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不思議アリスは人形使い  作者: ワンコ
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演目四:兎とメリーさん

ヒナミside



「ヒナミ・メリー…あぁ、覚えた…オレの名は不思議アリス、最狂と恐れられし人形使いだ」


「ふむ…『最強』ね…大層な事言われてるじゃない」


「あぁ、『最狂』の称号はオレだけしか持ってなかったからなぁ…」



ヒナミ・メリーは勘違いをしていた。最強と最狂を。



「自己紹介は終わりだァ!そろそろイクぜ!」



アリスはそう言うと、広げた両手を前に勢いよくつき出す。

すると、時空兎はメリー人形と私に向かって走り出してきた。

時空兎と呼ばれた人形は、これでもかと言うくらい全力で手足を振るい、首を回しながらこっちへと向かってきている…って、こわっ!?

しかもかなり早いしなにこれちょーこわっ!!?



「ちょっ…泣きそ…『メリーさん!私を守って!!』」



命令を受けたメリーさんは私を覆うような体制に入る。

鈍い音がメリーさんの全身の至る所から聞こえてきた。

どういうこと…?今のメリーさんは山のような巨体…それをわずか数秒で駆け抜けて正確に攻撃だなんて…絶対おかしい。あの人形…時空兎とか言ったかしら。もしこれだけの速度が可能ならば……欲しいわね。

それにしても、こうして守ってばかりじゃ意味がないわね…『アレ』…やりましょうかね!



「ヒナミ・メリー!いつまでも閉じこもってちゃツマンネェよぅ!!」



どうやら、アリスの方も攻撃が通らず我慢の限界のようだ。それでも手を緩める事はないが…。



「分かってるわよ!見てなさい!『メリーさん!フォルムチェンジ!!』」



私に覆いかぶさっていたメリーさんは、目を光らせた後、全身に赤い魔力を纏う。

赤い魔力はだんだんと形を成していく。ゴシック服の上に赤い甲冑。手にはランスを握っている。

ふふん!武装メリーさんのだす圧倒的な威圧感も美しいっ!アリスも思わず口を開けて見ているほどだし…やっぱりメリーさんの芸術的造形美の前には誰もが虜になるのよねっ!



それじゃ…。



「武装メリーさん攻撃超特化型よ…『武装メリーさん!敵兵を討ち取りなさい!!』」



武装メリーさんは両手で槍を限界まで持ち上げ、力を込める。

ミチミチっという音が響き渡り-----



「こいつは…ちょっとヤバイかな…」



ズシャァァァァァァァァァンッ!!!!

武装メリーさんが槍を振り下ろす。それだけで地が割れ大爆発が起きる。



「シャレになんねェっ!こりゃ、シーズン1だけじゃキツいし、出し惜しみはなしか…?」


「あら…出し惜しみなんてしてたら死んじゃうわよ」


私はニヤニヤしながらアリスを煽る。

アリスは怒った形相になったが…うん。可愛いから怖くないな!

アリスが手を引くと、時空兎がアリスの側まで飛んでくる。

人形使い…か。凄まじい練度ね。

私の知る人形使いと言えば、言葉で操る人形使いの『指揮』。指揮の特徴を持ちながら、自動機能に意思を埋め込む事が出来る『人形劇師』。糸を使い指で操る『人形使い』…この三つだ。

指揮と人形劇師は、接近戦に向かないが魔力を人形に固定し制限なく操る事が出来る。前線を人形達に任せ、後方で支援をする戦法を取るスタイルだ。ただ大量の魔力を消費するため魔力量の多い人形を操る名家がなる事が多いい職業。

人形使いは、指揮と人形劇師同様接近戦に向かず、両手で2体までしか操る事が出来ず人形使いは2つの職業よりもデメリットが高い。操作が難しく糸を切られれば人形は使えず接近戦に持ち込まれれ即終わりなため周りからはハズレ職と呼ばれている。

人形使いの最大のメリットは、両手の10本の指の第二関節を使った仕込み解放である。

仕込み解放は、人形使いにのみ使える技だ。その仕込みは使うものによって異なるため、破壊するには人形使い本体を叩くか、人形を先に破壊するしかない。


さあの時空兎には何が仕込んであるのかしら…。



「チッ…この武装メリーさん…なかなかやるな…」


「ふふ…そうでしょ?」


「…だが、オレの人形の方がすごいゼ!時空兎の一つめの仕込みを魅せてやる!」



アリスはそう言って、中指の『第一関節』を曲げる。

…………『第一関節』?



時空兎が勢いよく飛び跳ねる。飛び上がりと同時にタキシードを脱ぎ捨て、ふわっふわの毛を生やし肩掛けバックを装着。二足歩行で歩くさっきのタキシード姿と変わらない姿の兎が着地してきた。



「んー?これが仕込み…かしら?」


「ちげェよ!こっからだぜ!」



もう一度、時空兎は飛び跳ねる。兎は私の頭を超え、メリーさんと同じくらいの高さまで飛び跳ねた。

兎はカバンに両手を突っ込み中から両手いっぱいの何かを取り出した。それをそのまま落とす。


それは当たらず私の周りに落ちる。落ちたものを見ると、黒い球体だった。



「残念、ハズレだったわね」


「そいつはどうかな…」


「なんですって…?」



まだ何かあるの…!?

私は急いで球体の方を見るがやはり何も無………!!??


こっ…これはぁぁぁぁぁ!!!??



黒い球体は…『丸い形をした兎』だった!

なにこれぇぇぇぇ!!!??めっちゃかわぃぃぃぃぃいぃぃぃぃ!!!!

私は球体兎を抱き上げる。赤い瞳に垂れた耳が…あぁぁあ…たまらないわ…。しかも、よく見ると小さい足や丸い尻尾も付いてある…やばい…。



「気に入ったかい?アリスの落し物はよォ」


「ネーミングはともかく、可愛いわねこれ!寄越しなさい!」


「ウッセ!」



しかし、ほんとコレ可愛いわね…。

あまりの可愛さに武装メリーさんも巨大化と武装解除しちゃってるし……え?なんで解除してるの?

あ、触りたいの?ダメよ、いま私が触ってるから。そんなに怒らないで!後で触らせて上げるから!…あ、メリーさんの近くにも球体兎落ちてるじゃない、その子触りなさいな。



「そいつはそれだけじゃないゼ」



アリスはそう言って中指の第二関節を曲げる。すると、球体兎達は体を震わせる。

まだ何かしてくれるの!?…じゃなかった、してくる気ね!?


震えてた球体兎達は、震えるのを辞めると短い足を伸ばし立ち上がる。そして、そのまま私とメリーさんの所にちょこちょこと寄ってくる。

うわぁぁぁぁぁぁあ!!これはやばいやばいやばいやばいやばい!!!??可愛いすぎる…。

寄ってきた兎は私とメリーさんの体によじ登り、短い手足を使いぎゅっと抱きついてくる。



「こっ、これはたまりません…」


「あ、アンタ…顔がヤバイ事になってるよ…まぁいい、コイツで終いだ」


「ふぇ?」



アリスは中指の『第一関節』と人差し指の『第二関節』を同時に曲げる。



「時空兎第一仕込み解放『アリスの落し物』…」



アリスの言葉と同時に球体兎に凶悪な『口』が現れる。

…………え。


口はニタリと口角を上げ------



『Gyahahahahahahahah!!!オレサマのプリチーボディに騙されたクソヤロー共ォ!!爆発される準備はイイカイ!?』



機会じみたアリスの声でそう叫ぶ。

まって。爆発!?



「ちょっ!このっ、離れなさ…っ!?…チカラが…あれ…」


「はっはー!ザーンネン!そいつは相手の魔力を吸い上げ吸着するんだョ!」


「うそ…っ!『メリーさん!巨大化!敵を潰しなさい!!』」



メリーさんは巨大化を始めるが----



「ムッ!?それは厄介だ…もう一ギア上げてクぜ!」



アリスの球体兎かメリーさんの魔力をさらに吸い上げていく。

魔力を吸われたメリーさんはまた元の小さな人形になる。



「メリーさん…」


「終演だ…ドカンとイクぜ!!」


「っ…!!ちくしょォォォォォォ!!」



アリスは手を丸め拳を作る------


時空兎は口を開け------


アリスと時空兎を結ぶ透明な糸に炎が灯る-----


炎は線をなぞるように兎の背へと向かう------


着火。それと同時に丸めた拳を広げると、時空兎は口を閉じ、カチッと音が鳴る。




ドカァァァァァァァァァァァァンッッ!!!!




大爆発。




雲がひとつもないこの青空に、見渡す限りの草原。そこに熱風と飛び散る火花、焦げた匂い、巨大なクレーターにキノコ雲が黙々と立ち込めていた。

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