演目三十五:妖精
ヒナミside
空が紅く色付いてきた夕方。部屋から見える景色は綺麗で窓の外では、仕事や嬉しそうにクエストから帰ってくる人達、酒場で盛り上がっている上機嫌な人の声で溢れていた。そんな様子を横目に、私ヒナミは、静かにそっと、ため息をつきながら黄昏れるのであった。
なぜかって?ふふ、誰にだって触れられて欲しくない事なんて、一つや二つ…あるでしょう?
そうして、私はまた一つため息をつく。
「ア、アリス様?ありゃ、さすがにヤバいんじゃねぇか?」
「し、仕方ねェだろ?オレ弟子なんてとったことねェんだからョ…」
「いやいやアリス様、それでもさすがに猿化させちまう程にまでストレス与えなくたってよ…」
「何を言うか、カルラ!我が主はヒナミのためにと思って修行を付けて下さってるのだ!それなのに……それなの……うん。まぁ、あれだ、同じ女として猿化は嫌だな…」
「結局嫌なんじゃねぇか…」
「あんた達聞こえてるわよ!!!!」
後ろでボソボソと喋ってるつもりだろうが、普通に声が漏れてんのよ。それに、なによ猿化って!!ありえないわ!!…はぁ、嫌だわ。また思い出してしまった…。
「うひゃー…ヒナミのやつ哀愁感が更に増したぜ…」
「ゥム…どうしョ?」
「うーん?励ませばいいんじゃね?知らんけど」
「って、言ってもナァ?オレたちゃ、戦闘以外じゃポンコツだゼ?」
「うっ…」
「それでしたら我が主よ、"アイツ"を使って見てはどうでしょうか?」
「"アイツ"?」
「事この事に関しては、"アイツ"が適してるでしょう」
「あァ!"アイツ"か!…そうだナ。そうしよぅ!
」
まだ後ろでコソコソとしてるが、今度は声が聞こえない。これはこれで気になるわね…。
こうしてモヤモヤと憂鬱に襲われてると、アイツらは急に立ち上がりいそいそと部屋を出ていった。ポツン、と取り残された私はひっそりと窓に寄り添う。
それから数分後、アリス達が部屋に戻ってきた。何をしていたのかと思い、横目で流しみると何やら、三人とも両手にいっぱいの花を持って、どこからともなく取り出した花瓶に飾りだした。
もしかして私のために------なんて思ったのも束の間。
アリスの手には、花の他に小さな指人形サイズの人形が握られているのが見えた。緑の衣に黄色のベルト、髪は長く金色で二本の触覚が生えている。アリスはその人形を両手で包み込み、にぎにぎと握る。そして、両手を広げると中には、淡い光を放つ------妖精がいた。
なにあれ…?
「きゅっきゅきゅーーーん!!」
妖精は謎の声を発しながらアリスの周りをグルグルと飛び回る。
満足した妖精は、アリスの肩に止まり座り込む。
「久しぶりね!小さき者!」
小さい割に声がデカく高い。そしてお前も小さいだろ、と心の中でツッコミを入れるヒナミ。
「今日はどんな用事?なのかしら!」
「…ちょっとナ、あそこにいる奴の事で相談があるんだがョ」
「ふむふむ!なるほど!把握したわ!!」
何をだよっ!
「小さき者の修行のストレスのせいで思わずお猿さんになっちゃったのね!!」
なんで分かるの!?
「それならこの!サポート妖精人形『こいのティンカー』ちゃんにおまかせあれ!!」
そう言って妖精は、アリスの肩で鼻息荒くドヤ顔を決め込むのであった。




