演目五十三:敵襲
ヒナミside
「ナーシャの魔力反応が消えた」
ナーシャの魔力反応が消えた。魔力反応が消えたという事は実質死を現している。その事実を淡々と、何も感じさせない無感情で、アリスは言葉にする。私を助けた時は焦った表情で無事だと分かると嬉しそうに、だけど顔には出さないよう精一杯の強がりを言って誤魔化そうとするのに今はそれがない。初めてそんな表情を見て私は恥じた。知っている気になっていた、なっていただけだった。アリスは歩きだそうとする。
だめだ…何か言わないと、ここで彼を引き止めないといけない気がする。
「まっ…アリス…!」
彼はピタリと止まり、ゆっくりとこちらに振り返る。
「…っ……ぁ」
振り向いたアリスの瞳はいつもの輝きはなく、酷く澱んだ状態の瞳をしていた。何か喋らなくては、と思っていても言葉は出てこない。何時もなら何気なしに言える口も今となっては役に立たずただイラつく。そんな私が…本当に……。
振り向いたアリスは、何も言わず心の中で焦燥に明け暮れる私を無視しその場からふっと消える。
「…ぁっ…くそっ!私のバカやろぉ!!!」
苛立ちを隠しきれず床を力任せに殴りつける。何度も、何度も、何度も何度も何度も……。
暫くして漸く気が納まった私は、こうしてはいられないと思い、すぐさま行動に移った。まずはメリーさんを呼び寄せ、アリスのいる場所を探知してもらう。探知の指示を受けたメリーさんは目を閉じ、胸元で両手を握り祈るような体勢に入る。そこに木々の木漏れ日のような淡い光がメリーさんを照らし、辺りを静けさが包み込む。
光が、静けさが消えいつもの光景が戻ってくる。
「…メリーさん、アリスはどこにいるの?」
メリーさんは目を開け、一つ頷くと壁の向こうを指す。その指先から青い光の線が走った。
「向こうね…よしっ!いくわよ!!」
ドンドンドンドンドン!!ドンドンドンドンドン!!
ヒナミの勢いを殺すように、家の扉を激しく叩く音が聞こえる。
「っ!誰よこんな時にぃ!!」
苛立ちを隠さずに乱暴に扉を開ける。
「…はあはあ、良かったヒナミ!無事だったのね!」
開けた扉の先にいたのは、骨の鎧を着込んだキャミーだった。髪の毛はボサボサで、鎧は所々にヒビが入っている。額には大きな玉の汗を作り肩を激しく上下させ呼吸をしている。
「!?ど、どうしたのキャミー!」
いつもとはだいぶかけ離れたその姿に、驚くヒナミだが、キャミーはそれを無視しヒナミの手を取り外へと引っ張る。
「ちょっ!?なんなの一体!」
「それどころじゃないの!後で説明するから、今はいそ」
「うわっ!?」
キャミーが言い切る前に、ヒナミが前のめりにキャミーを巻き込んで吹っ飛ぶ。
「あいたたた、なに?…って、あれ?メリーさん?」
「うう…」
キャミーとヒナミを吹っ飛ばした犯人はメリーさんだった。何故こんなことを?と、疑問に思った瞬間、私達がいた場所に白い光線が走っていった。そしてすぐに光線が通った場所は真上に火柱を立て爆発した。
光線の軌跡を辿り、撃ったであろうモノを探す。それは直ぐに見つかった。巨大化メリーさんと同サイズの機械で出来た、人型の頭のない機械人形。胴体に複数の目玉を付けて、あとはそこらの人型の人形と変わらない作りをしているが何とも言えない異様さが目立つ。
「……」
「ヒナミ…敵の正体がなんなのかまだ分かってないけど、いまこの国が大変な事になってるのは…言わなくても分かってるわよね。お願い、力を貸してちょうだい!」
「…………」
「お願い…ヒナミ…」
キャミーの眼から不安と期待と焦燥色んな感情が混ざったモノを感じ取れる。
「……あぁもう!アリスのこと、どうにかしないと行けないのに次から次へと!!!」
苛立ち混じりに片足で地面を強くダンっ、と踏み鳴らす。
「! アリスちゃんがどうかしたの?」
「ちょっとね…ま、いる場所分かってるし。とりあえず!!メリーさん!!!!」
呼ばれたメリーさんは、ぐんぐんと巨大化を始め両手に碧い魔力を纏わせ前に出す。
ヒナミは機械人形に指を向け口を開く。
「『勾魂砲』」
碧い軌跡を残し機械人形に着弾、爆発。
「どこの敵か知らないけど!私の憂さ晴らしちょっとばっか付き合って貰うわよ!!」




