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18.魔窟

「ここがダンジョン……」


地面と天井がごつごつとした岩肌で洞窟のような見た目ではあるのだが、不思議と明るい。


入り組んでいない、というより中は入口の何倍も広く、景色を遮るものと言えば自然的な大岩が乱雑にある程度。


ところどころ分かれ道があるため、洞窟というより巨大なアリの巣を思わせる。


「そういえば、装備とか必要無かったのか?」

「ラット駆除ですし、武器さえあれば十分っス」


依頼を受けようというコルチの提案に乗って、魔物駆除の依頼を請けて来たはいいが……特に何の準備もしていない。


流石に不用心ではないかと思いつつ、貰ったカードを握り締めていると、コルチが声をかけてくる。


「それ、しまわないんスか」


「しまう所がない。ローブにはポケットとかないしな」

「……これは使わないんです?」


コルチはそう言って何処からか剣を取り出し、その先端で黒い裂け目を示す。


「【空間魔法】か。覚えて無いんだよな」


「……記憶喪失だから使い方忘れてるのかと思ったっスけど、違ったんスね。これ、貸しましょうか?」


「いや、問題ない。これがあるからな」


そう言って握り拳を作って見せる。


武器に関してはまともに使えそうにないし、慣れない物を使っても邪魔になるだけだ。


「剣とか使うって話じゃ……?試験の時、ガドルの兄貴が腕を切り飛ばされたって聞きましたけど」


「いやまあ……こっちの方が慣れてるんだ」


正直、見よう見まねで剣を振り回しても問題はないだろうが……無理に使う必要もないだろう。


そもそも、腕を切り飛ばされたのは俺の方だ。……思い出すと目眩がする。


流石にカードは邪魔なため、コルチに預けたが、【空間魔法】は練習しておこう。


今の服装に収納がないのもそうだが、今後持ち物が増えたりしたら厄介だ。誰でも覚えられるって話なら、俺でもいけるはずだ。


そんな事を考えながら、俺は洞窟の先を見つめながら呟く。


「いないな、ラット」

「この辺で見かけたら大分ヤバいっス。増えすぎの可能性が出てくるっスね」


魔物は湧く量が多く、強引に間引かないと溢れてしまう。今回はそれを防止するための依頼だ。


一部湧く量の低い魔物もいるが、その場合は個体としての能力が高い。そのため、万一に備えて狩ったり、そういった魔物の素材を欲しがる人がいるらしい。


メジス付近にはいわゆる低ランクの魔物が湧くダンジョンが多く、間引きの依頼が多いそうだ。


定期的に増える魔物とそれを退治する冒険者。ついでに、魔物の素材を欲しがる人。


わかり易いシステムだが、それ故になくなる事もない仕事なのはよく分かる。


「にしても、広いな……」

「空間が魔力で歪んでいて、入口通った瞬間別の場所に飛ばされてるらしいっスけど」


「それ、確かめようがないよな」


街から歩いて直ぐの場所にあったこのダンジョンだが、この大きさの空洞が実際に地下にあったら地盤とかが大変な事になる。そう考えれば別空間というのも納得のいく話だが、それをどうやって確かめたのだろう。


「いや。確かめるためにダンジョンの内側を爆発させて、衝撃で地続きかどうか調べたらしいんですよ」

「ええ……」


とんでもないな、異世界人。


どこにでも突飛な発想をする人はいるだろうが、ダンジョンを爆破するのは異世界でも特殊な部類の人間ではないだろうか。


「ダンジョンの破壊とかは……」


「外側から破壊も無理だったらしいっス。まあ、一番奥にあるコアを破壊すればダンジョンは消滅しますから……」


無理だった、という事はやっぱり試した奴がいたのか。でも、壊す方法がちゃんとあるならそっちの方がまだ楽そうだ。


「まあ、魔物の素材を取りたければわざわざ潰す必要もないのか」

「そういう事っス……ん」


そんな事を話していると、奥の様子を(うかが)っていたコルチが俺を手で制止した。


「ゆっくり、こっち来て下さい姐御……」


コルチに促されるまま物陰に隠れて奥を覗くと、俺の膝くらいの体長を持つ灰色の獣が2匹、何かを警戒するように佇んでいた。


灰色の獣毛に覆われていない手足はピンク色で、同色の尻尾が丸い胴体から生えている。


(流石、異世界……)


その風貌(ふうぼう)から導かれる生物を一言で表すなら、でかいネズミ、だ。

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