演目四十:出会いは突然に
ヒナミside
何をやらかしてるの…。
私は思わずため息を吐く。どうせなら違う方を吐きたいけど…。
とりあえず私は目を見開いてこちらを見ている店員とお客さんに手を合わせておく。
「どうした…?速く持ってこぬか!」
ちょっとナーシャさん!?あんまり威圧しないで頂戴!!
と、そこで店員だろう人物の口が動く。
「……だ」
「うん?」
「強盗だぁぁぁぁぁぁぁ!!!???」
「キャァァァァァァァ!!??」
まってぇぇぇ!!違うの!!違うのよ!?強盗じゃないから!お客様だからぁ!ちょっと店入る時の仕方が独特なだけであと他は全然そこらのお客様と変わんないからぁぁぁぁぁぁぁ!!!
「貴様ら…っ!我が主を盗賊だと吐かすか!?」
「店長ぉ、大変ですっ!!ごっ、強盗がこの店に…!!」
ナーシャはアリスを盗賊扱いされた事に腹を立て、額に青筋を浮かべている。カルラも何も言わないが犬歯を剥き出しにしている。
「…店長?」
アリスだけは、どうやら店長の方が気になるみたいです。店長気にする前にこの二人を止めなさいな。
待つこと数分。目の前の景色がグルグルと歪んでいく…転移魔法だ。やっと店長が来るかと思えば突然、強烈な頭痛に襲われた。何事かと思い、辺りを見渡すがまたもや驚いたような顔でこちらを見つめる店員。…どうゆうこと?
「舐めた真似を…」
「ぐるるる…っ!」
「ははっ!…なかなか面白ェ登場の仕方じゃねェか!許してやれョナーシャ、カルラ?」
三人もどうやらこの謎の頭痛に襲われたみたいだ。だが顔には全く出てないみたいだけど…。
「いやー、ごめんごめん。ごめんねぇ?本当に強盗なら今ので確実に死んだんだけど」
突如、店の中全体に陽気な声が響いてくる。声は男とも女とも取れる中性的な声だ。
てか…死?え、死!?
「ハーハッハッハッハー!!オレたちがあの程度で死ぬわけねェだろ?」
「だよねぇー!あははは!…まぁそこの子は死にそうだったけどね」
歪んでる景色に喋りかけてるアリスを見てシュールだなぁ、と思ってると急に私の話になった。
「確かにナ」
え、なに?私、死にそうになったの!?
「それにしても、よく防いだね?このボクの音を…やはりその子に繋がっている糸が関係あるのかな?」
糸…?
私は自身の身体を見渡すと……あった!腰の辺りにうっすらと碧い糸が付いており、その先を辿っていくとアリスの右手と繋がっていた。
「ヘェ?見えたのカ?」
「ギリギリ…って所かな?分かったのは後になってからだよ!それにしても凄いね、その糸は…意識して見ると凄まじい程の魔力の塊を凝縮して出来ている糸じゃないか!これじゃ、ボクの音を防ぐのもうなずける」
「オレだからナ!…そんな事より、早く姿を見せろよナ?いつまで立っても出てこないならョ…そこから引き摺り出してやろうカ?」
「おおっ!すっかり忘れてたよ!……てか、この転移部屋に人間が干渉出来る訳ないじゃん!あはははは!!!」
なんだろう、ムカつく。この…なんだろう。殺されかけた事にもムカつくけど、それ以上にどこか…。
「ムカつく。カルラ、ナーシャ!引き摺り出される事が望みみてェだからョ…やりナ」
「はっ!」
「おう!」
やっぱりアリスもムカついたのか、声の主の登場を待つより引き摺り出すことにしたようだ。
「へっ?」
「さて、覚悟はいいな?」
ナーシャがニヤニヤとしながら歪んだ空間に語りかける。
「いやいやいやいや!?ちょっとまってまって!!無理だから!人間…誰でもこのボクにもこの空間に触れる事出来ないんだって!!これボクのタイミングじゃ出れないんだから出るの待ってよ!!」
「知らん!カルラ!!」
「おう!!」
ナーシャが歪んだ空間に向かい、右腕を横に一閃しその場に屈む。一文字に軌跡を残し切り付けられた空間は波紋を起こす。
「は!?」
そして、今度はカルラ。屈んでいるナーシャを飛び越え一文字の軌跡が付いた空間に腕を肩まで突っ込む。
「ん…これだな!捕まえたぜ!」
カルラが声の主を捕まえたようだ。そのまま腕を勢いよく引き抜く。
ぬぽんっと変な音をたて、引き抜かれ出てきたものは------。
腰まである長い黒髪に幼い面影でありながらどこか大人びようとする強気な顔。そして紫色のクリクリとした大きな瞳。身長は低く、黒と赤であしらったフリフリのゴシック服に身をまとい、黒の厚底ブーツを履いて身長を盛ってるようだ。
…………ん?
……んんんん?
なんかこの顔どこかで見たことあるんですけど……?
はっ!?
私はばっ、とこの顔に似た人物に振り向く。
「……なんだョ?」
こいつだったァァァァァ!!!見た事あるやつってか常に一緒にいるやつだぁぁぁぁぁ!?
アリスが……増えたっ!




