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不思議アリスは人形使い  作者: ワンコ
51/65

演目五十一:整備

ブクマありがとうございます!


感想や誤字脱字報告受け付けておりますので、よろしくお願いします!!



特集記事。

戦争国家、ラルランド王国の王城を守る五城の一つシュペード城が崩壊。城にいた人達は避難していたので無事でした。城が崩れた原因は竜の襲撃によるものだ。シュペード城の城主、シュペード・ジ・クイックさんは城の瓦礫に倒れているところを発見。巨大な爪痕や槍の突き刺さった跡など至る所にあるので、ここで戦闘がありシュペードさんは敗れたようだ。辺りに散らばった血液から相手を特定したみたいだが、全てシュペードさんのものだった。つまり、シュペードさんは竜に一方的にやられたという事実が出てくる。ラルランド王国きっての実力者であるシュペードさんがこうもあっさりと倒す竜、これはかなりの凶暴性があるモノだ。しかし、これ程暴れ回る竜が一体いつラルランド王国に侵入して来たというのでしょうか。戦闘の痕跡から調べてみた限り全長四十メートルの大きさと予測されます。その巨大な竜がラルランド王国の警備に見つかる事なく侵入など出来るのでしょうか?もし、もしも…竜が外からの侵入ではなく中から召喚されたものとすると………。



ヒナミside



「あちゃぁ、もうここまで新聞出回ってるよ…」



倒壊した城の中から無事に脱出する事に成功し、今はエウレペールにある私の自室にて引きこもりdaysをかましているヒナミさんこと私は、今朝何故か無性に嫌な気がしながらも外に出てポストを何気なく覗くと珍しく新聞が入ってたのでこれまた何気なく見たら、シュペード城崩壊の事を書かれた記事で思わず吹き出してしまった。

その新聞を見ながら私は、チラリと事の原因の一人である人物を見やる。

不思議アリス…フローリングの床に黒いふわふわの円形のマットの上に座り込み四角い小さなテーブルの上に人形を山積みにして、一つ手に取ってはウンウンと唸っている。まぁ、原因の一人と言っても私も原因の一人なんだけどね…。



「ねぇアリス。あんた何やってんの?」



アリスは私の声にやや遅れて反応し、顔をこちらに向ける。

こちらに向けた顔は、誰もが可愛いと言うだろう愛らしい顔。あどけなさを残した幼い顔にこのクリクリとした桃色の瞳…頬はぷっくらとし、少し赤みがかっている。小さな唇から漏れる甘い天使の………。



「ア"?」



…………怒気溢れる悪魔の声。


くっそぉぉぉぉ!!!なんでこいつ物凄いロリボイスなのに言葉が残念なのぉぉぉ!!??見た目は女の子だが実は男の子というギャップが備わっているのに無駄な部品が付いてきちゃってるよぉぉぉ!!!



「人形の整備だョ…最近、手入れする時間なかったからナ」



そう言ってアリスはまた顔を元に戻し、またまた人形を一つ手に取ってはウンウンと唸る。

可愛い、と思いながらアリスの扱う人形の山を見ると…何やら見覚えのある人形が一つ見つかった。その人形を手に取ってみる。軍服を見に纏い、腰まである長い黒髪。手足はスラッとしており、顔は人形ながらも凛々しくキレのある瞳、口を一文字に結んだ……。



『私に気安く触るな』



………黒犬のナーシャ。


こいつも主様同様、口が悪かったわね……ってあら?なんでこいつ話せんの?



『ふっ、決まっているだろう?私は自動殲滅型人形、例え待機形態としても喋れる事は可能だ。そんなことも知らないのか貴様は…ふふ、本当に残念なあたま、を…お、おい!?やめろ何をする貴様!?』


「ぶーんぶーん」



ムカついたので、子供口調をしながらナーシャを掴み手を掲げブンブンと振り回す。その勢いのまま今度は風車の如くブンブンと回す。



「いぇぇぇい!!アリィィィナァァ!!!」


『うわぁぁぁぁあぁぁ!!?』



何となく思い浮かんだ言葉を口に出してみた。

いまこうやって日頃の鬱憤を晴らしてるけど…くっ…めっちゃ肩痛い!!普段動く事が少ないからこんな事で支障がぁってしまった!?

掴んでいたナーシャが手からすっぽりと抜け、綺麗な円を描きながら飛んでいく。飛んで行ったナーシャはそのまま私のベットの角にぶつかる。



『ムギュっ!?』



ぽふん。


ベットの角にぶつかった体勢のまま、ナーシャ人形は自動殲滅型人形黒犬のナーシャへと変わった。




…………え。



「……………」



無言。圧倒的無言。それが恐怖をさらに駆り立てる。



「な、ナーシャさん?こっ、これはですねぇ…」


「……………す」



吃りながら、何とか言い訳しようとするヒナミに、小さな声をこぼすナーシャ。



「……え?な、なに?」


「……………ろ………す」



聞き取りにくい声でブツブツと呟いているナーシャに、ヒナミは少し近づき耳を傾ける。



「ころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころす」





















ヒナミは走った。何も考えず、ただ遠くを目指して。悪神ナーシャの魔の手から逃げ切るため。直ぐに捕まった。



「覚悟はいいな?」


「まって!?」


「聞く耳持たん!!」


「アアアァァァァアアア!!!」



アーメン。


その日の夜。エウレペールの夜の街に一つ、星が流れた。

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