演目六十一:反撃
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ジョーズside
「オォォォォォォォォッ!!!」
ドォォンッッ!!!
両足にに力を込め跳躍…フードの男に二本の大剣を叩きつけるが、それを難なく避ける男。衝撃波をものともせず、口元に浮かぶ薄ら寒い笑にジョーズは寒気を感じる。それと同時に焦りが浮かんできた。
私の攻撃が当たらない…それに発生した衝撃波をまるでそよ風かのように受け流す…それに何故やつはあれから私に攻撃をしてこない?いかん、相手を倒す前にこれでは私の体力が先に尽きてしまう。それではこいつらを守ることが…。
「なんだぁ?もう終わりか?さすがに歳には勝てねぇってか?はははっ!」
「抜かせっ!私はまだ五十代だ!ばりばりの現役だぞオラァァァァァ!!」
そうだ私まだ現役だ!腰痛医薬が手放せなくなってきたがまだまだやれるぞ!!
右の大剣を構え男に斬り掛かる。男は後ろに躱すことでそれを回避した。そこにすかさず私は左の大剣を構え下斜めから男に斬り掛かる。男は一瞬驚くも、軽い身のこなしで避ける。空中で一回転し、パチパチと手を叩く。
「ひゅー。すげぇすげぇ!今のはやばかった!」
「お褒めに預かり光栄…だが、この技はこれで終わりではないぞ…!」
空中では回避出来まい!
瞳を光らせ、全身に黄金の魔力を纏う。降り抜いた体勢から一気に動作無しの加速。男の目の前に一瞬で躍り出た私は二本の大剣を構え怒濤の勢いで叩きつける。
「カァァァァァァァァァァァァツッッ!!!!」
ドォォォォン!!!
荒れ狂う波のように大地は割れ、大爆発を引き起こす。最後のトドメに両手の大剣を合わせ一つの大剣にする。大剣に黄金の魔力を纏わせ、一気に振り下ろす。
ドォォォォォォォォォォォォォォン!!!!
大爆発によって出来たクレーターよりもさらに深いクレーターを作り上げたジョーズ。一振の大剣を解除し、二本の大剣へと戻す。両手に構え男の生死を確認する。クレーターの真ん中でうつ向けに倒れている男はフードはボロボロで所々に血が流れていた。男はピクリとも動かず死んでいるように見える。
「死んだか…なかなかに手強い敵であった…」
静寂の中で呟かれた声は酷く大きく聞こえた。その声は周りの冒険者達にまで聞こえ…。
「…や、やった?」
「った!やったぞぉぉ!!」
「我らがギルドマスターが強敵を討ち取ったわよぉぉぉ!!!」
ぶふっ!!…まてまてまて?討ち取ったってなんだ!?私は将軍ではないぞ!?
と、心の中でツッコんでいると足元から声が聞こえてきた。
「ぐっ…俺とした事が…気を失ってたなんてよ…許さねぇ…あぁ、ぜってぇに許さねぇ!皆殺しにしてやるっ!」
足元を見ると、破けたフードから覗く頭部からどくどくと血を流しながら、目を真っ赤に染め上げカタナを握る男がいた。
バカな!?さっきまであそこにいたはずなのに!?
男が震える手でカタナを握り、ジョーズに刺しかかる。
回避不可…避けられんっ…!
あと数センチという所で…カタナの刀身が消えた。
「「は?」」
男と私はお互いにぽかんとなり、声を漏らす。刀身の消えたカタナをまじまじと見ながら男は狼狽している。かくいう私も何が起きたかさっぱりなんだが…。
「そいつがナーシャをやったってやつか?」
後方から聞き覚えのある声がかかる。その見た目にそぐわない凶暴な実力者………。
「はい。匂い同り、あれで間違いはありません」
そしてもう一つ、その者が操る自動殲滅型人形。撫でるようにして人を斬る恐ろしい技を持つ持ち主。こんなに早く会えるとは思っておらず顔がニヤケそうになるのを必死に我慢し後ろを振り返る。
後ろを振り返るとそこには、高く積まれた瓦礫の上に胡座をかいて座るアリスとその傍らにカタナと刀身を握るナーシャがいた。
「さぁ、反撃の時間だナーシャ。お前に尻拭いをさせてやる」
「はっ!」
ナーシャは軽く刀身でクルクルと回して遊ぶと、ギュッと刀身を握る砕く。
「ばかな…あの女は確実に…」
男が有り得ない…と小声で何度もブツブツと呟いている。
その声が聞こえたのか、アリスが膝をバンバンと叩きながら大口で笑う。
「はーはっはっはっ!あの程度でオレのナーシャを殺そうなんて甚だしいんだよ!!」
そして、スっと目を細め…。
「オレのお気に入りであるナーシャに手ぇ出したんだ。ただで済むと思ってんじゃねぇだろうな?」
「……っ……!?」
声も出せない程の強烈な殺気を放つ。
う、動けない…。やはり、彼はとんでもない人材だ…!
男に向けたつもりだろうが漏れ出た殺気は私達にまで被害が及ぶ。真正面から受けた男は口をパクパクとさせるだけで何も言えない。
アリスは目を閉じ、ナーシャに命令する。
「殺れ」
その命令にナーシャは、その場から消え一瞬で男の目の前に出て首を横に撫でながら一閃。一瞬の静寂後に、ポーンと首がはね、首を失った体から赤い血が吹き出し倒れた。




