演目六十二:裏・反撃
アリスside
「だからー!ごめんて言ってるでしょ?ちょっとアレがアレで言い忘れてたのよ…うん!」
「アレがアレでって何!?」
「しょうがないじゃない!アリスが人形だって事教えたって信じないでしょ!?」
「いーえ!アリスちゃんの事なら信じてしまうかもしれないわね!!多分!!」
ヒナミの傷が治りその後のこと。オレが人形だと言う事を知らなかったキャミーとそれを隠していた事がバレたヒナミがギャーギャーと声を荒らげながら言い争っていた。
「多分ってそれ、絶対に信じないでしょうがアンタ!!」
「そうかもしれない!貴女から…この子人形なんですぅ!なんて言われたら、確かにぃ人形みたいほど綺麗な顔立ちで愛くるしいけどぉさすがにそこまで思うほどの変態じゃぁないわぁ、って口に出してからやめるわぁ」
「誰が変態だ!結局信じないじゃない!!てか、もう口に出てんだよ!!やめれてないわ!!」
何時までやるんだこれは…。
キャミーとヒナミのどうでもいい争いを横目にチラリと周囲を見渡す。チラホラと被災者達が冒険者と見られる服装の人達に救助されているのが見える。その中に一際目立つ男がいた。背中に二本の大剣を背負い懸命に声を張り上げて救助に当たっている初老の男性…。
「ジョーズ…無事だったみてぇだな」
ギルド『グラウン』のマスター、ジョーズ・ロックウェル。
みなが救助してる中で一つの違和感を感じた。
「ん…?いまの」
「はっ…首に一太刀。周囲に気づかせず人を殺す暗技。私をやった者かと」
アリスに答え終えた後、ナーシャの瞳に増悪の炎が燃え上がる。
アリス達の見ている先で、ジョーズや冒険者達が手に剣や槍を構え出す姿が見えた。
「気づいたか…だが敵はもうそこにはいねぇが」
「…彼奴は狩りをしているのでしょうか?素早い動きで相手を錯乱させ目当ての獲物を狩る。確かにギルドの頭であるあの男を殺せば…」
「すぐに周りも片付けられるが、ジョーズ相手じゃ厳しいんじゃねぇか?オレのグラニールの攻撃を押し返そうとするぐらいだぜ?」
あの時に見せた黄金の輝き…グラニールの拳を大剣一本で拮抗してみせた大技。
あの素早い動きにどう対処するか楽しみだ…。
ジョーズ達のいる場所では、魔法を使い動き回る男を見つけるために索敵魔法を使ってるようだ。
油断なくその場で待機している冒険者達、その時冒険者の一人が声を上げてるのが見えた。そこからわーわーという声が辺りに響いた。
「索敵で捕らえたか」
「彼奴は物凄い勢いでジョーズに接近してます。そのまま首を…!」
男の剣が首に当たる直前で偶然、ジョーズが大剣を抜こうとした事で防がれた。
「はーはっはっはっ!こいつはおもしれぇ!!中々の悪運だな!」
「なんという…」
ジョーズの鬼気迫る攻撃を、男はなんなくと身軽な動きで躱す。そのまま観察していると、ジョーズの体から黄金の魔力が溢れ出した。
「とうとうやるか…!」
そこから怒濤の斬撃が男を襲う。目にも止まらぬスピードで繰り出される無茶苦茶な斬撃で男を飲み込んだ。地は抉れ、大爆発を引き起こした。さらにトドメと言わんばかりの大剣振り下ろし。男は動かなくなっていた。
「はーはっはっはっ!見たかナーシャ!!オレと戦ってた時より凄まじい物を持っていたぞ!!」
「これは…直撃したらと考えると少々不味いですな」
動かなくなった男をジョーズが一瞥し終えると、辺りでジョーズの戦闘を見守っていた冒険者達が歓声を上げた。
「終わったか…くく。オレが出るまでもねぇか…」
「主よ…此度の敵の攻め戦に少々興奮していますね?口調が戻っていますよ」
「なに?…あー…ははっ!しょーがねぇだロ?こんなに攻め込んでくる敵なんて久しぶりなんだからョ!……ふは…アァ、ホントーに久しぶりだゼ」
前の口調…いつもしているおちゃらけ口調とは違う事に気づかなくなっちまうなんてよ…。てか、今まであったヤツらにこの喋り方してたんじゃ…?ま、バレてねぇしいっか!
「主よ!あの男、まだ息が」
ナーシャがジョーズがいる場所から目を離さず、オレに報告してくる。そこに目を向けると男が剣を持ちジョーズの足元にまで這いずっているのが見えた。
「ほう…ナーシャ、出るぞ」
「はっ!」
オレたちはジョーズいる場所に音も立てずに走り出した。




