演目九:ギルド①
ヒナミside
「ここが私が所属しているギルド…『グラウン』よ!」
エウレペールにある冒険者ギルド『グラウン』。
グラウンは全体的にレンガ造りでできており、周りには旗が立っている。旗にはグラウンを象徴するするエンブレムが入っている。
口を開けた象の顔、その後ろに二本の剣が交差しているエンブレムだ。
「へぇ…ここが、ね…」
アリスとナーシャは物珍しそうに、辺りをキョロキョロしながら応える。
「ふふ、そろそろ行きましょうか?」
「オゥ!」
木製のドアに手を掛け開けると、ギィという音が鳴る。
扉を開けた先に広がる景色は−−−−−−
「ギャハハハハ!!!やれやれぇ!!」
「ダーボォ!負けたら承知しねぇぞ!!」
「ゲリン!アンタも負けんじゃないわよっ!!」
…………………。
「…はぁ。またやっているのね…」
「おー?面白そうなことしてんじゃねェか!」
グラウン名物、見せ試合。
見せ試合は、どちらが強いか優れているかを決めるものである。
その試合が今、目の前で行われている。試合しているのは男二人組で、一人はダーボと呼ばれた赤髪短髪の長身で、槍を巧みに操り攻防一体を行なっている。もう片方は、ゲリンと呼ばれた黒髪の長髪で、殴る蹴るなどをして槍の攻撃を弾いたりしている。
「ホゥホゥ…。なかなかいい動きをしやがる。…人形にしたら面白そうだな」
「腕を細工し、瞬時に槍が飛び出る仕組みにしたら、敵の意表もつけそうです」
「こらこら、物騒なこといわないの」
「エェー?ありゃ、そこらの人形より使えそうだけどナ…」
「人間を人形に出来るわけないでしょ」
「……?あぁ、そういやそうだったな…」
アリスは頭をかきながら言う。
「んじゃ、受付に行くわよ」
アリスside
ギルド受付前
受付前には沢山の冒険者たちの人集りが出来ている。
どこもかしこも多いいが、運良く空いた場所があったのでそこへ向かう。
「あらぁ?ヒナミじゃない!!久しぶりね!」
「ん?…あぁ、キャミー!久しぶり!アンタ、いつのまに受付なんて仕事してんのよ」
そこで話しかけてきたのは受付の女性、キャミー。
亜麻色の髪を後ろで結んでいる。青い瞳でタレ目、ふっくらとした唇に透き通るような肌をした女性だ。
「三年前からよ。冒険者引退してこっちに転職。給料はいいし、安全も保障されているしね」
「それもそうよね」
そこでふと、キャミーは顔がオレとナーシャの方へと向く。
「…あら?こちらの綺麗な女性は?」
綺麗な女性…あれ?オレ気づかれてない…?
「あぁ、ナーシャって言うのよ。…んで、こっちがアリス」
オレのことを若干哀れみの眼で見、それからオレを紹介する。
「オゥ!アリスだぜ!よろしくナ!」
「あらあら、元気がいいわね。ナーシャさん、アリスちゃん、よろしくね!」
なぜか、ヒナミがおかしいわね?と首を傾げていたが…。
これが普通の反応なんだぜ?おかしいことなんて−−−−−−
「ヒナミ?ちょっとこっちへいらっしゃい?」
「あー、デスヨネー…」
ヒナミが連れていかれた。