引き寄せるように引き摺り――。


「……にゃァァッッ!!」


――()()()()()

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ