演目五十六:ごめんね
痛い、痛い、痛い……痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い…………。
あまりの痛みに倒れ込む私。どうしようもない痛みが私を襲ってくる。焼けるような痛み、肌を刺すような痛み。それが、それだけが私の精神と身体を貪るように私を苦しめる。痛みはだんだんと感じなくなってきた。そして少し寒くなってきた。寒いけど、ほんのりと生暖かいモノを感じる…とめどなく溢れる生暖かいモノ。うっすらと見える視界からは赤一色。私を中心に咲く一輪の赤い花が見えた。視界を動かすと、倒れ込んだ私に、大粒の涙を零しながら懸命に叫んでるキャミーと寄り添い私を揺らすメリーさんが見えた。何を言ってるのかは分からなかった。だけど…分かったよ。
私……死ぬのかな…。
「……ーーーっ!!」
復讐出来ずに…みんなの…仇を……。
「…………!!」
もう目も見えなくなってきちゃった…。
「っ!!!」
ごめんねメリーさん、キャミー。もうこれで…。
「……!」
…………アリス。
…………………………ごめんね。
「死ぬにはまだお前は若すぎる…ヒナミ」
聴こえないはずなのに聞こえる。知ってるようで…知らない声。
私を包み込んでくれる安心感。
「せっかく楽しくなってき所なのによ…ヒナミがいなきゃ、つまんねぇじゃねぇか」
浮遊感、感覚が麻痺した体なのに感じてしまう心地よい…温かさ。
私の体をそっと…優しく抱きしめる。
「戻ってこい……………ヒナミ」
その声を最後に。
私の………意識が…………ーーー。
「目を覚ましてヒナミぃ!!」
「はいぃ!?起きました起きました起きましたよぉぉ!?…ぅ」
私はガバッと若干の気だるさを感じながら勢いよく起き上がる。急に起き上がったせいか目眩がおきる。
いけない遅刻しちゃ…遅刻ってなによ。それに、すんごいクラクラするし…。
「ヒナミぃ!!よかったぁ…よかったよぉぉぉ!!」
「え、な、なに?なにごと?」
起きたら何故か親友に抱きつかれガン泣きされた件。
なぜか、メリーさんとひしっと抱きついてるし…。本当に何があった。
「うぅ……ヒナミぃ、何があったか覚えてないの?」
「う、うん」
「えっとね…あなた死にかけた…いいえ、一回死んだの」
………は?
「巨体人形を倒して次の場所に行こうとした時、突然後ろから飛んできた剣に胸を貫かれて…」
つ、貫かれた?嘘でしょ?
「あなたに付いているその赤い血と貫かれた跡がなによりもの証拠よ…」
貫かれた場所、胸の所を恐る恐る触れる。
……あぁ、確かに貫かれている。
服に縦長に穴が空いていた。その周辺を赤い血がべっとりと付着している。ヌルッとしていて、まだ新しいものだというのが分かる。私の血だとは思えない…けど、私の………。
「……ねぇ、こんなにも大量の血が流れているのに死んでいないのは何故?一回死んだはずの私がどうして生きて!?」
「お、落ち着いてヒナミ!それはね、あの子が助けてくれたのよ」
「あの子…?」
キャミーは頷き、顔を横に向ける。つられて私も向く。
そこにいたのは二人の人影だった。……一人は棒に括りつけられた長い黒髪に整った顔立ちをした女性。切れ長の瞳で目尻に少量の涙を浮かべている。手足はスラッとしており必死にもがいている。もう一人は長い金髪を靡かせ、幼顔に似合わない悪どい笑みを浮かべ、片手に先端が尖った棒状の何かを持ち、動けないもう片方の人間をその棒でつついていた。
「んんんんーー!!!んんーー!!!」
「はっはっはっはー!ここか!?ここがええんかぁ!?」
二人の人影…魔力反応が消え死んだと思っていたナーシャと、私の契約者であるアリスだった。




