演目四十四:暗躍
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静寂が支配する真夜中。雲が空を覆い月を隠している。闇一色に染まり、何も見えない。その中で一つの暗躍する者達がいた。
薄暗い部屋の中、仄かに揺れる小さな灯。灯の前には数人の黒い影が蠢いており、全員フードを被っている。そして、部屋の壁に寄り掛かる大柄なフードを被った者と大柄の者と同じフードを被った小さな者がいる。部屋の壁に寄りかかっていた大柄の者が口を開く。
「ギラン…そっちに任せていた例のブツはどうなっている?」
ギランと呼ばれた、灯の前で蠢いていた影の一つが顔を上げる。
「へいボス。後は起動だけで、ブツ…タイプ:ゼロはほぼ完成していやす」
ギランと呼ばれた黒影の一つ。背は前のめりに曲がっており声は嗄れた男。ボスと呼ばれた大柄の者、声が低く暗闇でもわかるガタイのしっかりとした男だ。そしてまた大柄の男、ボスが口を開く。
「そうか…。ふっ、あれが起動出来れば一国を落とすのも簡単だな」
「……そうね。これで私たちの願いが叶う」
ボスの横にいた小柄の者が口に出す。それに同意し頷くボス。
「……もうすぐだ、もうすぐで我らの時代が来る!」
「…………」
「………」
「……………」
「…………………」
「……」
ボスの声に黙って耳を傾ける黒影達。ボスは拳を握りしめ、叫ぶ。
「先祖から続く我らの痛み!苦しみ!!嘆きを!!!我らに虐げ与えた奴ら……王族共に教えてやろうじゃないか!!この地獄を…一国を落とす事が出来るタイプ:ゼロを持って返礼としようっ!!!」
そして、ボスはゆっくりと歩き出し、窓へと向かう。
空を覆っていた雲がだんだんと薄くなっていき、月明かりが窓に入る。月明かりは部屋全体を照らしだしそこにいる影たちを映し出す。
赤いフードを深く被った六人。六人とも、見える肌からは…リンゴを咥えた翼の生えた蛇の刺青が入っていた。




