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33日目. 日常、之即ち普通の朝食也

「今日はどこ行こうか」

「うーん……」


目玉焼きから器用に黄身だけを取り出し、メリーさんは唸りながらそれを口に運んだ。


早朝、僕とメリーさんは朝食をとるためにホテルのレストランへと脚を運び、今は席について絶賛食事中である。


そして今になって今日の予定を決めているのかというと……


「疲れたのかすぐ寝たもんなメリーさん」

「むぅ……ヒロユキも人のこと言えないの」

「おっしゃるとおりで……」


そう、僕もメリーさんもホテルに着くとすぐ夕食をとり、終わった後には脇目も振らずそのまま布団へダイブ、21時には2人とも夢の世界に旅立つという模範的な健康生活のような睡眠サイクルをとったのだ。当然何かプランを立てている筈もなく、おかげで僕たちは今日の予定を当日に決めるハメとなったわけだ。


……旅行前に決めておけなんて言わないでくれ。思いつきの行き当たりばったり旅なんだ。


「吉野は遠いしなー……桜もまだ咲いてないからパスかなー」

「世界遺産だけど仕方ないの」

「ごめんな」


僕は車を持ってないペーパードライバーなので、電車かバスくらいしか移動手段がない。レンタカー借りろって? 家買った上に余計な出費をかけたくないので今は却下。


メリーさんはトーストの上にジ○リでよく見かけるハムエッグを乗せたものを美味しそうに頬張りながら今朝の新聞を見ている。


「こら、食べながら新聞を読むのは止めなさい」

「ん? ひがふの。ほへはひんぶんふぉほふぃふぁふぁはほはんほはふぇふぇふぃふほ」

「うん? ごめん分からなかった。飲み込んでからもう一回言ってくれ」


25か国語話せたとしても、流石に非地球語は理解できない。ニュアンスも掴めん。つまりお手上げだ。


メリーさんはもぐもぐと口を動かし終わると、後ろから「ドヤ!」と聞こえてきそうなほどのドヤ顔をしながら僕に堂々とした口調で言い放った。


「違うの。これは新聞を読みながらご飯を食べているの!」

「一緒じゃねえか」


ちょっとだけ期待して損したわ。彼女の回答に呆れ果てた僕は口直しのコーヒーを飲む。いつも飲んでいる豆よりも少し酸味が強かったので、砂糖を追加で入れたほうが美味しいと感じる味だった。


さて、そんな話よりも今日の予定だ。


「近場でどこか行けそうなところといえば……」

「今日はぐーたらしても良いと思うの」

「ふむふむ……え?」


メリーさんからの予想だにしない回答に、思わず間の抜けた声を出してしまう。


対してメリーさんは、そんな僕を不思議そうな目で見つめている。


「ヒロユキどうしたの? 急に気の抜けた声なんか出して」

「あ、いや何でもない。それよりもいいのか? せっかくの休日なんだしどこか観光地にでも」

「休日だからこそ、いつもどおりの生活もしてみたいし、あとは、少し時間が経ったらここに住むことになるからできるだけ慣れておきたいの」

「はぁー……なるほどなぁ」


彼女のいう言葉は一切迷い、というか淀みがなく、すべて彼女の本心であることが窺える。その言葉に僕は感嘆の声を出さざるを得なかった。


「んじゃ、どこか適当な店をブラブラするか」

「ん! 分かったの!」


メリーさんの後ろに尻尾があったら、必死に振っているんだろうなあ、と思えるほどの笑顔に僕も釣られてい顔になる。やはりメリーさんは僕に癒しを与えてくれる。


「じゃあ、尚更早くどこ行くか決めないとな。部屋戻ってインターネット使って探すか?」

「待って、このデザートだけは食べたいの!」

「おいそれは違うぞ」


そして信じられないことを口にして僕を驚かせてくる。


「そのアイス今日だけで5杯目だろ、お腹壊すぞ」

「私は丈夫だから大丈夫なの! ほら、ヒロユキの分!」

「丈夫……いや、昨日かき氷食べてたから確かにそうなのは分かるんだがな……というか僕のはいらないよ」


「昨日かき氷を4皿食べたことは財布の中身から知っているぞ」と彼女にプレッシャーをかけたつもりだったのだが、思わぬ形でカウンターを食らうハメとなった。まさかこんな隠し玉を持ってるとは……。


「何で? 私変なことでも言った?」

「変なこと……いや、そんなことは一切ないけどもう満腹なんだって」

「ヒロユキは私が持ってきたものを食べれないの?」

「……食べます、だから無言で追加のパンケーキを持ってくるのは止めてくれ」

「やったー! ヒロユキありがとうなのー!」


そして何だかんだでメリーさんの行動を許してしまう、親バカならぬ師匠バカだ。でもメリーさんがかわいいので仕方ない。


……決してメリーさんに脅されたからではないからな? 僕は負けてないからな?


「富雄にはラーメン屋さんがいっぱいあるらしい! 行ってみたいの!」

「お前まだ食べる気か!?」


その後、メリーさんが追加でさらにアイスを食べたことなど色々あったものの、特別変わったこともなく3日目の朝は始まった。

今回は3日目の導入ということで少し短めです。

薄味のカルピスなんて飲みたくないですよね?ということで続きは早めに出します。

次回は金曜日投稿予定です。

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